【為替本日の注目点】米3月の総合CPIは5.0%に低下
ひと目でわかる昨晩の動き
NY市場
3月の総合CPIが市場予想を下回ったことで、ドル円は発表直後に132円74銭近辺まで下落。その後は133円台に値を戻し一進一退の展開に。ユーロドルはドル安の動きに、2月2日以来約2カ月ぶりに一時1.1000を記録。株式市場はCPIの結果を受け上昇して始まったが、FRBが利上げを見送るには十分ではないとの見方が広がり3指数は下落。債券価格は上昇。長期金利は3.39%台に低下。金は続伸。原油も続伸し、年初来の高値を付ける。
マーケット情報
3月消費者物価指数 → 5.0%(前年同月比)
3月財政収支 → -378.1b
ドル/円 132.74 ~ 133.91
ユーロ/ドル 1.0920 ~ 1.1000
ユーロ/円 145.66 ~ 146.67
NYダウ -38.29 → 33,646.50ドル
GOLD +5.90 → 2,024.90ドル
WTI +1.73 → 83.26ドル
米10年国債 -0.036 → 3.391%
本日の注目イベント
豪 3月雇用統計
中 3月貿易収支
中東 OPEC月報
独 3月消費者物価指数(改定値)
欧 ユーロ圏2月鉱工業生産
英 2月鉱工業生産
英 2月貿易収支
米 新規失業保険申請件数
米 月生産者物価指数
注目された「3月の消費者物価指数」が市場予想を下回ったことで、発表直後は133円台後半からドルが売られ、一時は132円74銭前後までドル安が進みました。ただ、その後はFOM議事録の内容や、3月のCPIでは上昇率が先月よりも鈍化していたものの、金融当局が利上げを見送るほどの内容ではないとの見方から、133円台に値を戻して引けています。
3月の総合CPIは、前月比「0.1%」、前年同月比で「5.0%」と、いずれも市場予想を下回っていました。一方、食品とエネルギーを除くコアCPIでは前月比が「0.4%」、前年同月比では「5.6%」と、こちらは市場予想と一致していました。項目別では、総合CPIの3分の1を占める「居住費」が前月比「0.6%」上昇しており、ホテル宿泊費も大幅な上昇を示しており、全体の指数を押し上げています。大きく低下したのがエネルギー価格で、ガソリン、天然ガス、電気代が下げに反映していました。全体では、この程度ではFRBが利上げを見送ることにはならないとの見方が強く、「最低でも、もう1回の利上げはある」との声が多かったようです。3月21-22日に開催されたFOMC議事録もその内容が注目されていました。シリコンバレー銀行(SVB)やシグネチャーバンクが破綻し、欧州でもクレディスイス・グループの経営危機が表面化し、金融不安が一気に広がったタイミングでの会合でした。そのため、FRBは利上げを見送るとの見方が急速に浮上し、一部には「利下げもある」といった観測も出ていました。結局会合ではインフレ抑制を優先し、0.25ポイントの利上げを決めましたが、会合後の会見でパウエル議長は、「利上げの一時停止も検討した」と述べていました。しかし、今回の議事録では「全員が利上げを支持していた」ことを示し、決定は「幅広い当局者に支持された」ことが明らかになっています。
金融不安はその後、金融当局の素早い対応が功を奏し、かなり後退しています。市場が徐々に平静を取り戻してきていることから、FOMCメンバーの中でも、今後の利上げを巡っては見方が分かれてきたことも事実のようです。前日のシカゴ連銀総裁とNY連銀総裁の見方もそうでしたが、昨日はサンフランシスコ連銀のデーリー総裁が、「この先、インフレ率を低下させるために政策が一段と引き締められなければならないと考える十分な理由がある」とした上で、「しかし、追加的な政策調整がなくても、景気の減速が続く可能性があると考える十分な理由もある」と述べ、さらなる利上げには慎重な見方を示しています。一方、リッチモンド連銀のバーキン総裁はCNBCのインタビューで、「確かにインフレのピークは過ぎたと考えるが、まだ道のりは長い」と語り、「われわれが望む水準にコアインフレを戻すには、さらにやるべきことがある」と指摘しています。また5月に利上げすべきかどうかについては言及していません。(ブルームバーグ)次回FOMC会合は、5月2-3日に開催されます。従って、「4月の雇用統計」も、「4月のCPI」も会合前までには確認することはできません。今後PCEデータなど、まだインフレの動向を確認する指標はありますが、今回のCPIを受け総合的に俯瞰すれば、5月会合での0.25ポイントの利上げは「妥当な線」と言っていいと思います。はっきりしていることは、米国のインフレは峠を越えたものの、「まだ警戒態勢を解く段階ではない」ということです。
前FRB副議長であったブレイナード氏は現在、米国家経済会議(NEC)の委員長を務めています。そのブレイナード氏は昨日、「ワールド・エコノミー・サミット2023」に出席し、「より厳格な銀行ストレステスト要件があれば(SVBなどの)銀行破綻を防ぐことが出来た可能性があった」と述べながらも、「私は監督業務を担当していないため、個々の銀行の監督について話すことはできないが、一般論として、預金の流出が安定し、あらゆる指標がこの数週間に明らかに改善していると言うことはできる」と話しています。
ドル円は昨日の東京時間昼頃、上昇に勢いが出て134円05銭近辺までドルが買われましたが、特段材料はなかったことから、日経平均株価の上昇に引っ張られた動きだったと思われます。足元ではやはり、130-135円のレンジ内での動きが続いていると見られますが、上述のように、5月会合での0.25ポイントの利上げ観測が変わらない以上、相場へのインパクトは乏しいと予想しています。「0. 25」が「0.5」になることはないと思いますので、これが「利上げ見送り」へと変化するかどうかがカギになります。
本日のドル円は132円30銭~133円80銭程度といったところでしょうか。
(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)
・今日のアナリストレポート
https://info.kabushiki.jp/rd/gaitameonline_academy01.htm
・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧
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