<相場の見方、歩き方>最高益更新、高配当利回り―逆行高銘柄にみられる共通点がヒントに(2)

国内市況

株式

2022/9/12 8:01

(1)からつづく

―ウクライナ問題が引き続きインフレ加速の要因に―

 物価上昇に対する大きな障壁となっているロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、依然として解決の糸口すら見いだせない状況です。特にザポリージャ原発に対する砲撃は危機感を募らせます。ロシア、ウクライナの双方が互いを非難し合っています。

 万が一にもザポリージャ原発への砲撃で何らかの不測の事態が起こった場合、「世界の穀倉地帯」と呼ばれるウクライナの土地に放射能による汚染が広がりかねません。世界中が直面する現在の食料危機に火に油を注ぎかねず、それがインフレの芽を助長しかねない地点にいます。

 そのような崖っぷちのような状況で、9月7日の日本経済新聞・朝刊には日本郵船の長沢仁志社長のインタビュー記事が掲載されました。記事には「今年末に向けてリセッションは避けられず、コンテナ船運賃の狂乱も今年いっぱいで平時に戻る」というものです。

 長沢社長や日本経済新聞の記者が強調したかったのは、後段にあたる「コンテナ船運賃は平時に戻る」の部分だったのかもしれません。しかしマーケットおよび市場関係者はそうではなく、むしろ前段にあたる「今年末に向けてリセッションは避けられない」の部分により強く反応した可能性があります。

 そこから冒頭に記したような、水曜日の東京株式市場の全面安につながってしまった模様です。午前中の一時358円の下げは最近にはなく、かなり危機感の強い下落でした。

 ただし冷静に見ると、全面安とは言っても要所のところで逆行高する銘柄も目立っていました。この日の東証プライム市場の値上がり銘柄は432銘柄、一方の値下がり銘柄数は1369銘柄でした。広範囲に値下がりした割にはところどころに前日比プラスの株価を維持する銘柄も見られました。

 ここで強調したい点は、この日に上昇した432銘柄の逆行高銘柄です。興味深い銘柄がたくさん潜んでいるように思います。たとえば時価総額の大きなところでは、NTT<9432.T>、KDDI<9433.T>の通信キャリアがそうです。動画配信に代表されるデータ通信料の増加が背景となっているのか、逆行高を示しました。

 あるいは消費セクターのセブン&アイ・ホールディングス<3382.T>、しまむら<8227.T>も逆行高でした。不動産では三井不動産<8801.T>、三菱地所<8802.T>、住友不動産<8830.T>、野村不動産ホールディングス<3231.T>もそろって上昇しました。

 さらに興味深いのは電子部品セクターの一角です。日東電工<6988.T>、ヒロセ電機<6806.T>、ニチコン<6996.T>、KOA<6999.T>がいずれも軟調な地合いの中で逆行高となり存在感を示しました。スマホ市場は成長が鈍化していますが、それに代わって自動車向けが急速に伸びて収益を支えています。

 ここに挙げた銘柄はいずれも今期中に最高益となることが予想されており、しかも配当利回りも市場平均よりかなり高い水準で推移しているものが多く含まれます。まさに現在の市場のリーダーシップを取れるような銘柄群です。派手さはありませんが、現在のマーケットにおける方向性を示しているのではないでしょうか。本格的な業績相場は利上げラッシュのまさにこの時から始まるような気がしてなりません。

 *おことわり この記事は、2022年9月11日にYahoo!ファイナンスで有料配信されたものです。

提供:モーニングスター社

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