<新興国eye>ポーランド中銀、0.25ポイント追加利上げ―利上げサイクルは近く終了の可能性

新興国

2022/9/8 9:18

 ポーランド中銀は7日の金融政策委員会で、ウクライナ戦争によるインフレの急加速を阻止するため、主要政策金利の7日物レファレンス金利を0.25ポイント引き上げ、6.75%とすることを決めた。利上げ幅は市場の大方の予想通りだった。

 また、中銀はロンバート金利と再割引金利、公定歩合、預金金利もそれぞれ7.25%、6.80%、6.85%、6.25%に引き上げた。

 中銀はコロナ禍による経済への悪影響を緩和するため、20年の3月17日の緊急会合で5年ぶりに0.5%ポイントの大幅利下げを決めた。その後も5月まで3会合連続で引き下げ、利下げ幅が計1.4ポイントに達したことを受け、6月会合で据え置きに転じた。21年9月会合まで14会合連続で金融緩和を維持したが、その後のインフレ急加速を受け、21年10月会合で9年5カ月ぶりに利上げに転じた。利上げはこれで11会合連続。利上げ幅は計6.65ポイントに達した。

 中銀が追加利上げを決めた背景には、ポーランドの8月のインフレ率が前年比16.1%上昇と、7月の15.6%上昇から一段と伸びが加速。96年以来26年ぶりの高い伸びとなっていることがある。

 中銀は会合後に発表した声明文で、前回7月会合時と同様、「これ(高インフレ)は主に、ロシアによるウクライナ侵略戦争で世界的にエネルギー価格と農産物物価が上昇し、国内でも電気・ガス料金が引き上げられたため。今後数四半期、インフレ加速要因の影響が続くことが予想される」とし、ウクライナ戦争が大きなインフレ上昇リスクになっているとの認識を改めて強調。

 その上で、中銀は、「金融政策のタイム・ホライズン(時間軸)でインフレ率が中銀の物価目標を上回るリスクが持続している。このリスクを軽減するため、つまり、中期的にインフレ率を物価目標にまで引き下げるため、再び利上げを決めた」としている。

 最新の7月四半期インフレ報告書で、中銀はインフレ見通しについては、22年は13.2-15.4%上昇、23年は9.8-15.1%上昇、24年は2.2-6.0%上昇と、今後数年でインフレ率が低下すると予想する一方で、GDP伸び率見通しは22年の3.9-5.5%増から23年は0.2-2.3%増、24年は1-3.5%増と、23年以降、大きく減速すると予想している。

 今後の金融政策の見通しについて、中銀は前回会合時と同様、「さらなる金融政策決定は、ウクライナへのロシアの軍事侵攻がポーランド経済に与える影響を含む、インフレと経済活動の見通しに関する今後の情報に依存する」とした上で、「マクロ経済と金融の安定を確保するために必要なすべての措置を講じる。これには、とりわけ、インフレが上昇し続けるリスクを軽減することが含まれる」とし、追加利上げの可能性を示唆した。

 また、中銀は、インフレリスク要因の通貨ズロチ相場を安定させるため、「金融政策の方向と矛盾するズロチの相場変動を抑えるため、市場介入する可能性がある」とした。

 しかし、市場では今回の利上げ幅が前回会合時の0.5ポイントの半分だったことや、アダム・グラピンスキー総裁が先週、今後、利上げは小幅な0.25ポイントで1-2回実施する可能性を示唆したこと受け、中銀は今後、インフレ抑制から景気回復に重点を移し、利上げサイクルを近いうちに終了させる可能性があると見ている。中銀は会合後の声明文で、景気見通しについて、「4-6月期は前年比5.5%増と、1-3月期の同8.5%増から減速した。7-9月期は前年比でさらに減速する。主に在庫投資の寄与度が大幅に低下しているのが要因。今後数四半期、成長率の伸びはさらに鈍化する」と、景気後退への懸念を強めている。

 次回の会合は10月5日に開かれる予定。

<関連銘柄>

 上場EM債<1566.T>、上場MSエマ<1681.T>

提供:モーニングスター社

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