ECB、初の0.75ポイント利上げ―市場予想通り

経済

2022/9/9 9:15

<チェック・ポイント>

●今後、数回の追加利上げを表明

●短期的にインフレは急加速すると警戒

●年内から23年1-3月期にリセッション入りを予想

 ECB(欧州中央銀行)は8日の定例理事会で、主要政策金利のうち、市場介入金利である定例買いオペの最低応札金利(リファイナンス金利)を0.75ポイント引き上げ、1.25%とすることを全員一致で決めた。市場予想通りだった。0.75ポイントの利上げはユーロ誕生後で初めて。

 他の政策金利も同率引き上げられ、下限の中銀預金金利は0.75%、上限の限界貸出金利は1.50%となった。

 ECBは声明文で、インフレを早期に物価目標に戻すため、利上げペースを加速したと指摘。さらに、「今後、数回の会合で、インフレ期待が持続的に上昇するリスクを防ぐため、金利をさらに引き上げる」とした。

 ECBのラガルド総裁は会合後の会見で、「政策金利はまだ中立金利(金利が経済を刺激することも、成長を阻害することもない水準)に達していない」と指摘し、今後数回の利上げの根拠とした。今回のECBの積極利上げの背景にはFRB(米連邦準備制度理事会)が20-21日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で0.75ポイントの大幅利上げに踏み切る公算が大きいためで、市場ではようやくECBも積極利上げを進める世界の主要中銀に仲間入りしたと見ている。ECBは今後、ECBは数回の利上げのあと、23年9月から利下げに転換するとの見方もある。

 ラガルド総裁はインフレ見通しについて、「エネルギーコストの高騰を受け、価格圧力は多くのセクターに広がっている。コアインフレ率は22年に3.9%上昇、23年は3.4%上昇となり、24年に2.3%に達する見通しだ」とし、短期的にインフレが急加速するとして警戒感を強めた。

 景気見通しについては、年内と23年1-3月期に停滞すると見ている。これはロシア産ガス欧州供給の完全停止が想定されており、市場ではユーロ圏経済は23年、ロシア産ガス欧州供給の完全停止を受け、リセッション(景気失速)に陥るという非常に暗い景気下ブレシナリオを描いていると見ている。

 また、ECBは新型コロナ危機対策だった緊急債券買い入れプログラム「PEPP」(総額1兆8500億ユーロ)によって買い入れた保有国債の満期償還金を少なくとも24年末まで再投資すること、資産買い入れプログラム(APP)終了後のバランスシート(保有資産)を再投資することで維持する方針をそれぞれ再確認した。バランスシートを維持する期間について、ECBは前回会合時と同様、「主要金利の引き上げを開始した日を過ぎて長期にわたり、また、良好な流動性条件と十分な金融緩和を維持するために必要な限り続ける」としている。

 次回の会合は10月27日に開かれる予定。

提供:モーニングスター社

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