松屋R&D・後藤秀隆社長に聞く:需要回復と海外強化で成長性高まる
2023/2/22 9:00
松屋アールアンドディ(=松屋R&D、7317)は新型コロナウイルスの影響を脱し、業績は回復から拡大に向かっている。同社は縫製工程を自動化する独自技術に強みがあり、それを活用した事業を展開中。縫製自動機の開発・製造・販売のほか、血圧計センサーのカフ(腕帯)、カーシート、エアバッグなどの製造・販売が主力で、世界的に需要は大きく、今後、より一層のグローバル展開に臨む構えだ。同社の現状と今後について後藤秀隆社長=写真=に聞いた。
――今3月期の業績は好調で、1月に通期予想を上方修正しました。通期業績は連結売上高65億円(従来予想61億6600万円、前期比15.2%増)、営業利益5億5000万円(同4億1000万円、同54.9%増)と、大幅な増収増益を見込んでいます。
「新型コロナ感染拡大に伴うロックダウン(都市封鎖)、半導体不足などの影響はありますが、自動機、血圧計カフ、カーシート、エアバッグなど、当社製品の需要は大きく、受注は回復しています。カーシート、エアバッグに関しては、トヨタ自動車(7203)以外のメーカーの受注も予定しています。一方、生産面でもベトナム工場が安定的な稼働を維持している上、コスト削減も進んでいます。今回の上方修正は血圧計カフを中心としたメディカルヘルスケア事業の受注が回復傾向にあるほか、生産ラインの見直しによる費用削減を進めた効果が出てきているからです。需要回復に生産性向上、それに加えて新規事業の貢献が期待され、来期以降はより成長性が高まる見通しです」
――インドなど海外事業も回復傾向にあります。
「インド向けでは、大型レーザー裁断機や、エアバッグメーカー向け自動機の納入が増えています。そのほか、ポーランド、ルーマニア、チュニジア、メキシコなどでも大きな需要があり、今後、本格的な進出を図ります。当社の主力である縫製自動機事業は、顧客に購入してもらった自動機を当社工場に設置した上で、製品を製造し顧客に納入するというビジネスモデルです。これまでは新型コロナの影響でオンラインの営業活動を余儀なくされましたが、資料だけ、オンラインだけではなかなか理解してもらえない面もありました。現在は人材強化を図り、対面の営業から顧客開拓を進めています。今後、大きな成果が期待できると思います」
――ベトナム工場の現状について教えてください。
「現在、当社が新規に購入した土地に、従来の5工場をすべて集約した新工場を建設中です。これまでは土地、建物ともレンタルでしたが、自社工場を保有することで、固定資産の減価償却費や借入の金利を加味しても1億円以上のコスト削減が見込めます。物価高で賃貸料が上がっているため、実質的にはそれ以上のコスト削減効果が出てくる可能性もあります。新工場建設は計画通りに進んでおり、来期の後半にはコスト削減効果が明確に表れてくることになるでしょう。さらに、現状の第1から第5工場も有効活用し、新たな事業展開を図る考えもあります」
リハビリ用ロボットなど新規事業に期待
――多目的リハビリ用ロボットなど新規事業はどんな状況にありますか。
「ポーランドのグローバル医療機器メーカーEGZOTech(EGZO)社と日本総代理店契約を締結し、EGZO社のEMG(表面筋電図)を利用した脳梗塞(こうそく)の多目的リハビリ用ロボットの製造、販売を行っています。7月に医薬品医療機器法における製造及び販売に係る認証を取得し、10月の展示会に出展したところ大きな反響がありました。1月に販売を開始し、現在は3カ所のリハビリ施設に試験納入しています。ほかにはないリハビリロボットということで、患者の評判はよく、今後、本格的に採用が広がっていくことになると思います。EGZO社の新機種2機体の投入も計画しています」
「また、オムロン(6645)と共同で、伸び縮みのある柔らかい素材の縫製を実現するよう、AI(人工知能)画像処理技術を活用した3D(3次元)縫製ロボットの開発を進めています。同ロボットは熟練縫製工の高度な縫製作業をロボットで置き換えることが可能となるため、スマートファクトリーの構築とともに、将来は国内への生産回帰も目指しています。さらに、米国、中国で縫製自動機の特許を取得しました。同自動機は従来の約2倍のスピードで縫製することが可能なため、生産のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進し、生産性向上、生産コストの低減を実現します」
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