FOMC議事録、長期金利据え置きで一致―国債減額上限引き下げで意見割れる

経済

2024/5/23 9:37

<チェックポイント>

●議事録、インフレの持続的低下の確信には予想よりも時間かかる

●議事録、インフレリスク顕在化すれば金融政策をさらに引き締める必要

●議事録、インフレは低・中所得世帯を圧迫、消費下振れリスク

 FRB(米連邦準備制度理事会)は22日に公表した、4月30日-5月1日開催分のFOMC(公開市場委員会)議事録で、インフレ率が予想以上に根強く、ディスインフレのプロセス(インフレの低下基調)が不十分なため、利下げの見通しが立たず、高水準で金利をより長期化する必要があるとの認識で一致していたことが分かった。

 議事録では、「委員らはインフレが過去1年間で緩和したものの、ここ数カ月はFRBの物価目標である前年比2%上昇への収束に向け、さらなる進展が見られないとの認識を示した」としている。また、議事録では1-3月期(第1四半期)GDP(国内総生産)の成長率とインフレ率が堅調となったことにも言及、「インフレが2%上昇に向けて持続的に推移(低下)しているという確信をさらに高めるには予想よりも時間がかかると判断した」と指摘している。

 その上で、議事録ではFRBは当面、利下げ開始よりも現在の高水準となっている金利の据え置きを長期化する必要があると結論付けている。議事録では、「委員らは、インフレ率が2%上昇に向けて持続的に進む兆候が見られない場合や、雇用市場の状況が予想外に悪化した場合について、現在の制限的な政策スタンスを長期間維持することに関し、議論した」とした上で、「複数の委員は、インフレリスクが顕在化し、そのような(制限的な)措置が適切であれば、金融政策をさらに引き締める用意があると述べた」としている。

 また、FOMC委員はインフレ見通しについては不透明感が強いと見ている。議事録では、「委員らはインフレ率が中期的には2%上昇に戻ると引き続き予想していると指摘した。しかし、最近のデータでは2%上昇に向けた進捗に対する確信が高まっておらず、ディスインフレのプロセスにはこれまで考えられていたよりも時間がかかる可能性が高いことが示されていた」と指摘している。

 さらに、議事録では、「委員らは総じて、インフレ率の上昇が家計、特に食料品や住宅、交通機関などの生活必需品の高額な費用をまかなうことが最も困難な世帯の購買力に悪影響を与え続けていることにも引き続き懸念を抱いた」とし、「そうした世帯でクレジットカードや後払いサービスの利用が増加していること、また一部の消費者ローンで延滞率が上昇していることを指摘した」とし、インフレ圧力が続く中、消費者がリスクの高い資金調達に頼っているとの懸念を示したとしている。

 また、FRBは5月会合で、現在、量的金融緩和(QE)の出口戦略として実施している国債の買い取り減額(バランスシートの縮小)ペースを遅らせ、慎重に対応することを決めた。具体的には6月1日から国債の毎月の減額上限を600億ドルから250億ドルに引き下げる。国債減額上限の引き下げは金融緩和となる。

 ただ、議事録では減額上限の引き下げに意見の相違があったようだ。「少数の委員はバランスシートの縮小ペースの現状維持、または、国債の減額上限を決定(250億ドル)よりやや高くすることを支持できたとの考えを示した」とし、250億ドルへの引き下げ決定までには賛否両論があったことも明らかになった。

 議事録を受け、FOMCが政策金利を変更する確率を示すCMEのFedWacthツールを見ると、9月に1回目の利下げが行われる確率は50.9%(前日は51.6%)に後退。12月の2回目の利下げ確率も36.3%(同37%)と、やや後退した。

<関連銘柄>

 NASD投信<1545.T>、NYダウ投信<1546.T>、上場米国<1547.T>、

 SPD500<1557.T>、NYダウ<1679.T>、NYダウブル<2040.T>、

 NYダウベア<2041.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

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