<新興国eye>カンボジア、新投資法を施行―18の投資優遇分野に優遇措置

新興国

2021/11/12 12:07

 10月15日、投資優遇分野や免税等の投資優遇策を定めた新投資法が公布され、同日施行されました。なお、詳細を定める政令は、今後公布される予定です。これまでの1994年投資法、2003年改正投資法を、新規投資誘致、既存投資企業のビジネス拡大を一層促進する観点から改正を実施したものです。改正に当たっては、カンボジア日本人商工会をはじめとして、民間からの意見を取り入れたとしています。

 今回の新投資法では、今後のカンボジア経済の主軸として期待される分野・業種や、税制優遇の適用範囲および選択肢の拡大に関する規程がポイントとなります。また、適格投資プロジェクト関連手続の迅速化や投資家や投資資産の保護拡充などに関する規程も注目点となります。

 投資優遇分野としては、「革新的なハイテク産業」、「付加価値の高い製品を持つ、革新性および高い競争力を有する新産業や製造業のベンチャー企業」、「デジタル産業」、「環境管理・保護のための投資および生物多様性・循環型経済の開発」といった先進的産業が指定されています。これまでの外資の誘致の中心だった縫製業は、明確には含まれておらず、日系企業が得意とする「地域および世界の生産チェーンに貢献する産業」、「電気・電子産業」、「スペアパーツ、組立ておよび取付け産業」、「機械産業」などが含まれています。

 また、国内の中小企業振興を目指して、「農業、観光および製造業に関する裾野産業」、「農業、農産業、農産加工業および食品加工業」、「観光産業およびその他観光に関連する活動」などが指定されています。このほか、インフラ、物流なども対象となっています。

 優遇措置についても、法人所得税の免除に加えて、オプションとして特別償却も選択できるようになりました。また、特定の活動(研究開発、人材育成、福利厚生拡大など)について課税標準から150%の控除も追加されました。

 カンボジア政府は、産業開発政策で、外資の誘致を目標として掲げ、既存の投資家の意見を取り入れた新投資法の策定はその一環として進められてきました。予想より時間はかかったものの、多くの努力を結集して、新投資法が完成したことには大きな意義があるものと見られます。外資誘致の基盤としての役割を果たしていくことが期待されます。

【筆者:鈴木博】

1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。

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提供:モーニングスター社

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