【為替本日の注目点】米8月のNFPは31.5万人増加
雇用統計発表直後にドル円は140円80銭まで買われたがその後140円割れまで反落。NFPは予想を上回ったものの、失業率は悪化。ユーロドルも0.9946まで下げたあと反発。株式市場では午前中は上昇したものの、午後には失速。3指数が揃って下げ、ナスダックは6日続落。債券は反発。長期金利は3.19%前後まで低下。金と原油は反発。
マーケット情報
8月失業率 → 3.7%
8月非農業部門雇用者数 → 31.5万人
8月平均時給(前月比) → 0.3%
8月平均時給(前年比) → 5.2%
8月労働参加率 → 62.4%
7月製造業受注 → -1.0%
ドル/円 139.90 ~ 140.80
ユーロ/ドル 0.9946 ~ 1.0033
ユーロ/円 139.39 ~ 140.75
NYダウ -337.98 → 31,318.44ドル
GOLD +13.30 → 1,722.60ドル
WTI +0.26 → 86.87ドル
米10年国債 -0.064 → 3.189%
本日の注目イベント
中 8月財新サービスPMI
中 8月財新コンポジットPMI
独 8月サービス業PMI(改定値)
欧 ユーロ圏8月サービス業PMI(改定値)
欧 ユーロ圏8月総合PMI(改定値)
欧 ユーロ圏7月小売売上高
英 8月サービス業PMI(改定値)
英 保守党党首選、決選投票の結果発表
米 NY市場休場(レーバーデー)
難しい判断でした。8月の雇用統計では、非農業部門雇用者数は市場予想の「30万人」を若干上回る、「31.5万人」だったため、ドルが買われましたが、失業率が予想の「3.5%」よりも悪化し「3.7%」だったことからドル円はその後売られました。株式市場では、今回の雇用統計の結果がFRBの大幅な利上げスタンスを変化させるには不十分だと受け止められ、午前中はプラス圏で推移していた株価は、結局3指数ともマイナスで取引を終えています。特にナスダック指数は154ポイント売られ、これで6日続落となっています。金と原油が反発したのは、売られ過ぎからの自律反転といった状況でした。雇用者数の増加ペースは7月に比べて鈍化したものの、30万人を超えていたことで、なお底堅く、「インフレ高進と金利上昇、経済見通しの不確実性の中でも健全な労働需要があることが示された。労働力の需要の強さは引き続き消費支出の支えとなる」(ブルームバーグ)と市場は理解したようです。
サプライズだった7月分(52.8万人)は若干下方修正されましたが、FRBが3月から連続利上げを行い、景気拡大に急ブレイキをかけているにもかかわらず、労働市場は依然として拡大しています。パウエル議長は先のジャクソンホールで講演、「9月の利上げ幅は今後のデータ次第だ」と述べていましたが、個人的にはこの段階で今月20-21日の会合では0.75ポイントの利上げの可能性はやや高まった印象ですが、今後は13日の「8月のCPI」に関心が移ることになります。また、引き続き原油価格の動向にも目を凝らしたいと思います。
ドイツのショルツ首相率いる連立政権は、電力価格の高騰に苦しむ家計を支援するために650億ユーロ(約9兆円)規模の救済計画で合意しました。政府は声明で、「高いエネルギー価格による急激な負担増のため、市民および経済への迅速かつ適切な救済策が必要になっている」と説明しています。これから冬に向い、エネルギー需要がさらに高まることが予想されることから今回の支援策が決められたようですが、救済パッケージは連邦政府と州政府、地方自治体の拠出から成るようです。またエネルギー危機が深刻化しているEUでは、高騰する電力・天然ガス価格の抑制を目指し、ガス価格への上限設定や電力デリバティブ取引の一時停止といった非伝統的な措置を検討しているとブルームバーグは報じています。EU議長国のチェコは緊急介入措置の選択肢のリストにそうした非伝統的措置を含める見通しで、域内のエネルギー担当相は、電力価格急騰とロシアによる欧州向け天然ガス供給制限の動きへの対応で9日に臨時会議を開く予定です。
インフレ高進の波は依然として続いており、むしろ加速している感もあります。FRBを始め、世界の中央銀行がインフレ阻止のため積極的に利上げを行っており、その影響をもろに受けているのが世界の株式市場です。日経新聞は昨日、「ジャクソンホールから1週間。世界の株式時価総額は約5兆ドル(約700兆円)失った」との記事を掲載していました。日米欧の中では米国が最も減少額が大きく、日本が相対的に小さいようですが、それもそのはず、日本のインフレ率は欧米の4分の1程度であり、そもそもそれまでの株価の上昇率が欧米と比較して「小粒」だったことがあります。それでもNY株式市場の影響を強く受けているのが現状です。世界経済がよりグローバル化していることを考えると、日銀が想定している「物価上昇は年内に2~3%まで上昇するが、来年は1.5%程度まで低下する」といったシナリオは、果して実現性があるのかどうか、やや疑問です。物価上昇がいずれ低下し、目標である2%を下回るという見通しが、金融緩和策継続の理由の一つになっています。その結果、140円台後半まで「円安」が進んでいます。
本日のドル円は139円50銭~141円程度を予想します。
(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)
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