<新興国eye>アジア経済見通し2022春―カンボジア経済の回復続く
2022/4/13 15:30
アジア開発銀行(ADB)は、4月6日に「アジア経済見通し2022年版」を発表しました。ADBでは、内需の力強い回復と継続的な輸出の拡大を受けて、アジア開発途上国の経済成長見通しを22年は5.2%、23年は5.3%と予測しています。しかし、ロシアのウクライナ侵攻や新型コロナウイルスのパンデミック(感染症の世界的大流行)の長期化、米国の金融引き締めによる不確実性が成長見通しにリスクをもたらしていると指摘しました。
カンボジアについては、21年のGDP(国内総生産)成長率を3.0%(前回1.9%)に引き上げました。21年は、海外での需要回復により輸出が予想より早く回復傾向となったとしています。
また、22年の成長率は5.3%(前回5.5%)、23年は6.5%と予測しました。第二次産業は、輸出先国の経済回復と、近隣諸国からの生産移転で、22年8.1%、23年9.1%の成長を見込んでいます。政府が策定した縫製・靴・旅行用品開発戦略による競争力強化にも期待を示しています。第3次産業については、観光の回復は緩やかに進むとして、22年4.8%、23年6.8%の成長を予測しました。
輸出については、自動車部品、電気部品、自転車等、縫製品以外の健闘を評価しています。これらの輸出は、新型コロナの影響が強かった最近2年間も、20年14.8%、21年17.6%の上昇を示しています。これは、カンボジア経済が多様化することが可能であるということを示しており、今後も輸出品・輸出先の多様化に努力することが必要と指摘しています。
物価上昇率予測は、21年2.9%(前回2.9%)、2022年4.7%(前回2.7%)、2023年2.2%としています。ロシアのウクライナ侵攻の影響もあり22年は上昇しますが、23年には落ち着いてくると見ています。
対外収支については、経常収支の赤字(対GDP比)が20年8.7%、21年45.7%(前回15.6%)と大きく悪化しましたが、22年21.5%(前回12.9%)、23年16.1%と改善方向に向かうと見ています。外貨準備は、21年末に202億ドル(輸入の7.4カ月分)と非常に安定的な水準にあります。
カンボジア政府の対策としては、新投資法による外資誘致に期待を示しています。また、引き続き、手続き簡素化やインフラ拡充、教育・訓練の強化等の改革努力が必要と指摘しました。
リスクとしては、新型コロナウイルスの変異株の感染拡大、貸付条件変更の終了に伴う不良債権比率の上昇、予想以上の国際的資源価格の上昇の可能性などを挙げています。
【筆者:鈴木博】
1959年東京生まれ。東京大学経済学部卒。82年から、政府系金融機関の海外経済協力基金(OECF)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)などで、政府開発援助(円借款)業務に長年携わる。2007年からカンボジア経済財政省・上席顧問エコノミスト。09年カンボジア政府よりサハメトレイ勲章受章。10年よりカンボジア総合研究所CEO/チーフエコノミストとして、カンボジアと日本企業のWin-Winを目指して経済調査、情報提供など行っている。
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提供:モーニングスター社
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