フォーカスシステムズ、安定と成長の源泉を聞く

無料

2022/3/31 12:14

 フォーカスシステムズ(4662)は独立系のSI(システムインテグレーター)として知られる。公共向けや、通信、情報セキュリティーなどの分野で、ビジネスパートナーとともにシステム構築やソフトウエア開発を手掛けている。IT系企業の好調が目立つ中で、同社の安定と成長の源泉について、代表取締役社長の森啓一氏に聞いた。

 ――フォーカスの事業内容を教えてください。

 「公共向けではNTTデータ(9613)、民間企業向けでは日本アイ・ビー・エムなどが大企業から受注したインフラ設計などの案件に対して、2次請けとして業務を請け負っているほか、直接受注する1次請け案件を含めて、システム構築などを担っています。2次請けと言っても、実際には1次請け企業とはビジネスパートナー的な位置付けとなり、各プロジェクトに深くかかわっているケースが多いです」

 「顧客企業に人材が常駐し、開発案件などを長期で手掛けるため、中には数十年単位での付き合いもあります。当社は公共向けでスタートし、実績を積み重ね技術力が蓄積できたことで、その後の民間向けに乗り出す際にも堅実性や安定性をアピールできました。高度なノウハウを持ち、開発案件の中枢を担っているため、『フォーカスの人材がいないと成立しない』ケースも多く、顧客企業やビジネスパートナーから重宝される地位を確立しています」

 ――旺盛なDX需要を反映し、御社の業績も好調に推移しています。

 「今3月期は非連結売上高245億円。(前期比4.3%増)、営業利益14.8億円(同2.1%増)で、過去最高を更新する計画です。民間企業や公共関連のシステム投資需要は高水準で推移しており、安定的な成長につながっています」

 ――独立系SIとして苦労している点や、競合との差別化などで取り組んでいる点はありますか?

 「親会社などの意向に縛られずに事業展開できるのはメリットですが、その分、ゼロから営業をしなければいけないのは大変です。ただし、長年にわたりNTTデータなどと組んで高い要求に応え、仕事をこなす。その実績とノウハウを生かして新たなクライアントにも当社の強みをアピールしています。大手取引先の紹介で新たなクライアントを得るケースもあります」

 ――競合他社との差別化戦略はどのようにされていますか。

 「公共系では特に高いノウハウがあり、20年30年と長く携わっているスペシャリストも多く抱えています。そのほか、日本IBMとのビジネスパートナーとしてはスキルでも人数面でも日本で数本の指に入るクラスの信頼と技術力を構築しており、他社の追随を許さない側面もあります」

 ――インターネットをはじめとするIT分野では、驚くスピードで技術革新が進んでいます。御社のかかわる分野でも、要求される技術が変わっていくのでしょうか。

 「ある日突然すべてが変わるということはありません、徐々に変化は見られます。社内でも、先々必要とされる分野についての議論は常に出ています。また、これは一例ですが、ビジネスパートナーであるNTTデータや日本IBMが常に先端技術をキャッチしていて、彼らが積極的に取り組む新たなプロジェクトに1人でも2人でも人材を出させてもらい、高い要求や水準に応えつつフォーカスとしても新たな流れを常にキャッチアップする。こういうサイクルを常に構築しています」

 「社内でも情報を共有する体制をつくり、フットワークの軽さで営業担当が常に新たなプロジェクトに食い込めるように働き掛けています。常に新たな流れや技術を学んで備え、持っている技術・知見への社会的需要が高まった段階でスムーズに業務に入っていける体制づくりをしています」

 ――現在はIT関連の人材不足が叫ばれていますが、IT産業自体のニーズの移り変わりをどうみていますか。

 「デジタル化による効率化ニーズは大きく、まだまだ伸びる分野だと考えています。特に、農業や林業、漁業や、介護などITがまだ普及していない分野では、デジタル化の余地が大きい。次のターゲットとして意識しています」

 「一方、DX(デジタルトランスフォーメーション)というのは、デジタル化していないところ(会社など)にデジタル化を教えることになるんですね、そうするとその会社は自分たちの力でデジタル化を進められるようになり、自前でIT人材を雇うことも考えられます。すると当社のような外注先を必要としなくなる面もあり、その意味ではDXは諸刃の剣ともいえます。ただし、DX化の次にもIT化へのニーズは確実に存在すると考えています」

 「どの業界でも分野でもIT抜きでは何もできない、データ1つ取るにもIT化がされていないと正しいデータを取れない、そういう世界が見えています。進み方さえ間違えなければまだまだITは伸び続けていく業界だと思います。例えば、食品業界では商品の売上データや顧客のデータなど、あらゆるデータ(ビッグデータ)を持っているが、それを活用できていない。どう活用していけばいいのかが分からない。活用方法を提案できるコンサルティング力を源泉に当社の事業領域には大きな可能性が広がっていると感じています」

 ――DX人材の不足が日本全体での課題となっています。人材採用や人材育成について、どのように取り組んでいますか。

 「人材募集では、会社や業務の魅力を知ってもらい、弊社で働いてもらう選択をしてもらうことが何より重要です。さらに、人材育成では、専門性の高い弊社の業務では、外部での研修よりも現場に出向いてスキルを磨くのが一番となります」

 「一方で、急速に拡大するニーズを受け止めるには、時間のかかるこれらのスキルアップの過程を通すだけではなく、中途採用や協力会社からの支援も必要です。フォーカスでは他のIT企業に比べて外注比率は高く、それが利益率の相対的な低さにつながっている面があります。創業当時から大事にしている『社員を守る』ことは必須で、守るべき社員を増やしていく中で、外注との比率を将来的にどうバランスさせていくのかは今後の課題となります」

 ――最後に、フォーカスの今後の方向性について、投資家の方に伝えておきたいことがあれば教えてください。将来の大きな利益にも関心が向けられていると思います。

 「IT企業として収益が安定しているイメージを強く持たれていますが、その安定の背景には1次請けを担っている企業と協業することで常に先端技術をとらえ続けていることなどが特長として挙げられます。われわれも自社で常に新たな分野開拓にチャレンジしており、産学連携も入れると常に20~30の新プロジェクトにかかわっており、次世代に向けた種まきを続けています。すぐに収益に結び付くものではありませんが、こうした努力の積み重ねが中・長期的な成果に結び付くと考えています」

 「例えば、昨年11月には動物とのコミュニケーションを分析する『Project Dolitte(ドリトル)』が始動しました。音環境の分析技術により、ペットとの関係や農産物などの被害抑制、生態系の把握などにつながると期待しています」

 「安定した収益基盤により新規分野にも積極的に取り組み、社員の育成にも努めることで、やりがいのある職場を提供し、フォーカス自体の成長につなげていく方針です」(敬称略)

編集後記

 フォーカスシステムズは公共事業や民間企業向けのシステム構築案件を中心に、実績を積み重ねています。ビジネスパートナー企業との長期での信頼関係が業績の安定性につながっており、投資家にとっては安心して投資できる銘柄といえるでしょう。新たな分野にもアンテナを広げており、IT業界の変化に機敏に対応できる体制も構築しています。

 さらには、インタビューの随所で社員のモチベーションに関連する回答があり、森社長が常に「働きがいのある職場づくり」を意識している点は、好感が持てます。今後さらに高まるとみられるDX化ニーズを追い風に、中・長期での収益成長が見込まれる銘柄として注目です。

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ