【為替本日の注目点】5月のNFP大きく伸び、ドル円157円台に
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
ドル円は急騰。5月の雇用統計で非農業部門雇用者数(NFP)が市場予想を大きく上回ったことで、ドル円は157円07銭まで上昇。ユーロドルも大幅に下落。1.09台前半から1.08割れまで下落。株式市場は雇用統計の結果を受け3指数が揃って下落。債券は大きく売られ、長期金利は前日比14bp上昇し4.43%台に。金は大きく売られ、2325ドルに。原油は小幅安。
8月失業率 → 4.0%
8月非農業部門雇用者数 → 27.2万人
8月平均時給 (前月比) → 0.4%
8月平均時給 (前年比) → 4.1%
8月労働参加率 → 62.5%
4月消費者信用残高 → 6.403b
マーケット情報
ドル/円 155.31 ~ 157.07
ユーロ/ドル 1.0799 ~ 1.0903
ユーロ/円 169.06 ~ 169.98
NYダウ -87.18 → 38,798.99ドル
GOLD -65.90 → 2,325.00ドル
WTI -0.02 → 75.53ドル
米10年国債 +0.146 → 4.434%
本日の注目イベント
日 4月国際収支・経常収支
日 4月貿易統計
日 1-3月GDP(改定値)
日 5月景気ウオッチャー調査
英 5月消費者物価指数
米 NY連銀1年インフレ期待(5月)
個人的には、これまでに発表された雇用に関するデータ、例えばJOLTSや失業保険申請件数などの雇用関連指標を考慮し、5月のNFPは下振れする可能性が高いと予想していましたが、大きく外しました。結果は市場予想の「18万人」に対して、「27.5万人」と、10万人近くも増加していました。失業率は「4.0%」(市場予想は3.9%)と、ここ2年余りで初めて4%台まで上昇していましたが、改めて米景気の底堅さが示された格好でした。ただ、景気抑制的な金融政策の維持で、米労働市場の減速傾向は明らかとは思いますが、それでも雇用拡大の一つの目安である「20万人の増加」はクリアしています。ほとんど影響はありませんでしたが、4月分のNFPは「17.5万人」から「16.5万人」に、さらに3月分も「31.5万人」から「31万人」にわずかですが、下方修正されています。
それにしても155円台半ばで推移していたドル円が157円台まで上昇するとは想定外でした。ただこちらも、米長期金利が前日比で14bp以上も上昇したことを見れば、当然と言えるのかもしれません。日米金利差の拡大が円売りを加速させましたが、同時に年内の米利下げ回数も2回のコンセンサスが1回にシフトしつつあります。今週のFOMC会合では、政策金利はほぼ据え置きが確実かと思いますが、7月の会合でも利下げは見送られ、9月の会合で1回と見られています。もっとも、常に先走る市場ですから、この先消費者物価指数などインフレ指標が落ち着いた数字を出すようなら再び利下げ観測が高まる可能性はあります。ここまで強い数字が出ると、今週木曜日のパウエル議長の発言がどのようになるのか注目したいと思います。「われわれは忍耐強くなければならない」という言葉を繰り返すのでしょうか。
先週のECB理事会で、唯一利下げに反対したオーストリア中銀のホルツマン総裁は自国のラジオ番組で、「年内3回のECB利下げという当初の想定が現実になり、一方でFRBが相応の動きをしなかった場合、為替レートやインフレ率に影響を与えることは間違いない」と述べていました。雇用統計の結果を受け、ユーロドルは一時1.08台を割り込む水準まで売られ、ユーロ安が進みました。インフレを抑え込むのに成功したかに見えるECBにとって、ユーロ安がさらに進めば、インフレの再燃につながる可能性があることをホルツマン氏は懸念し、こうした発言を行ったようです。ECBの今回の利下げは、ECBが事実上、利下げをあらかじめ約束していたこともあり、「さまざまな意見がかわされたが、政策委員会の見解は他に方法はないというものだった」と、利下げに至った経緯を述べていました。
欧州議会選挙が行われましたが、各国で極右勢力の台頭が相次ぎ、今後の政策運営にも影響が出て来る可能性が指摘されています。ドイツではシュルツ首相率いる与党・社会民主党(SPD)が第3位に転落し、過去最悪の結果になりました。また、フランスでもマクロン大統領が率いる与党連合がルペン氏の極右政党、国民連合(RN)に惨敗しています。マクロン氏は9日、国民議会(下院)を解散し、新たな選挙を実施することを表明しています。
ドル円は少なくとも、先週の雇用統計発表前までは154円台半ば~156円台半ばのレンジを形成する動きでしたが、雇用統計の結果を受けレンジを上抜けした形になっています。ただ、この先年末に向けては円高に振れるといった観測も根強く、ドルが上昇したところでは引き続き本邦輸出筋を中心にドル売り注文が集まり易いと思われます。従って、東京時間でのドルの上値は限定的かと思われますが、NYで再び上値を試す動きが出るのかどうかです。個人的には雇用統計の上振れはあったものの、このまま再び介入水準を試す動きにはならないと見ていますが、どうでしょう。
本日のドル円は156円~157円50銭程度を予想します。
(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
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・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧
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