<新興国eye>インド準備銀行、全員一致で金利据え置きを決定―5委員が金融引き締めスタンスを堅持

新興国

2023/8/14 9:14

 インド準備銀行(中銀)は前週(10日)の金融政策決定会合で、インフレ上昇を抑制し、景気を支援するため、流動性調節ファシリティー(LAF)の主要政策金利であるレポ金利(中銀の市中銀行への翌日物貸出金利)を6.50%に据え置くことを全員一致で決めた。市場の予想通りだった。

 また、中銀はレポ金利の据え置きに伴い、金融システムから余剰流動性を吸収するため、金利の上下幅(コリドー)についてもLAFのリバースレポ金利(市中銀行の中銀への預金金利)も6.25%に、市中銀行が資金ひっ迫時に中銀から政府債を担保に資金を借りることができる流動性供給スキーム「MSF(マージナル・スタンディング・ファシリティー)」と公定歩合もそれぞれ6.75%に据え置いた。

 中銀はインフレの急加速を受け、22年5月4日の臨時会合で0.40ポイントの緊急利上げに踏み切り、今年2月会合まで6合連続で利上げを実施、利上げ幅は計2.50ポイントに達した。4月会合から据え置きに転じており、これで据え置きは3会合連続。6.50%の金利水準は18年以来4年ぶりの金融引き締め水準となっている。

 また、中銀は今後の金融政策のスタンスについて、6委員中、大半の5委員(前回会合時も5人)が「引き続き、インフレが徐々に物価目標に収束するようにするため、金融緩和の撤回(利上げ)に引き続き注力する」とし、利上げサイクルの終了宣言は時期尚早で一時休止の判断を示した。しかし、ジャヤント・R・ヴァルマ委員は今回の会合でも態度保留とした。これも市場の予想通りだった。

 金利据え置きを3会合連続で決めたことについて、中銀は声明文で、前回6月会合時と同様、「これらの決定はインフレ率を中期の物価目標である2-6%上昇(中央値4%上昇)の範囲内に戻し、経済成長を支援するという中銀の目的と合致する」とした。市場では、今回の金利据え置きは最近のインフレの急上昇がどの程度、持続するかが明確になるのを待ち、景気回復を支援したい考えと見ている。

 中銀は今後の金融政策について、「気象変動による供給(サプライチェーン)の混乱により、インフレ率が近いうちに急上昇する可能性が高い。これらのショックに警戒することが重要だ」とし、モンスーン(6-9月)やエルニーニョ現象の悪影響、地政学的リスクによるインフレ圧力の上昇に対処する必要性を強調。その上で、「これまでの累積的な2.50ポイントの利上げが経済に波及する中、中銀は金利据え置きを決めたが、必要に応じ、政策対応を行う用意がある」とし、追加利上げの可能性を示唆した。

 シャクティカンタ・ダス総裁も声明文で、「累積的な利上げは経済に影響を及ぼしているものの、外需はよく持ちこたえ、国内の経済活動は好調を今後も維持する可能性が高い」とした上で、「こうした要因を考慮し、新たな状況を引き続き注視し、評価することを決めた」と述べている。

 また、総裁はインフレ抑制のため、今回の会合で一時的措置として、金融システムから過剰流動性を吸収するため、市中銀行に対し、12日から2週間、CRR(支払準備金の比率)を4.5%から10.0%に引き上げるよう指導したことも明らかにした。これにより、1兆ルピーが削減される。

 足元のインフレ状況は、6月が前年比4.8%上昇と、5月の同4.3%上昇を上回った。食品物価の上昇が背景。中銀は、「今後、野菜価格の高騰が短期的には(7-8月に)インフレのかなりの上昇圧力となる」、「短期的にはインフレ率が大幅に上昇する」と、警戒感を示している。ただ、コアインフレ率は落ち着いた動きとなっている。

 インフレの中期的な見通しについては、中銀は、「通常のモンスーン期を想定すると、23年度のインフレ率は5.4%上昇(前回会合時は5.1%上昇)を予想する。第2四半期(7-9月期)は6.2%上昇(同5.2%上昇)、第3四半期(10-12月期)は5.7%上昇(同5.4%上昇)、第4四半期(24年1-3月期)は5.2%上昇(同5.2%上昇)と予測。23年度のインフレ予想を悪化方向に引き上げた。

 次回の金融政策決定会合は10月4-6日に開かれる予定。

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提供:ウエルスアドバイザー社

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