【為替本日の注目点】ドル円145円目前から反落

為替

サーチナ

2022/9/8 10:40

 ドル円は連日大台替えを見せ、NY市場開始前には144円99銭までドル高が進む。その後ブレイナードFRB副議長の発言を手掛かりに一転してドルが売られ、143円68銭まで下落。ユーロドルも朝方の0.98台後半から買い戻され、1.00台を回復。株式市場は久しぶりに3指数が揃って反発。ナスダックは2%以上買われ、8日ぶりの上昇。債券は反発。長期金利は3.26%台へと低下。金は続落。原油は大きく売られ、今年1月以来となる81ドル台まで下落。主要国中銀が大幅利上げを行い、景気減速により石油需要の減少がさらに進むとの観測が広がる。

マーケット情報

7月貿易収支 → -70.6b

ドル/円 143.68 ~ 144.95

ユーロ/ドル 0.9875 ~ 1.0011

ユーロ/円 143.04 ~ 144.00

NYダウ +435.98 → 31,581.28ドル

GOLD -14.90 → 1,727.80ドル

WTI -4.94 → 81.94ドル

米10年国債 -0.086 → 3.263%

本日の注目イベント

豪 7月貿易収支

日 7月貿易収支

日 7月国際収支

日 8月景気ウオッチャー調査

欧 ECB政策金利発表

欧 ラガルド・ECB総裁記者会見

米 新規失業保険申請件数

米 7月消費者信用残高

米 パウエル・FRB議長講演

米 エバンス・シカゴ連銀総裁講演

米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁講演

 ドル円はついに145円にあと1銭に迫る水準まで上昇しましたが、「145」という数字を見ずに反落しています。昨日の東京市場午後に144円台に乗せたドル円は欧州市場でも投機的なドル買いが続き、NY市場が始まる20時半ごろには144円99銭までドルが続伸しました。しかしNY市場ではブレイナードFRB副議長の発言を手掛かりに143円68銭までドルが売られました。ちょうど145円という大台を前に、この発言が利益確定のドル売りを誘ったというところでしょうか。

 それにしても今週に入ってからのドル円の上昇は急ピッチです。昨日までですでに5円に迫る値幅で上昇しており、投機筋は「政府日銀は動かない」というよりも「動けない」と見透かしているようです。144円台まで円が売られた昨日、鈴木財務大臣は「円安方向に一方的に振れており憂慮している。継続することになれば、必要な対応を取る」と話し、必要な対応の詳細については「私の不用意な発言が相場に影響を与えてはいけないため、一切コメントしていない。まさにどうゆう対応を取るかは、為替に大きな影響与えるためコメントしない」と述べていました。市場に影響を与えるために発言すべきだと思いますが、なんとも消極的なコメントです。仮に市場介入を行う場合には、財務大臣が最高意思決定者になり、その指示に基づいて国際局長→為替市場課長へと命令系統が降り、その指示に従い日銀が動くというのが基本的な流れです。市場介入の最高責任者である財務大臣のこのような言葉から市場は「介入はない」と読んでドル買いを仕掛けているのが実情のようです。もっとも、日銀が介入したとしても、多くの市場関係者はこの円安の流れを変えることができるとは考えていません。介入には少なくとも米国、できればユーロ安が進んでいることもあり、日米欧が協調することが必要です。現時点では米財務省が協調介入に同意するとも思えません。インフレに苦しむ米国にとって「ドル高」はインフレを相殺してくれる一要因だからです。ブルームバーグは、「米財務省のダウィン報道官は7日、イエレン財務長官が7月の訪問時に円相場や為替介入について議論して以降、同省のスタンスが変わったか否か質問を受け、『現時点で付け加えることはない』と答えた」と報じています。

 ブレイナードFRB副議長のNYでの会議で行った発言が、株高、債券高、さらには金利が低下したことでドル売りを誘いました。ブレイナード氏は、「インフレを押し下げるため、われわれは必要な限り対応を続ける」と述べ、「インフレ率が目標に向けて低下しているとの確信をもたらすため、金融政策を当面、景気抑制的な水準にとどめる必要がある」と語っています。ここまでは、これまでもパウエル議長が発言してきたことと同じで、特に目新しい内容ではなかったですが、続けて、「引き締めサイクルにおける迅速さとそのグローバルな性質、さらに金融環境引き締めの効果が総需要に行き渡る速さを巡る不透明感は、過度の引き締めに関連したリスクを生み出す」と述べ、「時期尚早に退くリスクを回避することも重要だ」と指摘しています。その他にも、ボストン連銀のコリンズ総裁は、「9月の金融政策行動として何がまさしく適切かあまり具体的に言及するのは時期尚早だが、さらなる行動が必要だとあらためて申し上げたい」と発言し、「物価はまだ大幅には下がっておらず、われわれはこれを目指すことになる」と話しています。また、クリーブランド連銀のメスター総裁も、「金融政策に関する自身の考えを構築するにあたっては、インフレというけだものとの闘いで尚早に勝利宣言しないよう注意したい」と述べ、あらためてフェデラルファンド(FF)金利を早い時期に4%超に引き上げ、その後しばらくその水準で据え置くことが必要との考えを示しました。

 このように、総じてFOMCメンバーはタカ派的な発言を行っています。来週13日の8月のCPIを確認しなければなりませんが、個人的には0.75ポイントの利上げを予想しています。前日のオーストラリア準備銀行(RBA)に続いて、昨日はカナダ中銀も予想通り追加利上げを決めました。ただ利上げ幅は想定以上の0.75ポイントでした。カナダ中銀はこれで、4会合連続の利上げを行い、昨日のコメントではさらに今後の利上げも示唆しています。RBA,カナダ中銀が大幅利上げに踏み切ったことで、FOMCメンバーにも多少影響を及ぼす可能性があります。さらには今夜のECBの決定にも影響があるかもしれません。同時に、日銀との違いがいやが上にも目だってきます。

 今夜もFOMCメンバーの講演が多くあります。特にパウエル議長の講演には注目です。来週にはFOMCを前に「ブラックアウト」期間に入ることから、おそらくこれが会合前の最後のパウエル氏の発言かと思われます。市場は連日値動きが大きく、昨日のブレイナード副議長の発言で動いたように、発言には過敏になっています。

本日のドル円は143円~145円程度の動きでしょうか。

(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)

・今日のアナリストレポート

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・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧

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