【為替本日の注目点】日銀、大規模金融緩和修正を決め市場は大混乱

為替

サーチナ

2022/12/21 10:18

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

 昼すぎ、日銀がYCCの修正を行うことを発表したことでドル円は137円台から急落。午後には132円台まで下げ、その後133円台まで戻したが、NYでは一段とドル売りが加速。一時は130円58銭までドル安に。対円でドルが売られたものの、ユーロドルは水準をやや切り上げたが、上値は限定的。ユーロ円の売りも活発でユーロドルの上値は1.06台半ばでキャップされる。株式市場は3指数が反発したが、引けにかけては上げ幅を縮小。ダウは92ドル高、ナスダックはほぼ横ばいで取引を終える。債券は続落。長期金利は3.69%台に急騰。金は大幅に反発。原油も小幅に上昇。

マーケット情報

11月住宅着工件数 → 142.7万件

11月建設許可件数 → 134.2万件

ドル/円 130.58 ~ 132.90

ユーロ/ドル 1.0595 ~ 1.0657

ユーロ/円 138.70 ~ 140.98

NYダウ +92.20 → 32,849.74ドル

GOLD +27.70 → 1,825.40ドル

WTI +0.90 → 76.09ドル

米10年国債 +0.107 → 3.692%

本日の注目イベント

独 1月GFK消費者信頼調査

米 経常収支(7-9月)

米 11月中古住宅販売件数

米 12月コンファレンスボード消費者信頼感指数

加 11月消費者物価指数高

 「黒田ショック」・・・・。今朝のブルームバーグはこのようなヘッドラインを掲げ、昨日の日銀の緩和政策の修正による金融市場への影響を表現しています。

 確かに、大きなサプライズというか、「寝耳に水」でした。筆者も今回の長期金利の変動幅拡大は全くノーマークで、驚きでした。昨日のコメントの最後に「本日は日銀決定会合後の黒田総裁の会見に注意が必要です。会見では、政府・日銀の共同声明改定に関する報道を巡る質問も出ると思われます。松野官房長官は同報道を否定していましたが、質問があった場合、どのように答えるのか注目されます。」と、一応注意は促しましたが、イールドカーブ・コントロール(YCC)での長期金利の変動幅を従来のプラス・マイナス0.25%から0.5%に拡大との変更は全くの想定外でした。

 ドル円は昼過ぎにこの一報が伝わるとドル売り円買いが強まり、一気に133円07銭辺りまでドル売りが進みました。日経平均株価も、前場はプラスで引けていましたが、午後からは一転して大幅なマイナスで始まり、一時は前日比820円程下げる場面もありました。また、債券市場でも上限が外れたことで、債券が大きく売られ、長期金利は一時0.46%近辺まで上昇しています。10月には151円94銭まで上昇したドル円は、米国のインフレ抑制に伴う大幅利上げが続き、日米金利差拡大が大きな要因でした。このドル高が修正されるのは、基本的には二つしか方法はなく、米国の利上げの停止、もしくは利下げか、または日本が利上げをするしかありません。もちろんこれだけではありませんが、金利差に着目したドル買いが急速に進んだことを考えれば、最も重要なファクターです。先週のFOMC会合では利上げは行われたものの、利上げ幅は0.5ポイントで、これまで4会合連続で0.75ポイントの利上げを実施してきたスタンスからは異なり、今後の利上げペースの緩和もうかがうことが出来ました。これが、ドル円が急速に下げてきた理由ですが、ここに今回は日銀の長期金利の変動幅拡大が加わったことで、ドルが大きく売られたことは自然の流れです。

 黒田総裁は昨日の午後の会見では、長期金利の変動幅拡大は「利上げではない」と執拗に述べていましたが、つい最近まで許容幅の拡大は「実質的には利上げだ」と、述べており、誘導幅の拡大には否定的な考えを示していました。日銀の内田理事も5月10日の参院財政金融委員会で、変動幅の拡大は「事実上の利上げであり、日本経済にとって好ましくない」と述べており、さらに若田部副総裁も6月1日の会見で、長期金利の変動幅を拡大することは「やはり事実上確かに金利を上げることにつながるだろう」と答えています。(ブルームバーグ)

 昨日の会見で総裁は、このタイミングで長期金利の変動幅を拡大した理由を質問され、「YCCがよりよく機能するように市場機能の改善を図った」と答え、さらに「さらなる拡大は必要ないし、考えていない。YCCや量的・質的緩和を見直すことは当面考えられない」とも述べています。余りにも身の代わりの速さに市場には「激震」が走りましたが、「金融政策の先行き指標(フォワードガイダンス)を示すことで市場の混乱を避け、政策効果を高めることが世界の金融政策の潮流だ。日銀のサプライズはこうした流れに背を向けたものといえる」と、今朝の日経新聞は珍しく批判的な論調でした。さらにいえば、日銀の「中央銀行」としての信頼性にもかかわってくる可能性もあります。ブルームバーグの今朝の記事には「市場を驚かせる達人、黒田総裁最後の一撃」という見出しのコラムがありました。内容についてはいずれ触れてみたいと思います。

 ドル円は昨日のNYで130円58銭まで売られる局面もありました。今朝は131円台後半とやや反発していますが、130円割れも視野に入ったと考えます。10月21日には151円94銭までドル高が進み、今年の上昇幅は38円47銭を記録しました。そこから下げ基調を強め、すでに20円を超える「ドル高の修正」が見られています。上昇幅の「半値戻し」は132円70銭となり、昨日はその水準を超えて下落しています。こうなると、『半値戻しは全値戻し』という格言が頭をよぎります。この先の展開は、米国のインフレ鎮静化のペースが最大の変動要因になります。今朝の専門家の意見では、来年に向け120円という声も出て来ました。個人的にはそこまではないと予想していますが、今年の相場は想定外の動きが多く、アナリスト泣かせの展開が多く、正直「相場観」というよりも「相場感」といった方が実態に近いといえます。130円割れはあるとしても、せいぜい125円前後がここ数カ月の底値かとみています。米国のインフレは、そう簡単には収束しないのではないかといった見立てです。

 本日のドル円は130円~133円程度といったところでしょうか。

(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)

・今日のアナリストレポート

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・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧

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