海外株式見通し=米国、香港

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2023/6/21 17:25

【米国株】インバース型ETF、新興国ADRに注目

 6月FOMC(米連邦公開市場委員会)は市場予想通り政策金利が据え置かれたが、年内残り2回(合計0.50%)の追加利上げを示唆する「タカ派」的な内容だった。ただし、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、7月に利上げをするかどうかは今後の状況次第で常に変化するという意味で「ライブになる」と語ったほか、利上げを進める速度よりもインフレ抑制に十分な金利水準を見極めることが重要だとするハト派の側面も示した。

 このような動きに対し、16日にはFRB関係者から利上げ支持のタカ派発言が相次いだ。パウエル議長も21~22日の上下院での議会証言で軌道修正を行う可能性が残る。また、米国短期国債発行に伴う現金残高の回復とナスダック100指数には過去3年間を見ても逆相関の関係が示されている。同指数のRSI(相対力指数、14日間)は15日に78.60まで上昇し、短期的な買われ過ぎとされる70~80の上限に近い水準にある。

 今後、RSIの低下トレンドが確認されつつ指数が高値を維持する場合には、ナスダック100の日次の値動きに対して反対の動きを目指すインバース型のETF(上場投資信託)も投資もヘッジ取引として検討の余地がある。

 新興国市場の政策金利に目を転じると、インドは8日に2会合連続で6.50%で据え置いた。インドネシアは5月25日に、4回連続で据え置き。メキシコ中銀も5月18日に16会合ぶりに利上げを見送った。ブラジルに至っては消費者物価指数(CPI)上昇率が前年同月比4.65%まで低下する中で6会合連続で13.75%で据え置くなど、いつ利下げに転じても不思議ではない状況にある。

 特にインドやブラジル、インドネシアのように人口が多い国は内需で成長できる余地があり、欧米諸国の金融引締めに伴う外需変動に左右されにくい。このため、新興国市場のADR(米国預託証券)は好機かもしれない。

【香港株】高配当利回り投資ならハンセン指数構成銘柄に好機も

 香港市場の代表的な株価指数である香港ハンセン指数を構成する80銘柄のうち、6月19日終値で市場予想配当利回り(7%)以上は14銘柄ある。投資の観点では配当金水準の持続性が問題となる。

 これらの14銘柄について、2019年以降の1株当たり配当金と配当性向(いずれも23年は市場予想)の年次推移を見ると、4大国有銀行に位置付けられる中国建設銀行、中国銀行、中国工商銀行、国有通信最大手かつ世界最大の携帯電話会社である中国移動は、安定した配当性向の下で増配を継続している。

 そのほかの業種については年ごとの増配や減配などで変動性の高さがみられる。なお、米国が国家安全保障上の懸念を理由として米国の個人と企業による中国企業への証券投資禁止措置を講じているケースがある。当14銘柄の中では中国海洋石油と中国移動がこれに当てはまる。

 香港株式の高配当利回り銘柄への投資に関しては、H株およびレッドチップ銘柄について、中国本土の税制により現地で配当金に関して企業所得税(10%)といった課税がされる場合がある。H株とは、登記地が中国本土となっている企業が香港市場で発行する株式を指す。

 また、レッドチップとは、中国本土の中央政府出資の中央企業もしくは地方政府出資の国有企業が経営参加している上に、資本金の30%以上を出資し、中国本土以外の地を登記地としている会社の株式を意味する。上記の7%以上配当利回り14銘柄のうち、H株にもレッドチップにも該当しないのは、東方海外国際、新世界発展、HSBCホールディングス、康師傳控股、恒基兆業地産、万州国際の6銘柄である。

※右の画像クリックでグラフ拡大

(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

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