【為替本日の注目点】ドル円ついに150円台に
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
東京時間に150円台に乗せたドル円はNYでも続伸。長期金利が4.24%近辺まで上昇したことを受け、150円29銭までドル高が進む。ユーロドルの水準は変わらず、0.98を挟んでもみ合いが続く。株式市場は続落。FOMCメンバーの相次ぐタカ派発言に3指数は揃って下落。債券は続落。長期金利は4.24%近辺まで上昇し、株安とドル高を誘う。金と原油は小幅に上昇。
マーケット情報
9月中古住宅販売件数 → 471万件
新規失業保険申請件数 → 21.4万件
9月景気先行総合指数 → -0.4%
ドル/円 149.55 ~ 150.29
ユーロ/ドル 0.9773 ~ 0.9845
ユーロ/円 146.58 ~ 147.30
NYダウ -90.22 → 30,333.59ドル
GOLD +2.60 → 1,636.80ドル
WTI +0.43 → 85.98ドル
米10年国債 +0.095 → 4.228%
本日の注目イベント
日 9月消費者物価指数
英 9月小売売上高
米 10月コンファレンスボード消費者信頼感指数
米 ウィリアムズ・NY連銀総裁、イベントの開会挨拶
米 企業決算 → アメックス、ベライゾン
加 8月小売売上高
ドル円は昨日の東京時間夕方、ついに150円台に乗せました。実に1990年8月以来32年ぶりの「円安」になります。ドル円はその後、鈴木財務相や神田財務官の発言を受け149円台半ばまで売られる場面もありましたが、「口先介入」だけで相場の流れを変えられるはずもなく、NYではFOMCメンバーの相次ぐ「タカ派発言」に米長期金利が上昇。ドル円は150円29銭近辺まで買われています。
9月22日に市場介入が実施され、ドル円は140円台まで押し戻されましたが、わずか1カ月でその水準から10円も「ドル高円安」が進む結果になっています。その間、「覆面介入」を行った形跡はあるようですが、結局2回目の大規模な介入は実施されず、「介入があったらドルを買おう」と考えていた投資家は「肩すかし」をくった格好となり、我慢しきれずにドルを買った側面もあるようです。一方、政府日銀としてもこのような状況は分かっていて、介入の効果に対する懸念もあるように思えます。ただ、だからと言って今後も介入の可能性がなくなったわけではなく、当局はより効果的なタイミングを狙っているのではないかと考えています。この欄でも述べましたが、先週金曜日に「ドル円が146円台に乗せた局面で介入を実施していれば・・・」という思いが残ります。
一方で円を取り巻く環境を考えたら、円が売られるのもやむを得ず、そう簡単に円が急伸することも考えにくいことも事実です。財務省が昨日発表した2022年度上半期の貿易収支の速報値は、半期で過去最大となる11兆74億円の赤字でした。原油高と円安が赤字幅を拡大したと見られていますが、先月行われた過去最大の介入でも介入額は2兆8000億円と言われており、実需面からもドル需要の大きさが理解できます。また米国のインフレの勢いは依然として収まる気配はなく、FRBとしても中間選挙を前に何とかしたいと躍起になっているのではないかと推測できそうです。フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は20日、「当面は利上げを続ける。インフレ抑制で進展が不十分という率直に残念な状況を踏まえれば、金利は年末までに4%を大きく超えると私は見込んでいる」と述べています。またFRBのクック理事もパネル討論の冒頭で、「インフレは高すぎであり、下げなくてはならない。これは利上げを継続し、その後に政策を景気抑制的な状況で当面維持することを要する可能性が高い」と語り、「インフレは予想だけでなく、データで実際に減速しているかどうかに政策は基づかなくてはならない。政策は物価安定の回復に引き続き焦点をしぼるべきだ。それは持続的に力強い労働市場の土台も設定する」と述べています。(ブルームバーグ)
このように、足元ではなかなかFOMCメンバーが期待するような方向にインフレが鎮静するデータが得られず、タカ派的な発言を余儀なくされているようにも思えます。このような発言を繰り返すことで、人々のインフレ感を減少させようとしている面もあるように思えます。一方で、黒田日銀総裁は先週のワシントンでの会合でも、「粘り強く金融緩和を続けていく」との姿勢を崩していません。鈴木財務大臣は昨日ドル円が150円台に乗せたことを受けて、「投機による過度で急激な変化は容認できない。これからも細かく緊張感を持って動向をしっかりと見ていきたい」と述べ、神田財務官も、「一夜に大きくファンダメンタルズ自体が変わることがないとすれば、相場が大きく変動すること自体、危険信号だと考えざるを得ない」と述べ、為替介入の原資については「無限にあると思っている」とコメントしています。「必要なら行動する」と繰り返し述べていますが、行動しない現在は「介入は必要ない」とも理解できるかもしれません。金利差の拡大と実需面からのドル買い需要が相場を押し上げているのが実状です。
トラス・イギリス首相が20日、辞任を表明しました。就任わずか44日での辞任で、イギリスでは政治的混迷が続いており、ポンドの売り圧力になっています。後任は24日にも決定されるようですが、タイムズ紙は、ジョンソン前首相が保守党党首選に立候補する見込みだと伝えています。
150円台で戻ってきたドル円ですが、市場のセンチメントはこの1週間でかなりドルブル(ドルに対して強気)に傾いてきたようにも思えます。なかなかドルが下がらず、ドルを買えていない投資家も多いのではないかと思いますが、介入の可能性は高まる一方で、安易なドルロングには注意したいところです。
本日のドル円は149円~151円程度と見ていますが、これは通常の市場環境での予想です。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)
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