【為替本日の注目点】ドル円10日ぶりに142円台まで上昇
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
ドル円は急反発。欧州時間に141円台に乗せ、NYでは142円25銭までドル高が進む。特段目立った材料はなかったものの、ユーロドルでドル高が進んだ影響との声も。ユーロドルは1.0223まで売られる。中国でコロナ感染の拡大に伴い、ロックダウンが強化されるとの見方もユーロ売りにつながる。株式市場では3指数が揃って反落。依然として大幅利上げ観測が消えない状況の中、ダウは45ドル下げ、ナスダックも121ポイントの下落。債券相場はほぼ横ばい。長期金利は3.82%台で推移。金は4日続落。原油は「OPECプラス」が12月会合に向け、増産を協議しているとの報道に一時75ドル台まで急落。
マーケット情報
ドル/円 141.32 ~ 142.25
ユーロ/ドル 1.0223 ~ 1.0262
ユーロ/円 144.87 ~ 145.63
NYダウ -45.41 → 33,700.28ドル
GOLD -14.80 → 1,739.60ドル
WTI -0.35 → 79.73ドル
米10年国債 -0.002 → 3.827%
本日の注目イベント
欧 ユーロ圏9月経常収支
欧 ユーロ圏11月消費者信頼感指数(速報値)
欧 OECD経済見通し
米 11月リッチモンド連銀製造業景況指数
米 メスター・クリーブランド連銀総裁、同行主催のイベントで挨拶
米 ブラード・セントルイス連銀総裁講演
米 ジョージ・カンザスシティー連銀総裁、政策パネルに参加
加 9月小売売上高
ドル円が予想外に上昇しています。昨日の東京市場でも底堅い動きを見せ、これまで何度も140円台では押し戻される展開でしたが、昨日は140円台後半までドルが買われる場面もあり、これまでの東京市場とはやや異なる動きではありました。その後ドル円は欧州市場に入ると141円台に乗せ、NYでは142円台前半まで上昇しています。ドル円との相関が高い米長期金利は小幅ですが低下しており、株価の下落でリスク回避の流れから円が売られたとの説明も苦しいものがあります。
となると、消去法で言えばやはりユーロドルで、「ドル高・ユーロ安」が進んだことがドル円にも影響したと考えるしかありません。言うまでもなく、ユーロ圏はドイツを中心に中国との経済的結びつきは強く、その中国ではコロナ感染に対する政府の政策が上手く機能していません。北京市ではコロナの感染者が死亡し、「ゼロコロナ政策」にもほころびが見えています。厳しい統制が敷かれており、規制を破った外出者には禁固4年の刑が科されたとの報道もあります。今後中国政府がさらに規制強化に動くとの見方からユーロが売られたようです。目立った材料が不足する中、市場は無理やり材料を仕立てているようにも思えます。
今月5日には92ドル台まで急伸したWTI原油価格が荒っぽい動きを見せています。先週後半から下げ足を早め、昨日は一時80ドルの大台を割り込み、75ドル台まで下げ、今年1月下旬以来となる安値を付ける場面もありました。石油輸出機構(OPEC)加盟国と非加盟国で構成する「OPECプラス」が12月会合に向け、日量最大50万バレルの増産を協議しているとの報道がきっかけでした。その後、サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相が、国営サウジ通信を通じた声明で、「OPECプラスが現在実施している日量200万バレルの減産は2023年末まで継続される」と、否定したことで80ドル台まで戻して引けています。
SFシスコ連銀のデーリー総裁は講演で、「インフレは容認できないほど高い」としつつも、「調整が行き過ぎれば、不必要な痛みを伴う景気低迷を招きかねない」と述べ、インフレの減速が示された直近のCPI統計について、「期待が持てる」と述べています。デーリー総裁はややハト派的な立場とみられ、FF金利と金融市場の引き締まりとの間の乖離を意識し続けることが重要だとし、「それを無視すれば、引き締め過ぎとなる可能性が高まる」と続けています。また、クリーブランド連銀のメスター総裁も同様な認識を示し、「利上げの停止に多少でも近づいているとは考えられない。インフレ率が実際に2%に向けて持続的な減速の道筋にあることを確認する必要がある」としながらも、これまで4会合連続で0.75ポイントずつの利上げを踏まえて、「次回会合で0.75から減速することができると考える。それに全く異存はない」と語っています。(ブルームバーグ)この2人の総裁はハト派の代表的な立場にいますが、特にメスター総裁は今年のFOMCでの投票権を持っているだけに、市場からは注目されそうです。
米長期金利の上昇という援軍もないまま142円台まで上昇したドル円ですが、今日は142円台を維持できるかどうかが注目されます。原油価格の大幅な下落は日本の貿易赤字改善に寄与することから、こちらは円高要因とみられますが、137円台までドルが売られてから、10日ぶりの142円台ということでドル売り注文も集まりやすいのではないかと予想しています。151円94銭からの今回の下落局面では、フィボナッチリトリースメントの「38.2%」戻しが143円13銭辺りになります。
本日のドル円は141円~142円80銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)
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