【為替本日の注目点】パウエル議長、タカ派姿勢を維持
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
東京市場では上値の重かったドル円は海外市場で再び上昇。NYでは長期金利が上昇したこともあり、151円39銭までドル高が進む。ユーロドルはもみ合いが続き、水準は前日と変わらず。株式市場は3指数が揃って下落。パウエル議長など、FOMCメンバーのタカ派発言が相次いだことが重石に。債券は大幅に下落。長期金利は4.62%台へと急騰。金と原油は揃って買われる。
マーケット情報
新規失業保険申請件数 → 21.7万件
ドル/円 150.84 ~ 151.39
ユーロ/ドル 1.0660 ~ 1.0726
ユーロ/円 161.23 ~ 161.80
NYダウ -220.33 → 33,891.94ドル
GOLD +12.00 → 1,969.80ドル
WTI +0.41 → 75.74ドル
米10年国債 +0.149 → 4.624%
本日の注目イベント
豪 RBA四半期金融政策報告
英 英7-9月期GDP(速報値)
英 英9月鉱工業生産
欧 ラガルド・ECB総裁講演
英 英9月貿易収支
米 11月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
米 10月財政収支
米 ボスティック・アトランタ連銀総裁講演
米 ローガン・ダラス連銀総裁講演
東京市場では上値が重く、やや売りが先行する展開でしたが、やはりNYではドル買いが優勢となり、ドル円は151円39銭まで買われ、介入の有無を確かめる動きになってきました。
この日も多くのFOMCメンバーによる発言がありました。その中でも注目されていたパウエル議長の発言が、株と債券売りを誘発し、ドルを上昇させました。正直、発言内容は想定よりもタカ派寄りでした。議長はワシントンで開かれたIMF会合の冒頭で、「金融政策のさらなる引き締めが適切となれば、そうすることをためらわない」と発言。「しかし、数カ月の良好なデータで見誤るリスクと、引き締め過ぎるリスクの両方に対処できるよう、引き続き慎重に行動していく」と続けました。また、金融政策の当局者はインフレ率を目標の2%に下げることに注力しているが、「そのようなスタンスを達成できたと確信していない」と述べ、「将来のインフレ抑制が供給サイドの改善によってどれだけ改善できるかは定かではない」と指摘しました。(ブルームバーグ)必要ならば、さらなる追加利上げを躊躇しないとの発言が市場の予想を超えていたことで、債券が売られ長期金利が15bpほど上昇しドルを押し上げました。
先週末に発表された10月の雇用統計の結果が予想を大きく下回ったことで、「好調だった労働市場にも累積利上げの効果が出始めた可能性」が意識され、12月会合での政策金利据え置き観測を醸成しましたが、パウエル議長は敢えて慎重な姿勢を見せ、市場をけん制したようにも受け取れます。
この日は他にも多くの発言がありました。その骨子を挙げると、アトランタ連銀のボスティック総裁は「金融政策は十分に景気抑制的であろうと考えるが、それでも途中で難所にぶつかることはあるだろう」と述べ、リッチモンド連銀のバーキン総裁は、「全体として、政策の影響はまだ完全に表れていない」と発言。セントルイス連銀のペーズ暫定総裁は、「インフレ鈍化の進展が鈍った場合に政策金利をさらに引き上げる用意をしておくべきだ」と述べ、ボウマンFRB理事も、「インフレを抑制するためにはさらなる利上げが必要になるだろうとなお考えている」と、改めて発言しました。このように総じてこの日の発言はタカ派的であったことで、市場の政策金利据え置き観測もやや後退した格好ですが、基本は今後のデータ次第であることに変わりはありません。
ホワイトハウスは「イスラエルはパレスチナ自治区ガザ北部で1日4時間の戦闘停止時間を設けることで合意した」と発表しました。カービー報道官は、「ガザ北部で毎日4時間の戦闘停止をイスラエルが開始すると、米国として理解している。実施の3時間前に通告がある」と説明し、「戦闘停止時間には軍事作戦を一切行わないとイスラエル側は説明した。このプロセスは本日から始まる。正しい方向での有意なステップだ」と語っています。イスラエル側のこの判断は、米国から人道上の停戦を再三要請されたことに答えたことのようですが、「4時間の休戦」がはたして「停戦」につながるのか予断を許しません。イラク軍の報道官は戦闘停止があることは認めたものの、「重大な発表ではない」と主張しています。バイデン大統領はこの結果を歓迎しながらも、「私は3日以上の戦闘停止を要請した」と述べ、その要請にネタニヤフ氏が合意していないことに不満かとの質問に対しては、同氏の抵抗に米国側の困惑は増していることを認め、「期待していたよりもやや長くかかっている」と発言しています。(ブルームバーグ)
足元の日本のインフレ率が高水準で推移していることから植田総裁の発言にも徐々に変化が出てきており、大規模金融緩和政策の修正も意外に近いのではと感じていますが、総裁は9日英フィナンシャル・タイムズ主催のインタビューで、「日本の現状を踏まえると、望ましい水準よりも低いインフレ率はオーバーシュートよりも対処が難しい」と述べ、金融政策の正常化を急ぐ考えはないことを示唆しました。インフレが目標よりも高い場合には、金利を上げることで対処できるが、低過ぎた場合、政策手段は限られ対処が難しいと説明したようです。これまでの日本が20年以上にわたってデフレからの脱却に苦しんできたことを踏まえての発言かと思います。
ドル円はいよいよ重要な水準に近づいてきました。151円台後半は昨年10月と今年10月に記録し、いずれも「介入」と「介入もどき」の動きに押し戻された水準です。介入の有無を確認しながらの動きになりそうですが、152円までに介入が確認されないようだと上昇が加速することも考えられます。
本日のドル円は150円30銭~152円程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)
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