<無料公開>日銀株の安値、市場不信を反映?――金融政策手詰まり、ETFは「含み損懸念」と「枠拡大期待」

2020/3/12 7:30

 株式市場の日本銀行に対する不信が、出資証券として東京証券取引所に上場する日銀(8301・JQ)株の値動きに反映されている。11日は出来高200株と薄商いながらも2万8000円(前日比1000円安)で安値引けし、前日に続いて上場来安値(調整後)を更新した。金融緩和策の手詰まり感が強まる中で、株価指数連動型ETF(上場投資信託)の買い入れをめぐっても不安材料が増している。

 この日の日経平均株価は、前日の米国市場でNYダウが急反発した勢いに乗れず、前日比451円安の1万9416円と反落した。「コロナ・ショック」の局面では初めて終値で1万9500円を割り込み、昨年来安値を更新した。

 日経平均の1万9500円は、黒田東彦日銀総裁が10日の参院財政金融委員会で、日銀が保有するETFの時価が簿価を下回る損益分岐点だと示唆した水準。投資家の間では、株式市場における「黒田ライン」と認識する向きもあり、一定の下値支持線として機能することが期待された。

 しかし、早くも11日にこのラインを下回ってしまった。「日銀にはETFの保有を通じてばく大な配当金を得ているため、実質的なコストはもっと低いはず」(市場関係者)と考えられるものの、含み損には引当金を積む必要があるという。

 2016年秋にイールド・カーブ・コントロール(YCC)を導入した日銀は、既に利下げ余地がない。新型コロナウイルスの感染拡大で変調をきたしたマーケットを支える手立てが乏しい中で、含み損の発生が懸念されるETF購入についても制約が強まるのではないかという見方が浮上している。

 日銀株は黒田総裁が就任した13年に一時前年末比で2倍に急騰するなど、日銀に対する市場評価を反映する傾向があるとされる。安値圏に放置される足元の動きは、あたかもマーケットが日銀を見限りつつあるようだ。18、19日に行われる次の金融政策決定会合で、流れを変える一手を打ち出せるかが注目される。含み損が不安視される一方で、一部ではETFの年間購入枠を現在の6兆円から拡大するとの観測が出ている。

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