米5月雇用統計、非農業部門雇用者数は前月比55.9万人増―市場予想下回る

経済

2021/6/7 9:29

<チェックポイント>

●弱い非農業部門雇用者数との受け止めから米長期金利低下―テーパリング観測後退

●失業率5.8%―20年3月以来14カ月ぶりの低水準

●平均時給、前月比0.5%増―4月は同0.7%増

 米労働省が4日発表した5月雇用統計で、非農業部門雇用者数は、前月比55万9000人増と、4月の27万8000人増(改定前は26万6000人増)を上回ったものの、市場予想の67万-72万人増には届かなかった。新型コロナ感染者数の減少やワクチン接種の進展により経済・社会活動の規制緩和が進展し、レジャー・接客業などの一時帰休労働者の職場復帰が進んだものの、低賃金で感染リスクの高い接客業を敬遠する層が少なからずいたことや失業保険の追加給付で補償が手厚く労働参加率が引き上がらなかったことなどが市場予想を下回った要因との見方が出ている。

 業種別では、建設業は前月比2万人減と4月の同5000人減から減少幅が拡大した一方、製造業は同2万3000人増に転じた。特に、自動車・同部品が急増した。パンデミック(感染症の世界的大流行)の影響を最も強く受けたサービス業も4月に比べ伸びが加速したが、レジャー・接客業は伸び悩んだ。

 5月雇用統計を受け、米債券市場では長期金利の指標である10年国債利回りが低下し、インフレ上昇懸念や、FRB(米連邦準備制度理事会)の量的金融緩和のテーパリング(段階的縮小)懸念が後退した。

 パンデミック前の雇用者数(事業所統計ベース)は約1億5250万人に対し、5月現在の雇用者数は1億4489万人と、761万人足りていない。21年末まであと7カ月間で雇用者数がパンデミック前の水準に戻るには月100万人増のペースで増加する必要があるが、今のペースではパンデミックで失われた雇用のすべてを取り戻すのに1年以上かかる見通しだ。

 過去3カ月間(3-5月)の月平均の非農業部門雇用者数の伸びは4月が減速したものの、54万1000人増となり、20年の5月時点の651万人減や6月時点の433万3000人減から回復した。

 失業率は5.8%となり、13カ月ぶりに上昇した4月の6.1%や市場予想の5.9%を下回り、パンデミックの悪影響が及び始めた20年3月の4.4%以来、14カ月ぶりの低水準となった。

 一方、市場が注目している労働市場への参加の程度を示す労働参加率(軍人を除く16歳以上の総人口で労働力人口を割ったもの)は61.6%と、4月の61.7%をやや下回った。20年6月(61.4%)以降、ほとんど変わっておらず、むしろ、パンデミックが始まったばかりの20年3月の62.6%やパンデミック前の19年12月の63.3%を下回っている。

 失業者数のうち、約20%に相当する182万3000人(4月は約22%相当の211万4000人)がパンデミックを受けた経済活動の自粛によって発生した「一時帰休による失業者」に分類された。5月はこの一時帰休者数が前月比で29万1000人減少(4月は8万8000人増加)した。過去5カ月間(1-5月)で、計121万6000人が職場復帰したが、20年6月の職場復帰者が約480万人と、ピークに達して以降、職場復帰のペースは依然として鈍化傾向にある。

 市場が注目していた賃金(平均時給)の伸びは前月比0.5%(15セント)増と、雇用需要の拡大を反映し、4月の同0.7%(21セント)増を下回ったが、市場予想の同0.2%増を上回った。

<関連銘柄>

 NASD投信<1545.T>、NYダウ投信<1546.T>、上場米国<1547.T>、

 SPD500<1557.T>、NYダウ<1679.T>、NYダウブル<2040.T>、

 NYダウベア<2041.T>

提供:モーニングスター社

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ