米4-6月期GDP、前月比0.9%減―市場予想に反し2期連続マイナス成長

経済

2022/7/29 9:14

<チェックポイント>

●個人消費、2期連続で伸びが減速

●住宅投資、設備投資の落ち込み顕著―前期のプラス成長からマイナス成長に転換

●PCE物価指数、予想上回る前年比8.7%上昇―追加利上げ不可避

 米商務省が28日発表した4-6月期実質GDP(国内総生産、季節調整済み)・速報値は、市場予想(0.5%増)に反する年率換算前期比0.9%減となった。前1-3月期の1.6%減に続いて2期連続のマイナス成長となり、テクニカルリセッションと呼ばれる局面に入ったが、公式にはNBER(全米経済研究所)によるリセッション(景気後退)宣言を待つことになる。ただ、それまでには広範な検証が必要で、宣言がすぐには出ない公算が大きい。

 2期連続のマイナス成長はいわゆる、大恐慌時代(07年12月-09年6月のパリバ・ショック以降の金融危機)以来となる。ただ、4-6月期の実質GDPの実績値は19兆6817億ドルと、コロナ禍前の19年10-12月期実績値(19兆2023億ドル)を5期連続で上回っている。

 2期連続でマイナス成長となったのは、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の開始(2月24日)と、それに伴う西側諸国の対ロ経済制裁により、インフレ圧力が一段と上昇したことなどが大きい。

 市場では統計発表後、2年国債の利回りが低下し、株式市場でもS&P500指数が寄り付きで上昇、ドルは下落した。2期連続のマイナス成長を受け、FRB(米連邦準備制度理事会)の大幅利上げの可能性が後退するとの見方が広がった。

 4-6月期のマイナス成長の主因の一つは、全体の約7割を占める個人消費の低迷。個人消費は0.7%増と、前期の1.0%増を下回り、2期連続で伸びが減速。市場では高インフレが消費を抑制したと見ている。

 民間投資は13.5%減と、前期の5.0%増から急減速。4期ぶりに減少し、GDP全体の伸びを押し下げた。

 民間投資のうち、住宅以外の民間投資(設備投資)は0.1%減と、前期の10.0%増から2年ぶりに減少に転じた。住宅投資は14.0%減と、前期の0.4%増から3期ぶりに減少した。3月からの米利上げサイクルに伴う住宅ローン金利の急上昇や住宅価格の高騰で、住宅購入者のアフォーダビリティー(住宅取得能力)が低下し、需要が冷え込んだため、建設業者が住宅投資を抑制した。

 住宅投資以外の民間投資の内訳では、事業所ビルや工場、石油掘削リグなどの建物に対する投資が11.7%減(前期は0.9%増)と、5期連続で減少。企業の機械設備投資も2.7%減(同14.1%増)と、3期ぶりに減少した。

 企業在庫投資の実質変動額が前期比年率換算で816億ドル増にとどまり、前期の1885億ドル増の半分以下の低い伸びとなったこともGDPの押し下げ要因となっている。

 成長率を下支えしたのは外需部門。GDP押し上げ要因である輸出が18.0%増と、前期の4.8%減から増加に転じた。21年10-12月期(22.4%増)以来の大幅増。一方、GDP押し下げ要因である輸入は3.1%増(前期は18.9%増)と、急激に伸びが鈍化。輸入の伸びが輸出の伸びを大きく下回ったため、貿易赤字は1兆4747億ドルと、前期より700億ドル縮小し、成長率を押し上げた。

 一方、政府部門(政府消費支出と固定資本形成)は1.9%減と、前期の2.9%減に続いて3期連続で減少し、GDPを押し下げた。

 また、今後の個人消費の先行きを占う意味で重視される可処分所得の伸びは、インフレ調整前で前期比年率換算6.6%増と、前期の同1.3%減を上回ったが、インフレ調整後(2012年価格水準)では0.5%減(前期は7.8%減)と減少。可処分所得に対する貯蓄の割合である貯蓄率も5.2%と、前期の5.6%を下回り、5期連続で低下した。

 インフレ動向を示し、名目GDP伸び率(7.8%増)から実質GDP伸び率を算出するときに使われる物価指数であるGDPデフレーターは、前期比年率換算で8.7%上昇と、前期の8.2%上昇や市場予想(7.1%上昇)を上回った。一方、PCE(個人消費支出)物価指数は7.1%上昇と、前期と変わらなかった。また、FRBが最も重視しているコアPCE物価指数(値動きが激しいエネルギーと食品を除く)は4.4%上昇(前期は5.2%上昇)と、伸びが3期ぶりに減速した。

<関連銘柄>

 NASD投信<1545.T>、NYダウ投信<1546.T>、上場米国<1547.T>、

 SPD500<1557.T>、NYダウ<1679.T>、NYダウブル<2040.T>、

 NYダウベア<2041.T>

提供:モーニングスター社

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