<新興国eye>インドネシア中銀、予想に反し0.50ポイントの大幅利上げ―利上げは2会合連続(2)

新興国

2022/9/26 10:23

(1)からつづく

 市場ではインドネシアも利上げによる通貨高でインフレ抑制に動く、いわゆる、逆通貨戦争(通貨高戦争)に入ったと見ている。通貨戦争は通貨安による輸出競争力を高める戦略を意味するが、逆通貨戦争はその逆に、通貨高により、各国の国際的な購買力を支える中銀の努力を指す。その上で、中銀は「インフレを抑制し、マクロ経済を安定させる努力を援護するため、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を反映するよう、ルピア相場の安定を強化する」としている。

 ルピア相場は21日時点で21年12月末に比べ4.97%下落している。ただ、中銀は、「他の多くの新興国通貨の下落(マレーシアは8.51%、インドは7.05%、タイは10.07%)に比べると良好だ」としている。

 また、中銀は、インフレ見通しについて、「世界的なエネルギーや食料の価格上昇を背景にインフレ圧力が高まっている」とした上で、「22年のインフレ率は3%プラス・マイナス1%の物価目標のレンジの上限(4%上昇)を超える」と、懸念を示した。8月のインフレ率(全体指数)は前年比4.69%上昇と、7月の4.94%上昇から減速したが、8月のコアインフレ率は前年比3.04%%上昇(7月は2.86%上昇)に加速。中銀では、「コア・インフレとインフレ期待は燃料価格調整の二次的な影響と需要サイドのインフレ圧力の高まりにより加速する」と予想している。

 今後の金融政策について、中銀は前回会合時と同様、「ルピア相場の安定と景気回復を強めるため、ルピア相場の安定化政策を通じたポリシーミックス(複数の経済政策手段の一体運営)を強化する」とし、具体的には、「外為市場での介入を通じ、インフレ抑制の一環として、ルピア相場の安定化を強化する」とし、ルピア安阻止のドル売り・ルピア買いの市場介入を行う考え。

 また、中銀は引き続き、流通市場でのSBN(短期国債)の売却を通じて、「短期金融市場での金利上昇により、インフレ期待とコアインフレの上昇リスクを軽減する」とし、国債売却により、短期金利の上昇を促す方針だ。さらに、中銀は、「引き続き、流通市場でのSBNのツイストオペ(短期債を売却して長期債を購入し、バランスシートを拡大しないで保有債券の期間を長期化させるオペ)により、SBNの短期の利回りを引き上げ、海外からのポートフォリオ投資の魅力を高める」としている。

 景気の見通しについて、中銀は、「内需の回復と好調な輸出により、国内経済の回復が続いている。個人消費は所得の増加や消費者の信頼感の高まりにより、大幅に拡大している」とした上で、「22年の経済成長率は中銀予測の4.5-5.3%増のレンジの上限近くになる」との見通しを据え置いている。

 ペリー・ワルジヨ総裁は会合後の会見で、今回の大幅利上げについて、「コアインフレ率は今年末に前年比4.6%上昇でピークに達する見通し。このコアインフレ率を23年後半までに物価目標の上限の4%上昇以下に収束させるためには0.5ポイントの利上げが必要だった」とした。その上で、同総裁は今後の金融政策について、「将来、積極的な利上げの必要性はない」とし、今後の利上げは小幅になる可能性を示唆した。

 次回会合は10月19-20日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、アセアン50<2043.T>

提供:モーニングスター社

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