英中銀、政策金利と量的金融緩和政策を据え置き―1委員は国債購入減額を主張
2021/5/7 11:35
<チェックポイント>
●国債買い入れペースを5-8月に週44億ポンドから34億ポンドへ減速
●21年GDPを7.25%増と予想―前回の5%増から上方修正
●インフレ率は1年早い22年に2%上昇に戻ると予想
イングランド銀行(BOE)は6日、金融政策委員会(MPC)の結果を発表し、政策金利を過去最低水準の0.10%に据え置くことを全員一致で決めたことを明らかにした。市場予想通りだった。
非伝統的な金融緩和措置である量的金融緩和(QE)規模を国債買い入れ枠だけ1500億ポンド増額し、総額8950億ポンド(8750億ポンドの国債買い取り枠と200億ポンドの投資適格級の社債買い取り枠)に拡大した買い取り規模についてはMPC委員の全員一致ではなく、8人対1人の賛成多数で据え置いた。
QE規模の据え置きに反対したのは、BOEの首席エコノミストのアンディ・ホールデン氏。タカ派(インフレ重視派)で知られる同氏はQEの継続には賛成だが、8950億ポンドの買い取り規模のうち、20年11月に増額した1500億ポンドの国債買い入れ額を1000億ポンドに500億ポンド減額(8950億ポンドから8250億ポンドへの減額)することを提案した。
同氏の提案は、ワクチン接種の急加速で景気回復が強まっていることからBOEが金融引き締めに転換する第一歩を意味する。市場では、このQE減額提案は今後、FRB(米連邦準備制度理事会)やECB(欧州中央銀行)のQEのテーパリング(段階的縮小)議論の先駆けとなる可能性が高いとみている。
今回の会合でBOEはQE規模の現状維持の方針は変えず、現在、週44億ポンドの国債買い入れペースを5-8月の4カ月間、週34億ポンドに減速させる方針を打ち出した。現状ペースでは21年11月に8750億ポンドの資産買い入れ枠の上限に達するため、市場の一部では今回の会合で買い入れペースを減速させることにより、QEを12月末まで引き延ばすとみていた。
BOEは今回の会合でも金融政策スタンスについて、声明文で、「物価が(一時的でなく長期にわたり)持続的に上昇するまでは景気刺激から撤退しない」というフォワードガイダンス(金融政策の指針)を据え置き、金融引き締めへの転換には慎重な姿勢を維持している。一方、「インフレ率は21年末までに一時的に物価目標の2%上昇を突破する」とし、インフレ率のオーバーシュートは持続せず、一時的に終わると楽観的に見ている。
また、BOEは今回の会合で、最新の5月金融安定報告書を発表し、景気やインフレの見通しを改定した。それによると、21年のGDP(国内総生産)見通しについて、1-3月期は前期比約1.5%減(前回2月予想より改善)と、マイナス成長となり、パンデミック前の19年10-12月期比で8.75%減になったが、4-6月期は同4.25%増と、急回復すると予想している。19年10-12月期比では5%減となるが、「その後は経済活動の規制の大半がなくなるため、GDPの回復が続き、21年末までにパンデミック前の水準に戻る」とした。21年のGDPを7.25%増と予想。前回2月予想時点の5%増を大きく上回ることになる。
さらに、「22年以降、GDPの押し上げ要因が剥離するため、GDPの伸びは鈍化する」と予想している。22年のGDP伸び率見通しは5.75%増(2月予想は7.25%増)、23年は1.25%増(同1.25%増)となっている。
インフレ率については、3月は前年比0.7%上昇と、2月の同0.4%上昇から加速したが、「今後はパンデミックによる物価への影響が薄まるため、短期的には物価目標の2%上昇に向かって加速する」と予想。「標準予測では21年末までに主にエネルギー価格の上昇により、2%上昇を一時的に超え、ピークは21年10-12月期の約2.5%上昇となる。しかし、中期的にはインフレ率は2%上昇に戻る」と予想している。21年の見通しは2.5%上昇(2月予想は2%上昇)、22年は2%上昇(同2.25%上昇)、23年も2%上昇(同2%上昇)と、2月予想時点よりも1年早い22年から2%上昇に戻ると見ている。
失業率の見通しについては、7-9月期に5.4%でピークとなる。2月予想時点では7.8%と予想されていたが、政府の従業員給与支援スキームや自営業者への所得補填スキームの延長により、100万人の失業者の増加が回避されたためだ。21年の見通しは5%(2月予想は6.5%)、22年は4.5%(同5%)、23年は4.25%(同4.25%)と予想している。
BOEの次回会合は6月24日に開かれる予定。
提供:モーニングスター社
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