【為替本日の注目点】ドル円反発し155円台に
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
ドル円は急反発し、前日の下落分を埋める。強めの経済指標が相次ぎ、FOMCメンバーの発言も利下げを急がないとの認識で一致。ユーロドルは小動きで、1.08台半ばで推移。株式市場は3指数が反落。ダウはザラ場では初となる4万ドルの大台乗せを見せたが、結局小幅安。債券は大幅に売られ、長期金利は4.37%台に上昇。金は反落し、原油は続伸。
新規失業保険申請件数 → 22.2万件
4月住宅着工件数 → 136.0万件
4月建設許可件数 → 144.0万件
5月フィラデルフィア連銀景況指数 → 4.5
4月輸入物価指数 → 0.9%
4月輸出物価指数 → 0.5%
4月鉱工業生産 → 0.0%
4月設備稼働率 → 78.4%
マーケット情報
ドル/円 154.62 ~ 155.53
ユーロ/ドル 1.0855 ~ 1.0875
ユーロ/円 168.05 ~ 168.91
NYダウ -38.62 → 39,869.38ドル
GOLD -9.40 → 2,385.50ドル
WTI +0.60 → 79.23ドル
米10年国債 +0.035 → 4.375%
本日の注目イベント
中 4月小売売上高
中 4月鉱工業生産
欧 ユーロ圏4月消費者物価指数(改定値)
米 4月景気先行指標総合指数
米 ウォラー・FRB理事講演
米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、イベントで挨拶
前日の米消費者物価指数(CPI)の下振れから、NYでドル円が大きく売られたその流れを受け、昨日の朝方には153円60銭前後まで売られたドルでしたが、わずか1日で下落分をほぼ埋め、前日の水準を回復しました。米金融当局が利下げに踏み切れるのかどうかを巡る攻防で、ドル円も大きく上下する荒っぽい動きが見られます。
先ず、昨日発表され経済指標が概ね米経済活動の堅調さを示し、インフレの鈍化に逆行するものが多く、これがドルを押し上げ、株価を下げ、債券も売られました。「新規失業保険申請件数」は先週比で1万件ほど減少していました。もっとも、この数字はNY市の公立学校が春休みだったという「季節的要因」によるものと分析されています。「NY市では、学校の休み期間中にはスクールバスの運転手ら一部労働者が失業保険を申請できるため、休み期間中とその後は申請件数の振れが激しくなる傾向がある」(ブルームバーグ)そうです。また、4月の輸入物価指数は前月比で「0.9%」上昇しており、市場予想の「0.3%」を大きく上回っていました。
それに追い打ちをかけたのが、FOMCメンバーによる「タカ派」発言しでした前日のCPIの結果で、早ければ9月にも利下げが開始されるとの観測が出た矢先でしたが、やはりというか、当然というか、メンバーの発言はそれでも利下げには慎重なものばかりでした。NY連銀のウィリアムズ総裁はロイター通信とのインタビューで、「今、金融政策のスタンスを変える理由があることを示す指標は見当たらない。インフレ率が2%目標に近づくという、より強い確信が必要だが、近い将来これが得られるとは思わない」と、かなり利下げには弱気の発言を行っています。このインタビューは15日に行われたものですが、同日の弱いCPIの発表後だったのかどうかは分かりませんが、発言内容からすると発表前に行われた可能性が高いと思われます。また、リッチモンド連銀のバーキン総裁はこれまでの主張を繰り返し、「適切な方法で持続的に2%に達するには、もう少し時間がかかると思う」と述べ、「サービスではまだ多くの動きがあり、少し時間がかかりそうだ。われわれは正しい道のりを進んでいると確信している」と、CNNの番組で話しています。
また、クリーブランド連銀のメスター総裁もオハイオ州のイベントで、「入ってくる情報は、インフレ鎮静化の確信を得るのに、より長い時間がかかることを示唆している。インフレが持続的に、また時宜を得た形で2%に戻る道筋にあることを確信させる十分な証拠がないまま、金利をあまり早く急激に下げれば、これまでのインフレ鎮静化の進展が台無しになる恐れがある」と語っています。このように、3地区連銀総裁は足並みを揃えて利下げは急がない姿勢を示したことで、前日のCPI効果も「相殺」された形になりました。
バイデン政権の経済顧問トップであるブレイナード国家経済会議(NEC)委員長は、バイデン大統領が発表した中国からの輸入品に対する大幅な関税引き上げ措置を強く支持する意向を示しました。ブレイナード氏は、前FRB副議長の要職にあり、次期FRB議長候補の1人でした。ブレイナード氏は、「われわれは過去から学んだ。米国で第2のチャイナ・ショックを起こしてはならない。中国はこれまでと同様の方法で、過剰生産力に著しい投資を行い、人為的に低く価格設定された輸出品で世界の市場をあふれさせ、それを成長の原動力としている」と述べ、大幅な関税引き上げは米経済が一層混乱しないようにする上で必要な措置であると強調していました。
米利下げが年内にあるのかどうかを巡る思惑が相場の動きを加速しています。まさにデータ次第というところですが、これは不確実性が高く予想も簡単ではありません。予断を持つことなく、相場に対峙していくことがますます重要になっています。
本日のドル円は154円50銭~156円程度を予想します。
(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
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