【為替本日の注目点】ドル円145円台前半まで下落
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
ドル円は続落。米中間選挙で共和党が優勢なことと、CPIを控えたポジション調整からドル売りが強まり、145円32銭まで下落。ユーロドルはさらに上昇し、1.0096近辺まで買い戻しが進む。株式市場は続伸。日中にはマイナス圏に沈む場面もあったナスダックは51ポイント上昇。ダウは3日続伸し、3万3000ドル台を回復。債券は反発。長期金利は4.12%台に低下。中間選挙で共和党が優勢との情勢も影響。金は大幅に続伸し、1716ドル台に。一方原油は大幅続落。
マーケット情報
ドル/円 145.32 ~ 146.45
ユーロ/ドル 0.9992 ~ 1.0096
ユーロ/円 145.99 ~ 146.87
NYダウ +333.83 → 33,160.83ドル
GOLD +35.50 → 1,716.00ドル
WTI -2.88 →88.91ドル
米10年国債 -0.090 → 4.123%
本日の注目イベント
日 9月貿易収支
日 9月国際収支
日 10月景気ウオッチャー調査
中 10月消費者物価指数
中 10月生産者物価指数
米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演(チューリッヒ)
米 バーキン・リッチモンド連銀総裁講演
米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、討論に参加
ドル円はNY市場で先週水曜日に続き145円台まで売られています。東京時間では底堅い動きを見せ、146円台後半まで買われる場面もありましたが、NYに入ると、株価の上昇と長期金利の低下を手掛かりにドル売りが進み、145円32銭前後までドルが下落しています。歴史的に見て、過去の中間選挙後には株価が上昇する「アノマリー」があり、実際、第二次世界大戦以降19回の中間選挙が行われましたが、1年後のS&P500指数は全て上昇しているそうです。この「アノマリー」のせいか、昨日のNY株式市場でも買い物を集め、S&P500は上げ幅を縮めたものの、21ポイント高でした。
米中間選挙では、期日前投票を行った人が4000万人を大きく超え、このままでいくと過去最高の投票率になるとみられています。共和党の優勢が報じられ、世論調査分析会社の「ファイブサーティーエイト」によると、共和党が下院の過半数を奪回する確率は84%で、上院でも59%だとしています。投票は多くの州で日本時間の午前中に締め切られ、即日開票されます。昨日も触れましたが、共和党が大勝すればねじれ議会となり、バイデン大統領が掲げる大規模な財政支出や減税などの法案が議会で成立しにくくなり、場合によってはウクライナへの武器を含む経済支援も減額される可能性も考えられます。これらは財政支出の減少となり、債券発行額の減額につながるとして、債券価格は上昇しています。債券が買われたことで金利が低下し、ドル円の下落につながったようです。商品市場でも、ドルが売られたことで金が大幅に上昇し、金価格はおよそ1カ月ぶりの高値を付け、さらに原油価格は中国がゼロコロナ政策の継続を表明したことから大きく下げ、ビットコインも急落するなど、金融市場以外でも神経質な展開になっています。
ただそうは言っても、現時点で最も重要なのは、「米国のインフレがいつ止まるか」という点です。ややリスクオン的な雰囲気が強まってきましたが、明日のCPIの結果次第ではこのセンチメントも一気に吹き飛んでしまう可能性もあります。反対に、「7.9%」と予想されている総合CPIが予想を下回るようだと、さらにリスクオンが進み、株高、金利低下、そしてドルが売られるとみられます。「データを入手する前に判断を急ぐつもりはないが、世界のインフレはピークに達しつつある可能性は非常に高い」と、エジプトで行われた「COP27」に出席した、ゲオルギエワ・IMF専務理事が述べた言葉も正当化されることになります。
今回の中間選挙で多くの有権者を投票所に向かわせた要因の一つに、「高進するインフレ」があったと言われています。昨日のNHKのニュースでも、インフレを放置しているとしてバイデン政権に対する厳しい声が多く聞かれました。自身を支持する候補者を積極的に応援に駆け付けたトランプ氏は、今月15日(火)自身が所有するフロリダにある会員制高級避暑地で「Big announcement at Mar‐a‐Lago」(大きな発表)を行うことを表明しています。今回の中間選挙で勝利を収め、その勢いで2024年大統領選への「出馬宣言」を行うのではないかと予想されています。2016年の大統領就任で米国を分断させたトランプ氏、2度目の大統領となればさらに米国の分断が強まり、修復不能になるのではないかと危惧する人は決して少なくはありません。先ずは、中間選挙の結果に注目したいと思います。
本日のドル円は144円~147円とワイドに見ます。ドル円は151円94銭をピークに下落が続いているため、短い動きを示すチャートではほぼサポートを割り込んでいます。日足の雲の上限(先行スパン1)は144円前後にあることから、ひとまずこの水準は意識されるかと思います。重要なのは雲の下限(先行スパン2)で、現在138円21銭に位置しています。ここを割り込めば「トレンドの転換」が確認できると考えていますが、やはりその前の140円前後が重要なサポートになるのでしょう。水準としてはまだかなり離れていますが、一応意識しておいた方がいいかもしれません。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)
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