海外株式見通し=米国、香港

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2023/7/20 10:30

【米国株】「ナスダック100指数」異例のリバランスへ

 金融引締めの「タカ派」色を強める米FRB(連邦準備制度理事会)とインフレ率鈍化を織り込もうとする株式市場の対決姿勢は、米6月CPI(消費者物価指数)でインフレ率鈍化が示されたことで株式市場側が優勢となった。市場は「金融引締めは最終局面、FOMC(米連邦公開市場委員会)での0.25ポイント利上げを最後に引締めを停止」という見方を固めて動きだしたかのようだ。

 FRB関係者が金融政策に関する発言を自粛する「ブラックアウト期間」に入ったことも、株式市場にとって追い風だろう。その間には主要企業の4~6月決算発表が相次ぐことから、短期的に堅調な相場展開が想定される。

 一方、米ナスダック上場の金融を除く上位100銘柄の時価総額の加重平均で算出する「ナスダック100指数」が、異例のリバランスを実施すると報じられた。指数構成比率4.5%以上を占める大型株の影響力が合計で48%を超えた場合、ウエートを減らすことができるとする規定に従うものだ。

 対象となる大型株がリバランスによる売り圧力を受ける可能性がある半面、ほかの構成銘柄は逆に恩恵を受ける面もある。ナスダック100構成銘柄で相対的に時価総額が小さいものの中には、マウスピース型矯正治療のアライン・テクノロジー(ALGN)や保険リスク分析のべリスク・アナリティクス(VRSK)など、堅実に事業展開をしている企業もある。

 8月22~24日に南アフリカで開催される「BRICSプラス」年次首脳会議で加盟国が米ドルに対抗して金(ゴールド)を裏付けとした「金本位制」に基づく決済通貨の導入が審議される予定だ。市場への影響は未知数だが、中央銀行による金買いを期待させる材料にはなり得る。イラン、アルゼンチン、サウジアラビアなど、いわゆる「グローバル・サウス」の新興国が相次いでBRICS加盟を申請しており、軽視できない。

【香港株】中国不動産不況とグレーターベイエリア構想

 経営再建中の中国不動産大手の中国恒大集団が17日、延期していた2021年12月期と22年12月期の2期分の決算を発表した。2年間の最終損益の合計(単純合算)は約11兆2000億円相当の赤字となり、債務超過に転落した。同社株は22年3月21日から売買停止中だ。

 中央銀行の中国人民銀行と国家金融監督管理総局は10日の共同声明で、不動産企業が建設中の物件が完成して引き渡しを確実に行えるようにするため、金融機関は不動産企業の未返済ローンに関して延長の交渉に応じるように促されるとした。

 24年末までに期限を迎えるローン残高の一部について1年の返済猶予が与えられる。これに呼応するかのように、11日発表の6月の新規人民元建て融資額が前月比2.2倍の3兆495億元と大幅に増加した。ただ、15日発表の6月の新築住宅価格は前月比で6カ月ぶりに下落。17日発表の1~6月不動産投資は1~5月よりも前年同期比のマイナス幅が拡大するなど、不動産不況が悪化している。

 中国の不動産開発業界の先行きに暗雲が漂う中で、広東省(広州、深セン、珠海含む7都市)・香港・マカオの経済協力を強化する「大湾区(グレーターベイエリア)」構想に期待が掛かる。総面積は約5万6000平方キロメートルと日本の九州を上回り、20年の人口は8600万人超、域内総生産(GDP)が約250兆円相当額に上る。

 運輸関連のインフラ整備の大型事業として香港と深センを結ぶ「港深西部鉄道」の敷設計画が掲げられている。「グレーターベイエリア構想」の進展の恩恵を得られやすい立場にあると思われる香港の4大不動産会社は恒基兆業地産(ヘンダーソン・ランド・デベロップメント)、新鴻基地産発展(サンフンカイ・プロパティーズ)、新世界発展(ニューワールド・デベロップメント)、長江実業集団(CKアセット・ホールディングス)。各社の株価パフォーマンスは、足元でハンセン不動産株指数を上回るも、香港ハンセン指数を下回る。同構想の進展はまだ株価に織り込まれていない面もあるだろう。

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(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

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