ECB、政策金利据え置き―次回12月会合で資産買い入れ規模拡大を示唆
2020/10/30 11:02
<チェックポイント>
●緊急債券買い入れ制度「PEPP」の規模を1.35兆ユーロで維持
●12月に最新の経済見通しに基づき金融政策を再考する―ラガルド総裁
●ロックダウン規制を考えると10-12月期GDPの下ブレは避けられない―ラガルド総裁
ECB(欧州中央銀行)は29日の定例理事会で、主要政策金利のうち、市場介入金利である定例買いオペの最低応札金利(リファイナンス金利)を0.00%に、また、下限の中銀預金金利をマイナス0.50%に、上限の限界貸出金利を0.25%に、いずれも据え置くことを全員一致で決めた。政策金利の据え置きは前回9月会合に続いて4会合連続。
量的金融緩和(QE)についても、3月18日の緊急理事会で、コロナ危機対策として導入を決めた緊急債券買い入れプログラム「PEPP」の規模を現在の1兆3500億ユーロに据え置くことを決めた。21年6月末までとする期限も変えていない。PEPPの買い入れ資産の対象には既存の資産買い入れプログラム「APP」の対象資産がすべて含まれるほか、信用格付けが低いため、これまで買い入れ要件を満たしていなかったギリシャ国債も買い入れの対象に含まれる。
さらに、買い入れ期限が到来する21年7月以降についても新規の買い入れは行わない代わりに、22年12月末まで買い入れた国債の満期償還金を再投資する、いわゆるロールオフ(過剰流動性を吸収するための不胎化政策)を行う方針も据え置いた。
ただ、足元はスペインとイタリアの新型コロナ感染再拡大によるロックダウン(都市封鎖)に続いて、フランスとドイツも11月末、または12月1日までロックダウンの再導入を決めたことを受け、ECBは景気刺激のため、12月10日の次回会合でPEPPによる資産買い入れ規模を拡大し、金融緩和を一段と進める可能性を示唆している。
ラガルドECB総裁は会合後の会見で、PEPPの規模拡大の可能性について報道陣から問われると、「理事会メンバーは(景気刺激を強めるため)金融政策を再考する必要があることで意見が一致している。どんなものが出てくるかは今後のパンデミックの拡大や感染阻止の新たな規制措置などに左右されるが、理事会は疑いもなく、経済・金融状況が金融政策手段の再考を正当化すると考えている」と述べた。
今後の金融政策については、前回会合時と同様に、「今後は経済予測の期間中、インフレ見通しが2%上昇をやや下回る水準(物価目標)に十分に収束するまで、政策金利は現在の水準か、または、一段と低い水準となることが予想される」とし、将来の利下げに含みを残した。これはECBが19年9月に初めて採用した、中銀が市場と対話を重視し、前もって将来における金融政策の方針を表明するフォワードガイダンスだ。しかし、市場では利下げ余地は少ないとみている。
ユーロ圏10-12月期の景気見通しについて、ラガルド総裁は会見で、「あす(30日)発表される7-9月期GDP(国内総生産)伸び率(市場予想は前期比7%減)は上振れのサプライズとなる可能性があるが、10-12月期についてはユーロ圏各国がロックダウン規制を発表したことを考えると、もし11月が厳しい経済状況となれば伸びは下ブレすると思われる」と悲観的に見ている。市場では10-12月期のGDPは前期比1.1%減と予想しているが、ロックダウンが1カ月続けば、さらに0.8-2%の下ブレを予想している。
次回の金融政策決定会合は12月10日に開かれる予定。
提供:モーニングスター社
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