<新興国eye>ロシア中銀、予想通り金利据え置き―インフレ加速警戒でタカ派寄りに転換

新興国

2023/2/13 9:17

 ロシア中央銀行は先週末(10日)の金融政策理事会で、足元のインフレ率の加速を警戒する中、主要政策金利である資金供給のための1週間物入札レポ金利と資金吸収のための1週間物入札預金金利を7.5%に据え置くことを決めた。市場の予想通りだった。

 中銀はロシア・ウクライナ戦争の勃発(22年2月24日)と、それに伴う西側の対ロ経済制裁により、インフレ圧力が一段と高まったことや、ルーブルが一時30%も急落したことを受け、22年2月28日の臨時会合で、主要政策金利を9.5%から一気に20.0%に引き上げた。しかし、同4月の臨時会合から景気を支援するため、利下げサイクルに転換。利下げ幅が計12.5ポイントに達し、ウクライナ戦争開始後の緊急利下げ分(10.5ポイント)を大きく上回ったことを受け、同10月会合から金利据え置きに転換した。現状維持はこれで3会合連続。金利水準は21年12月(7.5%)以来の低水準となっている。

 中銀は会合後に発表した声明文で、今回の会合では金利を据え置いたが、「中期的なインフレ見通しに対するリスクバランスは、依然、インフレ上振れリスクだ。短期的な上振れリスクも再び高まっており、依然として下振れリスクよりも優勢」とし、その上で、今後の金融政策について、「インフレ加速リスクが強まれば、中銀は次回3月17日会合で主要な政策金利の引き上げの必要性について検討する」とした。市場では中銀はタカ派(インフレ重視の強硬派)に転換したと見ている。

 中銀はインフレ加速要因について、前回12月会合時と同様に、「世界経済の減速に加え、(西側による)貿易・金融制裁の強化がロシアの輸出品に対する需要を弱め、為替相場の変動(通貨ルーブル安)を通じ、インフレを加速させる可能性がある」とし、ウクライナ戦争をめぐる西側の経済制裁の強化がインフレ上振れリスクと指摘。また、「財政赤字がさらに拡大した場合、インフレ上振れリスクが高まる」とし、その上で、「24年にインフレ率を物価目標(4%上昇)に戻し、その後、4%上昇近くで維持するには金融政策の引き締めが必要になる可能性がある」とした。しかし、今回の会合では明確に「次回3月会合で利上げの可能性を検討する」と明記したのが特徴。

 さらに、中銀は前回会合時と同様、労働市場のひっ迫も依然、インフレリスクと指摘した。ウクライナ戦争の拡大に伴う30万人の兵士動員や国外脱出の増加により、労働者不足に陥っているためだ。中銀は、「一部のセクターでは労働力が不足しており、実質賃金の伸びが労働生産性の伸びを上回る可能性がある。(このため)労働市場によるインフレ上振れリスクが続いている」と警戒している。

 中銀によると、2月6日時点のインフレ率は22年12月の前年比11.9%上昇から同11.8%上昇にやや低下したが、生鮮食品価格の上昇により、「23年初頭から加速してる」と懸念を示している。今回の会合で公表した最新の中期経済予測で、12月時点でのインフレ見通しを23年は5-7%上昇(前回10月予想時と変わらず)、24年は4%上昇(同変わらず)、25年も4%上昇(同変わらず)と予想、24年には物価目標の4%上昇に収束すると見ている。

 他方、景気見通しについては、23年のGDP伸び率を1%減ー1%増(同1-4%減)、24年を0.5-2.5%増(同1.5-2.5%増)と予想、「23年から回復の兆しを見せる」としているが、23年と24年の見通しを下方修正している。25年は1.5-2.5%増(同変わらず)を予想。ちなみに22年は2.5%減だった。

 市場では今年の財政政策が中銀の金融政策を決め、財政支出の拡大が続けば、これまでの金融緩和スタンスを変更する可能性があると見ている。一部では4-6月期に利上げに転換すると予想する一方で、反対に今後数カ月で利下げに転換すると予想、見方が分かれている。

 次回の定例会合は3月17日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 RTS連動<1324.T>、WTI原油<1671.T>、ガス<1689.T>、

 原油<1690.T>、野村原油<1699.T>

提供:モーニングスター社

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