RBA、政策金利と量的緩和を据え置き―3年国債利回り目標は廃止

経済

2021/11/2 15:43

<チェックポイント>

●「24年まで利上げせず」の文言削除し、「忍耐強くなる準備がある」に変更

●22年5月までに0.15ポイントの1回目の利上げを実施―市場予想

●22年2月中旬まで資産買い入れペースを週40億豪ドルで継続

 豪準備銀行(RBA、中銀)は2日の理事会で、引き続き景気を支援するため、政策金利であるオフィシャルキャッシュレート(OCR、銀行間取引で使われる翌日物貸出金利)の誘導目標を過去最低水準の0.10%に据え置いた。市場予想通りだった。

 RBAは20年11月会合で、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)の悪影響が現れ始めた3月以来、8カ月ぶりに利下げを決めたが、20年12月会合で据え置きに転換。これで据え置きは11会合連続となる。

 今回の会合では、市場予想通り、最近の3年国債(24年4月満期)の利回りの急上昇を受け、3年国債の利回り達成目標(0.1%近辺)を廃止することを決めた。

 ロウRBA総裁は会合後の声明文で、「利回り目標の打ち切り決定は、経済の改善と予想外のインフレ高進を示す直近のデータを反映している」とした上で、「インフレ高進と失業率低下の可能性が高まっていることを受け、他(3年国債以外)の市場金利が変動したことを考えると、豪金利全体を抑制する上での利回り目標の有効性は低下している」と述べている。最近の急速なインフレ高進を受け、国債利回りを上昇させている市場からの利上げ催促の圧力に押された格好となった。

 景気見通しについて、声明文で、「豪経済は、デルタ株の感染拡大による経済活動の中断後、回復に向かっている。新型コロナのワクチン接種率がさらに上昇し、規制が緩和されるにつれて、経済は比較的速く回復する」との見方を示している。

 ロウ総裁は、RBAが5日に発表する予定の最新の四半期インフレ報告書の内容を先取りする形で、21年の成長率見通しを前年比3.0%増、22年と23年の見通しをそれぞれ同5.5%増と2.5%増と予想した。21年の見通しは従来予想の4.0%増から下方修正したが、22年は従来予想の4.0%超増から上方修正している。

 インフレ見通しについては、「インフレ率は上昇したが、(7-9月期の)コアインフレ率は前年比2.1%上昇とまだ低い。CPI(消費者物価指数)の全体指数は前年比3.0%上昇であり、ガソリン価格や新築住宅の価格上昇、世界的なサプライチェーンの寸断の影響を受けている。コアインフレ率は緩やかな回復が予想される」とインフレ加速は一時的との見方を示した。その上で、21年と22年のインフレ見通しをそれぞれ約2.25%上昇、23年を2.50%上昇とした。

 ロウ総裁は、「コアインフレ率は依然、低い伸びで、インフレ圧力も他の多くの国に比べて低い。特に賃金の伸びがわずかなためだ」と述べ、市場が警戒している金融引き締めへの早期転換が必要なほどインフレ加速の懸念はないとしている。

 金融政策の見通しについては、「インフレが持続的に2-3%の物価目標の範囲内に収まると確信するまで、政策金利を引き上げない」とのフォワードガイダンス(金融政策指針)を維持したが、前回の会合で使われた「経済予測の標準シナリオでは、この(利上げ)条件は24年まで満たされない」との文言を削除。代わりに、「これ(利上げ)には労働市場が現在よりも大幅に高い賃金の伸びを生み出すのに十分なほどタイトである必要があるが、それには時間がかかる。23年末のコアインフレ率は2.5%上昇を下回り、賃金の伸びは徐々に増加するとの見通しに基づいて、われわれは忍耐強くなる準備ができている」とし、「24年」という具体的な利上げ開始期限には触れていない。

 これに対し、金融先物市場ではインフレ加速が一時的で終わらないとの見方で、RBAの政策金利が今後1年以内に数回利上げされ、現在の過去最低水準の0.10%から0.75%に引き上げられる可能性を織り込んでおり、22年5月までに0.15ポイントの1回目の利上げを予想している。

 テーパリング(量的金融緩和の段階的縮小)の方針については、RBAは7月会合で、国債などの資産買い入れ規模を変えず、9月以降、買い入れペースを現在の週50億豪ドル(月200億豪ドル)から同40億豪ドル(同160億豪ドル)に減速したが、今回の会合でもこの方針を据え置いた。資産買い入れについても22年2月中旬までとした。RBAは前回9月会合で3カ月延長している。

 次回会合は12月7日に開かれる予定。

提供:モーニングスター社

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