ECB、超低金利政策を据え置き―物価目標を「シメントリックな2%上昇」に正式決定

経済

2021/7/26 9:34

<チェック・ポイント>

●緊急債券買い入れ制度「PEPP」の1兆8500億ユーロ枠据え置き

●将来の利下げに含み

●ECB総裁、「デルタ株感染拡大が経済の先行きに影を落としている」と指摘

 欧州中央銀行(ECB)は22日の定例理事会で、主要政策金利のうち、市場介入金利である定例買いオペの最低応札金利(リファイナンス金利)を0.00%、下限の中銀預金金利もマイナス0.50%、上限の限界貸出金利を0.25%に、いずれも据え置くことを全員一致で決めた。市場の予想通りだった。据え置きは前回6月会合に続いて10会合連続。

 ただ、ECBは今回の会合で、物価目標を従来の「2%弱」から「シメントリック(上下が対称)な2%上昇」に変更することを正式に決定した。今後、ECBの新しいフォワードガイダンス(金融政策の指針)となる。

 今後の金融政策については、「物価目標を達成するため、政策金利を現在の水準か、または、一段と低い水準とすることが予想される」とし、将来の利下げに含みを残した。

 1兆8500億ユーロ規模の緊急債券買い入れプログラム「PEPP」の運用期限を22年3月末までとするこの措置も据え置いた。また、22年4月以降は新規の買い入れを行わない代わりに、国債の満期償還金を再投資する、いわゆるロールオフ(過剰流動性を吸収するための不胎化政策)を行う方針も据え置いた。ロールオフの期限については、20年12月会合で1年23年12月末までとしている。

 さらに、従来からの資産買い入れプログラム「APP」の下で、19年11月1日から月200億ユーロのペースで資産買い入れを実施しているが、この買い入れ規模も据え置いた。再投資による資産買い入れの終了時期についても、ECBは声明文で、「望ましい流動性の状況や十分な金融緩和を維持する必要がある限り、また、ECBが再度、利上げしたあとも、できるだけ長期にわたって続ける」との文言も据え置いた。

 このほか、銀行による中小企業や家計向け融資の拡大を目指すTLTRO3(貸出条件付き長期資金供給オペ)の貸出条件の緩和措置や、TLTRO3に基づいて、ECBがユーロ圏内の銀行に直接貸し出す規模も据え置いた。

 さらに、ユーロ圏各国中銀が予防的な観点から短期のユーロ資金をいつでもレポ取引により調達できるスタンディング・レポ・ファシリティ(SRF)「EUREP」の運用期間は22年3月末までとしている。

 ラガルドECB総裁は会合後の会見で、「新型コロナウイルスのデルタ型変異ウイルスの感染拡大が経済の先行きに影を落としている。景気回復への道のりはかなり先だ」とし、悲観的な見方を示した上で、PEPPによる国債買い入れの縮小の議論についても、「議論はなかった」とした上で、「買い入れ縮小の議論はかなり時期尚早だ」と述べた。また、最近のインフレ加速は「一時的と考えられる」とし、ハト派姿勢を鮮明にした。

 次回の会合は9月9日に開かれる予定。

提供:モーニングスター社

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