<新興国eye>マレーシア中銀、金利据え置き―景気・インフレ警戒も通貨安阻止へ

新興国

2024/3/8 8:47

 バンク・ネガラ・マレーシア(中銀)は7日の金融政策決定会合で、景気を支援、通貨リンギット安を阻止するため、政策金利である翌日物政策金利(OPR)を3.00%に据え置いた。市場の予想通りだった。

 中銀は23年1月会合で22年3月以来、5会合(10カ月)ぶりに据え置きに転換。3月も2会合連続で据え置いたが、5月会合で予想に反し、追加利上げ(0.25ポイント)を実施、金利水準をコロナ禍前の19年11月(3.00%)以来の5年ぶりの高水準に戻している。今回の据え置き決定は前回1月会合に続き、5会合連続。

 中銀は会合後に発表した声明文で、据え置きを決めたことについて、前回会合時と同様、「中銀の金融政策スタンスは現在の金利水準で引き続き景気を支援している」とし、景気下振れリスクに配慮し、景気を優先したことを強調している。

 その上で、中銀は今後の金融政策について、前回会合時と同様、「今後の経済やインフレの動向を引き続き警戒している」とし、また、「金融政策スタンスが物価安定の下で持続可能な経済成長に資するようにする」とし、今後の金融政策は会合ごとのデータに基づき、予断を持たずオープンなスタンスを維持したい考え。

 市場では最近のインフレ率は1月が前年比1.5%上昇と、3カ月連続で同率の伸びにとどまり、22年8月のピーク時の同4.7%上昇から大幅に低下していることが中銀に金利据え置きの余地を与えたと見ている。ただ、通貨リンギットが26年ぶり安値に急落していることや、中国の景気低迷を受け、マレーシア経済の下振れリスクに対応するため、金利据え置きが必要になっていると見ている。

 中銀はインフレ見通しについて、「24年のインフレ率は安定したコストと需要を反映、引き続き緩やかな伸びとなる」とし、前回会合時と同様、インフレ低下が続くと予想している。ただ、インフレ見通しに対するリスクについて、「この見通しは引き続き、補助金や価格統制、また、世界のコモディティ(国際相場商品)価格や金融市場の動向に大きく依存している」とし、依然、インフレ上振れリスクに懸念を示している。

 市場では24年後半からの推定810億リンギット(約172億ドル)の燃料・電力補助金の廃止や、3月からの増税(サービス税の2%ポイント引き上げ)がインフレ上振れリスクになると見ている。

 大幅下落が続いているリンギットについて、中銀は、「マレーシア経済のファンダメンタルズと成長見通しを考慮すると、リンギットは現在、過小評価されている」とし、リンギット安懸念を示した。その上で、中銀はリンギット安を阻止するため、「政府と中銀は政府系企業や政府系投資会社による海外投資収入の本国送金を促進する協調行動をとっている。こうした措置は資金流入の拡大に寄与し、リンギットを支えている」とし、リンギット安の阻止は利上げに頼らない方針を改めて強調した。

 また、景気の見通しについて、中銀は、「マレーシア経済23年に3.7%拡大した」とし、その上で、前回会合時と同様、「今後、輸出の回復と国内消費支出の底堅さに支えられ、24年の成長率は改善すると予想される」とした。しかし、中銀は成長見通しに対するリスクについて、「成長見通しは予想を下回る外需と一次産品生産の大幅な減少に起因する景気下振れリスクにさらされている」とし、警戒感を緩めていない。

 次回の会合は5月8-9日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 ブルサKLC<1560.T>、アセアン50<2043.T>、アジア債券<1349.T>、

 上場EM債<1566.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

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