<新興国eye>トルコ中銀、5カ月ぶりに金利据え置きに転換―市場の予想通り

新興国

2022/12/26 10:31

 トルコ中央銀行は22日の金融政策決定会合で、インフレを抑制し、景気を支援するため、主要政策金利である1週間物レポ金利に9%に据え置くことを決めた。市場の予想通りだった。

 中銀はコロナ禍からの景気回復に伴う急激なインフレ上昇を抑制するため、20年9月から利上げサイクルに入ったが、利上げが行き過ぎたとして、21年9月に利下げに転換。5会合連続で利下げしたが、リラ安が進行し、インフレが急加速したため、今年1月から据え置きに転じた。しかし、8月会合から利下げを再開、前回11月会合まで4会合連続で利下げし、利下げ幅が計5ポイントに達したことを受け、今回の会合で5カ月ぶりに金利据え置きに転じた。

 中銀は前回の会合で、「世界の需要の見通しに対する(下ブレ)リスクが高まっていることを考慮した上で、現在の政策金利の水準が適切であると判断した」とし、利上げサイクルの終了を決めている。

 中銀は今回の会合後に発表した声明文で、金融緩和スタンスに転換したことについて、「世界経済成長の不確実性が高まり、地政学的リスクが高まっている時期は、鉱工業生産の成長の勢いと雇用の拡大を維持することにより、金融緩和の状況が生産と投資の拡大を支援することが重要になる」とした上で、「外需の低迷が需要と生産に与える影響を注視している」とし、政策の重点を景気支援により鮮明にシフトした。市場では来年6月24日の大統領選挙と国民議会総選挙を控えているため、中銀への影響力が大きいエルドアン大統領が景気加速を最優先していることが背景と見ている。

 インフレ見通しについて、中銀は、前回会合時と同様、「インフレ上昇は、(ウクライナ戦争など)地政学的な動向を反映した、世界的なエネルギーや食料、農産物の価格上昇による強い供給ショックによって引き起こされている」とし、インフレ加速は国内需要の拡大よりも供給サイドに原因があるとの見方を維持。利上げによる需要抑制を通じたインフレ抑制の必要性がないことを改めて強調。その上で、中銀は、「進行中の地域紛争の解決とともに、持続可能な価格と金融の安定を強化するために講じられ、断固として実施された措置により、ディスインフレのプロセス(インフレの低下基調)が始まる」とし、インフレ減速の見通しに自信を見せている。

 しかし、市場では中銀が金融緩和スタンスに転換したことにより、今後、リラ安が進み、輸入インフレ圧力が一段と高まると予想している。このため、中銀はこれまで通り、リラ安阻止のための市場介入を継続せざるを得ないと見ている。

 今後の金融政策について、中銀は前回会合時と同様、「経済指標がインフレの恒久的な低下(減速)を示し、中期的な5%上昇の物価目標が達成されるまで、(通貨トルコリラの急落を阻止する)リラリゼーション戦略に基づいて、利用可能なあらゆる金融政策ツールを使い続ける」としている。リラリゼーション戦略とは金融システムでのトルコリラの利用拡大により、インフレ加速要因となるトルコリラ安を阻止し、物価安定を目指すという戦略。

 次回の金融政策決定会合は23年1月19日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 上場MSエマ<1681.T>

提供:モーニングスター社

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