松屋R&D・後藤秀隆社長に聞く:血圧計腕帯、エアバッグ、カーシートなどの受注拡大続く
2022/5/24 17:30
松屋アールアンドディ(=松屋R&D、7317)は縫製工程を自動化する独自技術を生かし、縫製自動機の開発・製造・販売とともに、血圧計腕帯、カーシート、エアバッグなどの製造・販売も手掛けている。前3月期は新型コロナウイルスの影響もあって苦戦したものの、今期は主力事業の成長に加えて、新規事業の収益貢献も期待される。同社の現状と将来のビジョンについて後藤秀隆社長=写真=に聞いた。
――前期決算は連結売上高56億4000万円、営業利益3億5500万円でした。
「当社の主力である縫製自動機事業は、顧客に購入してもらった自動機を子会社の松屋ベトナムに設置した上で、子会社が製品を製造し顧客に納入するというビジネスモデルです。しかし、新型コロナの急拡大から、ベトナムでは昨年夏にコロナ対策規制が発令されました。そのため、受注は好調だったものの、工場の稼働が大きく制限されました。さらに、納期対応のため残業代の増加やエア便を使ったことによる運賃なども発生し、利益面を圧迫しました。また、前々期に特需として発生したアイソレーションガウンの受注減少の影響もありましたが、既存事業による売上高は過去最高でした」
――一方、今期については売上高61億6600万円(前期比9.3%増)、営業利益4億1000万円(同15.5%増)で増収増益を予想しています。
「前期は想定外のことが起こりましたが、血圧計腕帯、カーシート、エアバッグなど、既存事業の拡大基調に変わりはありません。ただし、リスク要因として上海のロックダウン(都市封鎖)、ウクライナ情勢、半導体供給不足があり、第1四半期(4~6月)および第2四半期(7~9月)前半くらいは厳しい状況が続くと思われますが、血圧計腕帯については血圧計の市場全体が伸びていく予測が出ているほか、カーシート、エアバッグに関してはトヨタ自動車(7203)以外のメーカーの受注も予定し、今期も順調な受注増が見込めます。ベトナム工場の安定稼働も続くでしょう。その中で、自動機の海外展開を強化するとともに、新規事業の積極展開にも取り組んでいきます。幾つかの新規事業が売上計上できる見込みもあり、今期から報告セグメントを変更します。従来の縫製自動機、縫製品の2セグメントから、新たにメディカルヘルスケア(血圧計腕帯など)、セイフティシステム(カーシート、エアバッグなど)、その他の3セグメントとし、それぞれの成長を目指します。今期は最終的に21年3月期のアイソレーションガウンの特需を除いた過去最高の売上高を目指します」
リハビリ用ロボットなど新規事業で成長力強化
――新規事業に力を入れていますね。
「主力製品である血圧計腕帯、カーシート、エアバッグで安定収入を得る一方で、将来の成長を見据えて新規事業展開を進めています。中でも、メディカルヘルスケア事業においては、Forbes誌でも紹介されたポーランドのグローバル医療機器メーカーEGZOTech(EGZO)社と日本総代理店契約を締結し、EGZO社のEMG(表面筋電図)を利用した脳梗塞(こうそく)のリハビリ用ロボットおよび周辺機器の販売を行う計画です。医療専門コンサルタントのエムハートとコンサルティング契約を締結しており、6月にも許認可が下りれば本格展開を開始する予定です」
「そのほか、伸び縮みのある柔らかい素材の縫製を実現するよう、オムロン(6645)と共同で3D(3次元)画像処理付き縫製ロボットの開発を行っています。また、ロボットSI(ロボット・システムインテグレーター)、ドローン(小型無人飛行機)用エアバッグの開発も推進中です。今後、人手不足がより深刻化する観測から、拡大するニーズに合わせて、さまざまな分野で自動化システムを開発し、市場へ投入していく考えです」
――海外展開はいかがですか。
「ベトナムでは現在の5工場をすべて集約した新工場を建設する予定です。受注増に応じた生産規模の拡大とともに、Matsuya Innovation Center(MIC)も拡充します。従来、工場の土地、建物ともレンタルでしたが、新工場建設で自社工場を保有することにより、固定資産の減価償却費や借入の金利を加味しても、1億円以上のコスト削減が見込めます。また、ベトナムでは経済発展のため事業用地不足になっていますが、第1~第5工場の跡地を当社が改めて活用する計画を大手銀行と進めており、当社にとって事業拡大の余地は非常に大きくなっています」
「一方、今後は海外展開を本格化していきます。当社の技術、システムを利用すれば、同じものを製造しても、安く、高品質にできる強みがあります。それを生かし、さらなる認知度向上、より一層の顧客獲得に取り組みます。現在、欧州に拠点開設を計画しており、既にポーランドで場所も決まりました。今後、ポーランドを拠点に、ルーマニア、チェコなどに加えて、チュニジアでも事業強化を目指します。メキシコへの進出も進めています。新型コロナで海外ではこれまで思うような営業活動ができませんでしたが、今後は積極的に出張して対面の営業を行っていきます」
「当社はベースに常に安定的に売上・利益を伸ばしていくことができる事業を持ちながら、なおかつ、このような大きな成長戦略を進めていこうと思っています」
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