<年末年始特集>医薬品関連の好業績株、23年3月期上期、過去最高業績更新の2社

株式

2022/12/30 16:10

 FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げ、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化による資源高などを受け円安が進行する中、12月19-20日の日銀金融政策決定会合で長期金利の上限が0.5%へと、実質的に利上げされたことを受け、円相場は一瞬にして1ドル133円台まで円高が進展。日経平均株価は一時前日比820円安の2万6416円まで下落し、669円安の2万6568円で終えた。多くの景気敏感株が下落する中、ディフェンシブストックとしての側面を持つ医薬品関連には比較的下げ幅の少ない銘柄が散見された。

 その1つがロート製薬<4527.T>。同社の23年3月期第2四半期累計(22年4-9月)は、連結売上高1103億1300万円(前年同期比21.2%増)、営業利益162億6900万円(同18.3%増)で、第2四半期累計として過去最高業績を更新。主力の「日本」は、「肌ラボ」が売上65億800万円(前年同期比15.6%増)、「メラノCC」が売上51億9800万円(同45.6%増)、「日やけ止め」が売上34億1300万円(同39.6%増)、「ロートV5粒」が売上24億6400万円(同38.0%増)と好調に推移し、コロナ前を上回る増収に。マスク着用習慣により伸び悩んでいたリップクリームは回復に転じ、21年8月に子会社化した「ボラギノール」を主力とする天藤製薬も増収に寄与した。

 「アジア」も中国市場悪化の影響はあるものの全主力ブランドが好調に推移したことで、大幅な増収増益となる中、会社側は通期の業績予想を上方修正。売上高を従来の2250億円から2300億円(前期比15.2%増)に、営業利益を300億円から310億円(同6.8%増)にそれぞれ引き上げた(為替レートの前提を従来の1ドル=125円から135円に修正)。

 同社は中長期的な成長持続に向け再生医療・医療用眼科治療薬の開発を手掛け、再生医療ではヒト脂肪由来幹細胞による肝硬変、重症心不全、腎疾患、重症下肢虚血、肺線維症などの治療薬が臨床試験段階にあり、医療用眼科治療薬では、CMV(サイトメガロウイルス)角膜内皮炎、ドライアイなどの適応で承認取得を目指している。加えて再生医療関連事業で培ったノウハウや技術を最大限に生かし、再生医療等関連製品の開発・受託製造(CMO/CDMO)サービスも展開。数年後が非常に楽しみな状況にある。

 もう一社注目したいのが小野薬品工業<4528.T>。23年3月期第2四半期累計(22年4-9月)において、抗悪性腫瘍(しゅよう)剤「オプジーボ点滴静注」は競合他社製品との競争が激化する一方、胃がん、食道がんなどでの使用が拡大したことなどにより、売上は前年同期比138億円(24.6%)増加の699億円となり、糖尿病、慢性心不全および慢性腎臓病治療剤「フォシーガ錠」は売上264億円(前年同期比68.8%増)に増大。

 連結業績(IFRS)は売上収益2167億100万円(前年同期比24.5%増)、営業利益802億7000万円(同38.0%増)と、こちらも第2四半期累計として過去最高業績を達成した。これを踏まえ、会社側は通期の予想売上収益を従来の4250億円から4400億円(前期比)に、営業利益を1450億円から1490億円(同)に増額。ちなみに為替レートの前提は、従来、年間1ドル=110円だったが、下期(22年10月-23年3月)を1ドル=130円に見直している。

 オプジーボはヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体。PD-1は、リンパ球の表面にある受容体の一種で、生体において活性化したリンパ球を沈静化させるシステム(負のシグナル)に関与しており、がん細胞はこのシステムを利用して免疫反応から逃れている。オプジーボは、リンパ球を沈静化させるPD-1の働きを抑制することで、がん細胞やウイルスを異物と認識してこれを排除する免疫反応を増進する。そのメカニズムから特定のがん腫にとどまらず、幅広いがん腫に有効とされている。

 2014年7月、PD-1を標的とする免疫チェックポイント阻害剤として世界で初めて承認され、同年9月に発売されたが、適応は悪性黒色腫からスタート。その後、非小細胞肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、頭頚部がん、胃がん、悪性胸膜中皮腫、食道がんなどに適応を拡げる一方、導出先のブリストル・マイヤーズスクイブからのロイヤリティ収入は23年3月期第2四半期累計で421億円(前年同期比82億円増)に達している。当面、最高業績の更新が続きそうだ。

提供:モーニングスター社

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