ECB、政策金利を0.25ポイント引き下げ―追加利下げには慎重姿勢

経済

2024/6/7 9:33

<チェック・ポイント>

●ECB総裁、利下げ決定は全員一致でなく1委員が反対

●ECB総裁、インフレ再燃リスクを警戒―利下げに慎重姿勢

●市場、年内にあと2回(9、12月)の利下げを予想

 欧州中央銀行(ECB)は6日の定例理事会で、主要政策金利のうち、市場介入金利である定例買いオペの最低応札金利(リファイナンス金利)を0.25ポイント引き下げ、4.25%とすることを決めた。市場の予想通りだった。4.25%の金利水準は依然、23年6月(4.00%)以来の低水準。

 また、ECBは他の2つの政策金利についても下限の中銀預金金利を3.75%、上限の限界貸出金利も4.50%に、いずれも同率引き下げた。

 預金金利は19年9月以来、4年9カ月ぶりの引き下げだが、政策金利は16年3月以来、8年3カ月ぶりの引き下げとなる。

 ECBは会合後に発表した声明文で、利下げ開始を決めたことについて、「インフレ見通しやコアインフレの動向、金融政策の(インフレ抑制)効果に関する最新の評価に基づき、9カ月間金利を据え置いたあと、金融政策の制限の程度を緩和することが適切であると判断した」としている。「制限」とは金融引き締めを制限領域(景気に打撃を与えることになる政策金利の水準)にまで大きく進めることを意味する。

 ECBはFRB(米連邦準備制度理事会)とイングランド銀行(BOE)という世界3大中銀のうち、最初に利下げを決めたことになる。他の中銀では前日のカナダ中銀、5月のスウェーデン中銀、3月のスイス中銀に続く利下げとなっている。

 ECBは前回4月会合で初めて、「インフレ率が持続的に物価目標に収束しつつあるという確信がさらに高まれば、現在の制限的な金利水準を引き下げることが適切となる」との文言を加え、利下げサイクル開始にシフトする可能性を示唆していたが、インフレの現状認識と先行きの見通しについて、ECBは声明文で、「(利上げサイクルの最後となった)23年9月以降、インフレ率は2.5ポイント超低下、インフレ見通しが大幅に改善した。コアインフレも緩和、物価圧力が弱まり、インフレ期待が全期間で低下している兆候を裏付けた」とし、当面のインフレ懸念が払しょくされたとしている。

 ただ、最新のユーロ圏20カ国のインフレ率は5月が前年比2.6%上昇と、3月と4月の2.4%上昇を上回り、予想以上に加速、物価目標の2%上昇もかなり上回っている。これに関し、ECBは声明文で、「賃金上昇率の加速に伴い、域内の物価圧力は依然として強く、インフレ率は来年も物価目標を上回る見込み」とし、その上で、24年のインフレ率(全体指数)の見通しを2.5%上昇(前回3月予測は2.3%上昇)、25年は2.2%上昇(同2.0%上昇)、26年は1.9%上昇と予想。コア指数も24年は2.8%上昇、25年は2.2%上昇、26年は2.0%上昇と予想、いずれも24年と25年の予想を引き上げた。他方、経済成長の見通しについては、24年は0.9%増、25年は1.4%増、26年は1.6%増と予想している。

 今後の金融政策の方向性を示すフォワードガイダンス(金融政策の指針)について、ECBは声明文で、「インフレ率が適時に中期目標の2%上昇に戻るようにすることを決意している。この目標を達成するため、必要とされる期間、政策金利を十分に抑制した水準に維持する」、「引き続きデータに依存し、会合ごとに適切な制限レベルと期間を決定するアプローチをとる」、また、「特定の金利経路を事前に約束しない」とし、追加利下げに慎重な姿勢を示している。

 今回の会合での利下げは市場の予想通りだったが、市場では5月のインフレ率が前年比2.6%上昇に加速したことや、ECBのラガルド総裁も会見で、インフレ再燃懸念を示したことから今回の利下げはタカ派の利下げと見ており、FRB(米連邦準備制度理事会)と同様、インフレ再燃リスクが考慮され、今後、追加利下げが慎重なペースで進む可能性が高いと見ている。市場では年内にあと2回(9月と12月)の利下げを想定している。ただ、インフレが再燃した場合にはFRB同様、金融緩和を再考する可能性があると見ている。

 次回の会合は7月18日に開かれる予定。

提供:ウエルスアドバイザー社

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