【為替本日の注目点】ドル円乱高下

為替

サーチナ

2022/11/29 10:19

ひと目でわかる昨晩の動き

NY市場

 上値の重いドル円は東京時間に138円台前半まで下げ、その流れが欧州市場でも続き、欧州市場の朝方には137円49銭まで下落。NYでは一転してドル買いが強まり、139円近辺まで上昇するなど、乱高下の一日だった。ユーロドルも一時は1.0476まで買われたがその後反落。株式市場は3指数が揃って大幅下落。中国での抗議行動の拡大に加え、FOMCメンバーが揃ってタカ派的な発言を行ったことが背景。ダウは495ドル下げ、3万4000ドルの大台を割りこむ。債券は小幅に下落し、長期金利は若干上昇。金は4日ぶりに反落。原油は76ドル台から反発。

マーケット情報

ドル/円 138.24 ~ 139.00

ユーロ/ドル 1.0330 ~ 1.0476

ユーロ/円 143.49 ~ 145.00

NYダウ -497.57 → 33,849.46ドル

GOLD -13.70 → 1,740.30ドル

WTI +0.96 → 77.24ドル

米10年国債 +0.003 → 3.681%

本日の注目イベント

日 10月失業率

独 11月消費者物価指数(速報値)

欧 ユーロ圏11月消費者信頼感指数(速報値)

欧 ユーロ圏11月景況感指数

英 11月消費者信用残高

米 9月ケース・シラ-住宅価格指数

米 9月FHFA住宅価格指数

米 11月コンファレンスボード消費者信頼感指数

 東京市場では139円台前半で始まった昨日のドル円でしたが、乱高下した一日でした。上値が重くジリジリと値を下げ、午後には138円18銭近辺まで売られました。中国での「ゼロコロナ」政策に対する抗議行動が北京や上海にまで拡大したことで上海や香港株式市場では株価が大きく売られ、その影響もあり「円が買われた」側面もありました。欧州市場に入ると、ドル円はさらに下げ足を早め、一時は137円49銭辺りまで売られ、今月15日につけた137円68銭を割り込み、8月26日以来となるドル安水準を記録しました。ここ最近のドルの上値の重さに加え、中国でのコロナ対策に関わる混乱から「リスク回避」の流れが強まり、円が買われるのもある程度予測できた状況でした。

 ところが、NYでは一転してドル買いが強まり、ドル円は138円台を回復し、139円辺りまでドル高に変わっています。結局「往って来い」の相場展開となりましたが、反発のきっかけは、やはりFOMCメンバーのタカ派的な発言でした。この日は3人のメンバーによる発言がありましたが、中でも影響力を見せたのはセントルイス連銀のブラード総裁です。ブラード総裁は、マーケットウオッチとバロンズによるインターネット配信のインタビューで、「米金融当局がインフレ抑制のために来年、一段と積極的に利上げを行う必要が生じる可能性を金融市場が過小評価している」と指摘しました。またNY連銀のウイリアムズ総裁も講演で、「需給バランスを回復させ、向こう数年にインフレ率を2%へ戻す上で、金融政策の一段の引き締めが助けとなろう。時間はしばらくかかるだろうが、持続的な物価安定を取り戻せると確信している」と述べています。さらにクリーブランド連銀のメスター総裁は、「政策が景気抑制的な領域に入り始めていることから、われわれとしては利上げペースを落とし、その効果を評価する機会を得ている」と述べた上で、「明るいニュースにのめり込むのは非常にたやすいが、希望的観測が真に説得力ある証拠に取って代わるのは望ましくない。時期尚早に停止した場合の代償は極めて大きい。この点についてわれわれは極めて入念でありたい」と語っています。(ブルームバーグ)

 いずれの発言も「まだ気を緩める段階ではない」と、市場の楽観論をけん制する内容だと受け止められます。地区連銀総裁であり、FOMCのメンバーでもあることを考えれば、当然と言える発言ですが、市場の反応は極めてストレートでした。これでますますパウエルFRB議長の発言が注目されることになりそうです。パウエル議長は30日、ブルッキング研究所主催のイベントで「経済見通しと労働市場について」講演を行う予定です。来月13-14日に開催される今年最後のFOMCを控え、ブラックアウト期間入り直前のFRB議長による発言機会の一つになります。ブルームバーグは、「インフレとの闘いが2023年も続くことをあらためて指摘する一方、金融当局として12月の次回FOMC会合で利上げペースを落とすとの見通しを補強する」と見込んでいます。

 中国で週末に拡大していたコロナ政策に対する抗議活動は、当局が北京などの主要都市に警察を大量配備したことを受けて鎮静化に向っているようですが、今回の抗議活動では上海市などで、多くの市民が白い紙を掲げ、あからさまに習近平指導部への批判を行うなど、中国共産党の統制が強い中国では異例の事態になっています。この事態を受け、すでに香港で見られたように、さらに警察当局の締め付けが厳しくなることも予想されます。

本日のドル円は137円50銭~139円50銭程度を予想します。

(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)

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