【為替本日の注目点】ドル円一気に143円台まで上昇
ドル円は東京時間終盤に141円台に乗せたが、さらに上昇しNYでは143円08銭前後までドル高が進む。経済指標の上振れにFRBのタカ派姿勢は変わらないとの観測が強まる。ユーロドルも続落。0.9864まで売られ、直近安値を更新。ユーロは対円でも141円台後半まで上昇。株式市場では3指数が下げ止まらない。ナスダック指数は85ポイント下げ、これで7日続落。債券も売られ、長期金利は3.35%近辺まで上昇。金は売られ、原油は横ばい。
マーケット情報
8月ISM非製造業景況指数 → 56.9
8月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値) → 43.7
8月S&Pグローバル総合PMI(改定値) → 44.6
ドル/円 141.89 ~ 143.08
ユーロ/ドル 0.9864 ~ 0.9929
ユーロ/円 140.69 ~ 141.76
NYダウ -173.14 → 31,145.30ドル
GOLD -9.70 → 1,712.90ドル
WTI +0.01 → 86.88ドル
米10年国債 +0.160 → 3.349%
本日の注目イベント
豪 4-6月期GDP
日 7月景気先行指数(CI)(速報値)
中 8月貿易収支
独 7月鉱工業生産
欧 ユーロ圏4-6月期GDP(確定値)
英 BOE総裁ら、議会証言
米 7月貿易収支
米 ベージュブック(地区連銀経済報告)
米 バー・FRB副議長講演
米 バーキン・リッチモンド連銀総裁、質疑応答に参加
米 メスター・クリーブランド連銀総裁講演
米 ブレイナード・副議長講演
加 中銀政策金利発表
ドル高が止まりません。とりわけ、対円では昨日1日で2円80銭以上も円が売られ、NYでは一時143円08銭までドルが買われています。ジャクソンホールでのパウエル議長の講演前から比較すると、約7円も大幅な円安が進んだことになります。昨日は、前日の動きと同じように、東京時間午後3時前辺りに欧州勢が参入し、ドル円は141円台に乗せました。そこからNYでは「大台替え」を2回も示現し、143円台へと上昇しましたが、きっかけは今回も経済指標の上振れでした。
米供給管理協会(ISM)が発表した8月の非製造業景況指数は「56.9」と、前月から上昇し、4カ月ぶりの高水準でした。市場予想は「55.3」と、前月より低下すると見込んでいたことから、指標の上振れを受けFRBは今後もタカ派的な金融政策を継続するとの見方が広がり、株式が売られ、債券も売られ、金利上昇からドル高が進むといったいつものパターンでした。先週末の雇用統計に続いて、昨日のISM非製造業景況指数でも、景気の鈍化を感じさせない結果を示し、3月以降大幅な利上げを続けているFRB首脳も首を傾げたくなるような状況です。
為替市場では特に円売りの勢いが強く、円は全面安の展開でした。ユーロ円は141円台後半まで買われ、約1カ月半ぶりの「ユーロ高・円安」で、主要通貨間では「ドルが最強で円が最弱」といった様相でした。昨日はオーストラリア準備銀行(RBA)も0.5ポイントの利上げを決め、4会合連続で大幅利上げに踏み切り、本日のカナダ中銀、明日のECBも利上げが見込まれており、日銀の金融政策がいやが上にも目立ちます。円が売られるのも、やむを得ないと言えます。ただ、それにしても円売りの勢いは想定外の動きです。昨日は債券も売られ、米長期金利は一時3.35%台まで上昇し、これがドル円上昇の一因にもなっています。しかし、米長期金利は6月14日には3.49%台まで上昇しました。その際にドル円も買われましたが、135円台でした。米金利との相関が強いドル円ですが、円売りの勢いが金利上昇を上回っていることが見て取れます。円の下落スピードは速すぎる印象ですが、ここまで来たら次のターゲットは145円ということになりそうです。
上でも触れましたが、FRBがインフレ抑制を最優先課題とし、金利を大幅に引き上げることで景気を減速させる意図があることは明らかです。その影響は一部の経済指標では鮮明になっていますが、それでも思ったほどインフレ率が低下しない場合、「金融政策だけではインフレの高進を止めることはできない」、「金融政策の限界」といった議論にも発展しそうです。米国のウォルシュ労働長官は、「米国には全ての求人を埋められるだけの労働者がいない」と発言し、「現時点では経済にとってインフレよりも、リセッションよりも深刻な脅威だ。これらの仕事を埋める必要がある」とし、米移民制度について、「いずれ見直す必要がある」との考えを示しました。(ブルームバーグ)この発言は現在の好調な米労働市場の実態を表しているように思います。人手不足が続き、経営者は労働力を確保するため「高賃金」を提示し、その原資を確保するために販売価格を上げざるを得ないといった構図です。ウォルシュ労働長官の発言が事実だとすれば、米国の賃金上昇とインフレの高進は当分続く可能性もあるかもしれません。
ドル円は東京市場の始まる前にすでに143円56銭まで上昇しています。政府の口先介入も、これまでとはトーンを異にし、厳しい口調に変わる可能性もありそうです。本日のドル円は142~144円50銭程度を予想します。
(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)
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・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧
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