【為替本日の注目点】ECB、BOE揃って0.5ポイントの利上げ

為替

サーチナ

2022/12/16 10:10

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

 前日134円台半ばを付けたドル円は急騰。ECBとBOEが揃って0.5ポイントの利上げを決め、ラガルドECB総裁のタカ派発言もあり138円18銭までドル高に。やや予想外のドル高にサプライズ。ECBが0.5ポイントの利上げを決めた直後、ユーロドルは1.0737まで上昇。約半年ぶりの高水準を記録。株式市場は大幅続落。前日のパウエル議長のタカ派寄りの発言に加え、ECBのラガルド総裁がタカ派的な発言を行ったことも影響。ダウは764ドルの大幅下落。債券は買われ、長期金利は3.44%台に低下。金は大幅に続落。原油も売られる。

マーケット情報

新規失業保険申請件数 → 21.1万件

11月鉱工業生産 → -0.2%

11月設備稼働率 → 79.7%

12月NY連銀製造業景況指数 → -11.2

11月小売売上高 → -0.6%

12月フィラデルフィア連銀景況指数 → -13.8

ドル/円 136.18 ~ 138.18

ユーロ/ドル 1.0593 ~ 1.0737

ユーロ/円  144.68 ~ 146.71

NYダウ -764.13 → 33,202.22ドル

GOLD -30.90 → 1,787.80ドル

WTI -1.17 → 76.11ドル

米10年国債 -0.031 → 3.446%

本日の注目イベント

独 12月サービス業PMI(速報値)

独 12月総合PMI(速報値)

欧 12月製造業PMI(速報値)

欧 12月サービス業PMI(速報値)

欧 12月総合PMI(速報値)

欧 10月貿易収支

欧 11月消費者物価指数(改定値)

英 11月小売売上高

米 12月S&Pグローバル製造業PMI(速報値)

米 12月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値)

米 12月S&PグローバルコンポジットPMI(速報値)

米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁講演

加 10月小売売上高

 手ごわいインフレを相手に、FRBに足並みを揃える形で、ECB、BOEは政策金利を0.5ポイント引き上げることを決めました。両中銀とも0.5ポイントの利上げは予想されていましたが、前日のパウエル議長のタカ派寄りの発言をなぞるように、ラガルドECB総裁も市場の楽観論をけん制するかのようにタカ派的な発言を行い、域内のインフレ抑制は簡単ではないこと強調しています。リスク回避の流れが強まり、株価は大きく下落。安全資産の債券が買われたことで金利が低下しました。通常、この流れでは、金利低下を受けドル円は売られるのがこれまでのパターンでしたが、昨日はドル円だけではなく、ドルが主要通貨に対して買われています。ただ、その上昇幅はユーロやポンドの利上げの影響もあり限定的となっており、円の全面安の展開でした。目先は133-138円台のレンジ内で推移し、先に133円をテストするのではないかと予想した筆者の見方は外れています。引き続き欧米のインフレの波は高く、手ごわいということのようです。

 ECBは今回の理事会で政策金利を0.5ポイント引き上げ、2.5%にすることを決定しました。また中銀預金金利は2.0%となり、約5兆ユーロ(約730兆円)に上る保有債券のポートフォリオ圧縮も来年3月に開始することを発表しています。ラガルド総裁は記者会見で、今回の利上げ幅が前回より小幅だったことを「ECBが政策転換だと考えるのは誤りだ」とし、「0.5ポイントのベースが一定期間続くことを見込むべきだ」と述べ、今後も利上げが続くことを示唆しています。また、「まだ先へ進まなければならない。これは長期戦だ」とも述べています。(ブルームバーグ)ただ米国よりもリセッション入りの可能性が高いと見られているユーロ圏で、今後も大幅な利上げを継続することは景気の腰を完全に折ることにつながり、ECBとしても難しい立場に立たされています。

 日本の11月の貿易収支が発表されました。11月単月の貿易赤字額は「2兆274億円」と、11月としては過去最大の赤字額を記録しています。輸出は伸びているものの、それ以上に原油や、LNGなどエネルギーの輸入が伸びており、これで16カ月連続の「貿易赤字」となっています。1月から11月までの赤字額累積でも18兆5124億円に達し、2022年度の赤字額合計が20兆円に達するのではとの見方もありますが、12月には原油価格の低下と大幅な円安の修正が進んできたことで、微妙な状況です。貿易赤字の拡大はドル買い需要が増加することを意味し、筆者も含め、多くの専門家が2023年には円高が進むと予想する流れとは逆に作用することになります。今後どれだけインバウンド効果が見込めるかにもよりますが、それも「コロナウイル第8波次第」というところです。

 昨日のNYでは欧米でのインフレ高進が簡単には収まらないことから、利上げスタンスが長期化するとの見方に株価が大きく下げました。リスクの高い株式が売られリスクの低い債券が買われるケースでは円高に振れるケースが多いのですが、昨日はタカ派発言により大きく反応し138円台を回復したようです。ただそれでも、今後米国もリセッション入りの可能性が高く、米景気の悪化を材料にドル売りが進む可能性があると考えます。特に昨日は多くの経済指標が発表されましたが、失業保険申請件数を除いた多くの指標が予想を下回る結果で、いわば「総崩れ」の状況でした。米国のインフレ率は6月の「9.1%」をピークに鈍化しています。この傾向は緩やかではあるものの、鈍化傾向は続くとみています。米国のインフレが6月のピークを超えるような事態になれば状況は異なりますが、ドル円の上値は現時点では限定的と予想しています。ただ相場のことですから、140円を大きく超えるようだとストーリーも違ってくる可能性があります。連日の大相場、なかなか息をつく暇もありません。

 本日のドル円は136円50銭~138円50銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)

・今日のアナリストレポート

https://www.morningstar.co.jp/redirect/gaitameonline_academy01.htm

・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧

https://www.morningstar.co.jp/redirect/gaitameonline_calender.htm

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ