【為替本日の注目点】ドル円早朝に135円台後半まで下落
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
前日138円台前半まで急伸したドル円は反落。株価の下落や経済指標の下振れを受け、米景気への懸念からドル売りが優勢となる。ユーロドルも前日の水準から下落。1.0593まで売られ、ユーロ円も大きく下げる。株式市場は3指数が揃って3日続落。この日発表されたPMIがいずれも予想を下回ったことなどが響いた。ダウは281ドル下げ、3万3000ドルの大台を割り込む。債券は小動きの中小幅に売られる。長期金利は3.48%台に上昇。金は反発し、原油は続落。
マーケット情報
12月S&Pグローバル製造業PMI(速報値) → 46.3
12月S&Pグローバルサービス業PMI(速報値) → 44.4
12月S&PグローバルコンポジットPMI(速報値) → 44.6
ドル/円 136.30 ~ 137.34
ユーロ/ドル 1.0584 ~ 1.0649
ユーロ/円 144.63 ~ 145.93
NYダウ -281.76 → 32,920.46ドル
GOLD +12.40 → 1,800.20ドル
WTI -1.82 → 74.29ドル
米10年国債 +0.036 → 3.482%
本日の注目イベント
独 12月ifo景況感指数
米 12月NAHB住宅市場指数
前日138円18銭までドル円が急伸したことに、やや違和感を覚えたことはこの欄でも述べましたが、ドル円は結局ジリジリと下げて、元の鞘に戻った印象です。先週末に発表されたPMIが、製造業、サービス業、さらに総合でも、拡大と縮小の境目である「50」を大きく割り込んだだけではなく、市場予想も大きく下回る結果だったことで、ややリスク回避が進んだことが背景です。さらに週明けのオセアニア市場ではドル円が大きく「窓を開け」、下落して取引が始まっています。共同通信が、「岸田政権が政府と日銀の役割を定めた共同声明を初めて改定する方針を固めた」と報じたことが材料視されました。日銀が黒田総裁の下で進めてきた大規模金融緩和策の修正につながる可能性があるとの見方から円を買う動きが強まり、今朝の5時半頃には135円82銭辺りまで売られる場面もあったようです。
先週のFOMCとその後のパウエル議長の発言が「タカ派寄り」であったことで、株価が大きく売られ、「リスク回避」の流れからドル円も下値を試す展開でした。今年最後の重要イベントは終わりましたが、「ブラックアウト」期間も終わり、それと共にFOMCメンバーの発言が活発になってきました。NY連銀のウィリアムズ総裁は16日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「労働市場で需要が供給を上回っているという明確な兆候がある」と指摘し、インフレ率は来年に3-3.5%に減速するとの予想を示した上で、「2%にどうやって持っていくかが真の問題だ」と述べています。「必要なことをやるしかない。政策金利は必要ならば、FOMCメンバーが最新の経済予測で示した水準より高くなる可能性もある」と語っています。市場は、この「FOMCメンバーが最新の経済予測で示した水準より高くなる可能性もある」という部分に反応したようで、株価は一時大きく売られ、リスク回避の流れが強まりました。パウエル議長の発言に続き、FOMC会合では常に議長を務めるNY連銀総裁の言葉だけに影響力もあったようです。
また、SF連銀のデーリー総裁も「道のりはまだ長い。当局の物価安定目標への到達はかなり先だ」と述べ、クリーブランド連銀のメスター総裁も「インフレに対してはまだすべきことがあるので、利上げを続けなければならない」と発言し、「インフレを鎮静化させるには時間がかかる」と語っています。(ブルームバーグ)このように、3地区連銀総裁はこぞって「タカ派寄り」の発言を行い、パウエル議長に足並みを揃えた格好でした。未だ高水準でありながらも、5カ月連続で鈍化しつつあるインフレ率に対する市場の楽観的な見方をけん制する意味合いも大きいかと思います。ただ、タカ派発言の割には、ドル円への影響は現時点では限定的となっています。
中国の新型コロナを巡る情報が不透明感を増しています。厳しい行動規制に対する住民の抗議デモを受け、一気に規制緩和を行った中国では感染が急拡大している可能性がある一方、なかなか実態が明らかになってきません。メディアによると、北京の葬儀場や火葬場に運ばれる死者の数が増加しているそうです。北京のある火葬場の従業員は英フィナンシャル・タイムズ紙に対して、今月14日に少なくともコロナ感染者の死者30人以上を火葬したと証言しており、ロイター通信によれば、北京の葬儀場は能力を超えた状態に陥っているそうです。中国でのコロナ感染者は「12月下旬から1月上旬に感染のピークを迎え、1日の感染者数は500万人から1300万人に達する」(ゴールドマンのエコノミスト、フイ・シャン氏)との予想もあります。人口が多いだけに、驚くべき数字です。中国当局は再び行動制限を強める可能性があり、今後中国景気の落ち込みが、市場のリスク回避の流れを高める事態も想定されます。
本日のドル円は135円20銭~137円50銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)
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