【為替本日の注目点】ドル円一段と上昇し147円に迫る

為替

サーチナ

2022/10/13 10:29

 東京市場で146円台に乗せたドル円はNYではさらに買われ、147円目前までドル高が進む。介入に対する警戒感があるも、緩やかなドル高に、介入へのハードルが高いとの見方も。ドル高が進んだが、ユーロドルはやや水準を切り下げたが、前日の水準から大きな変化は見られず。株式市場は3指数が揃って下落。ナスダックとS&P500は6日続落。債券は反発。長期金利は3.89%台へと低下。金は反落し、原油は3日続落。

マーケット情報

9月生産者物価指数 → 0.4%(前月比)

ドル/円 146.59 ~ 146.98

ユーロ/ドル 0.9668 ~ 0.9720

ユーロ/円  142.00 ~ 142.63

NYダウ -28.34 → 29,210.85ドル

GOLD -8.50 → 1,677.50ドル

WTI -2.08 → 87.27ドル

米10年国債 -0.051 → 3.896%

本日の注目イベント

独 9月消費者物価指数(改定値)

欧 ロシア・トルコ首脳会議

米 9月消費者物価指数

米 新規失業保険申請件数

米 企業決算 → ブラックロック

 9月22日以来の市場介入を警戒しながらも、投資家はドルを買う姿勢を維持し、ドル円はジリジリと上値を追い、NYでは147円に迫る、146円98銭までドル高が進みました。予想した通り、145円台後半では介入はなく、ドル円はゆっくりですが、しかし、確実に上昇する展開でした。ドル円は昨日の東京市場開始とほぼ同時に146円台に乗せ、一旦は145円台後半まで押し戻されましたが、再び146円台を回復してからは146円割れを見ることはありませんでした。実質的な「介入ライン」と見られていた、146円前後を抜けても介入は行われず、投資家は「おそるおそる」ではありましたが、小刻みにドルを買って行くスタンスのようにも見えました。

 神田財務官はワシントンに向う際、「為替の水準ではなく、われわれが注視しているのは急激な変動であり、いつでも必要な措置を取る用意はしている」と述べ、一定の水準を意識しているわけではないとし、さらに「急激な変動」といった言葉を使っていました。裏を返せば、昨日のようにドルがジリジリと買われる展開では、介入しづらいということにもつながります。市場もその辺りを見透かしてドル買いを進めているようにもみられます。ただ、さすがに先週末から比べるとほぼ2円も円安が進んだことから、介入警戒感はさらに強まったと考えます。もし本日147円台に乗せ、昨日と同じような展開になれば、1998年8月に記録した147円64銭という直近高値を上回るドル高となり、150円も視野に入ってくることになります。そうなると仮に介入があったとしても、今度は145円を下回ることさえ難しくなることも予想されます。介入を行ったとしても145円台が維持される状況になれば、9月22日の過去最大級の市場介入は「一体何だったんだろう」ということにもなります。投機筋に「絶好のドルの買い場を提供しただけ」だったということにもなりかねません。このように考えると、本日と明日は「最大限の介入警戒感が必要」だと思っています。

 米9月の生産者物価指数(PPI)は市場予想を上回る結果でした。総合PPIは前年同月比で「8.5%」と、市場予想の「8.4%」を上回り、食品とエネルギーを除いたコアPPIは前年同月比「7.2%」と、高水準でした。ブルームバーグのエコノミストはこの結果を受けて、「予想を上回る9月PPIの伸びは、一部の商品価格は下落し、サプライショックは緩和しているにもかかわらずインフレが一段と定着してきたとの懸念を強める。特にサービス分野での賃金価格のスパイラルが起こる可能性を背景に、FOMCメンバーらは大幅利上げ継続の必要性に関して今後も見解が一致するだろう」と分析しています。PPIの結果がNYでドルがさらに上昇した背景になっていますが、黒田総裁のワシントンでの発言もドル買いを後押ししています。黒田総裁はIMFでのイベントで、「2%の物価目標を持続的に、安定的に達成するまで金融緩和を継続する必要がある」と、これまでの常套句を繰り返し、ドル買いに安心感を与えた格好になっています。「物言えば唇寒し・・・・」といったところでしょうか。

 9月20-21日に開催されたFOMC議事録が公表されました。議事録では、「当局者が政策金利を景気に抑制的な水準に今後短期間で引き上げ、インフレ率を目標値まで押し下げるためにその水準で維持する方針を示した」と記されており、ただ一方で、「経済見通しへの著しい悪影響のリスクを和らげることを目的に、追加引き締めのペースを調整することが重要であろうと幾人かの参加者が指摘した」とありました。同会合では、0.75ポイントの引き上げが3会合連続で決定されています。公開された議事録では特段目新しいことはなく、前半の部分はおおむねパウエル議長のその後の会見内容と整合し、後半の部分はブレイナード副議長が講演で発した言葉と合致します。

 イエレン財務長官は12日IMF年次総会で講演を行い、「米国では、経済面の最優先課題は堅調な労働市場を維持しながらインフレを抑制することだ」としながらも「われわれは差し迫るリスクに対し注意深く対応している」と述べ、米国の政策が世界に与える影響も考慮していると説明しています。

 次回FOMC会合は11月1-2日になりますが、今月27日にはECBの理事会があり、ここでも再び利上げが見込まれ、市場はその利上げ幅を巡って奔走している状況です。政策委員会メンバーであるホルツマン・オーストリア中銀総裁は12日、「今月27日の会合で政策金利を0.75ポイント引き上げた後に、恐らく12月に再び0.75ポイントまたは0.5ポイントの利上げでも、中立金利とみられる水準付近になる」と語っています。また、クノット・オランダ中銀総裁も「中立金利をなお大きく下回っている」と発言し、「中立と推計されるレンジに入る前に少なくとも2回の大幅利上げが必要だ」と述べています。ユーロ圏の9月のCPIは「9.1%」と、米国のCPIをも上回っています。これまで大幅な利上げにはやや慎重なスタンスを採っていたECBも「尻に火がついており」今後一層の引き締めに向かうとみられ、米国を追う格好になってきました。

 本日のドル円は145円50銭~147円50銭程度を予想しますが、もし介入があれば、ドルの下値をさらに拡大するとみられます。上でも述べたように、今日、明日は注意が必要です。

(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)

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