【為替本日の注目点】ドル円130円割れから132円台後半に急伸

為替

サーチナ

2023/1/5 10:11

ひと目でわかる昨晩の動き

NY市場

 欧州市場の朝方には130円を割り込んだドル円はNYで急伸。FOMC議事録の内容や地区連銀総裁の論文、さらには労働市場の堅調さを示す指標にドル円は132円71銭まで上昇。ユーロドルは再び1.06を挟む水準まで値を戻す。株式市場はFOMC議事録の内容に反応し売られたが、引けにかけては買い戻しが活発となり3指数は揃って上昇。債券は続伸。長期金利は3.68%台に低下。金は続伸し1859ドル台に。原油は大幅に続落し、昨年12月半ば以来となる72ドル台まで下落。

マーケット情報

12月ISM製造業景況指数 → 48.4

12月自動車販売台数 → 1331万台(年率換算)

ドル/円 130.95 ~ 132.71

ユーロ/ドル 1.0581 ~ 1.0628

ユーロ/円 138.60 ~ 140.76

NYダウ +133.40 → 33,269.77ドル

GOLD +12.90 → 1,859.00ドル

WTI -4.09  → 72.84ドル

米10年国債 -0.056 → 3.683%

本日の注目イベント

中 12月財新サービス業PMI

独 独11月貿易収支

独 独11月経常収支

欧 ユーロ圏11月卸売物価指数

米 12月ADP雇用者数

米 11月貿易収支

米 新規失業保険申請件数

米 12月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値)

米 12月S&PグローバルコンポジットPMI(改定値)

米 ボスティック・アトランタ連銀総裁、会議冒頭で挨拶

加 カナダ11月貿易収支

 新しい年になってまだ3日目の取引ですが、昨日の海外市場でもドル円は大きな値動きを見せました。東京市場では131円台が重く、ドルがジリジリと売られる展開となり、欧州時間の朝方には130円を割り込み、129円92銭前後までドル安が進みました。このままNYでも上値の重い展開が予想されましたが、一転してドル買いが強まり、大台を二つ替えながら132円71銭までドル高が進みました。米長期金利が前日に続き低下する中、やや想定外の動きでした。

 きっかけは、12月のFOMC議事録の内容でした。12月の会合では、それまで4会合連続で0.75ポイントという大幅な利上げを実施してきましたが、0.5ポイントの利上げに抑え、利上げペースを減速させた会合でした。市場ではその後、2023年には「利下げ」を予想する声も一部に出るなど、市場全体がハト派寄りにシフトする契機にもなった会合でした。議事録では、「正当な根拠のない金融状況の緩和は、特に委員会の対応に関する世間一般の誤解に基づくものである場合、物価安定を回復する委員会の取り組みを複雑化させる」と記されており、先走る市場をけん制する内容でした。ただこの内容は決して唐突なものではなく、12月会合後の会見でパウエル議長は、「なお幾分か道のりは残っている」と発言し、「インフレ率が持続的な形で2%へと低下していると委員会が確信するまで、利下げが検討されることはないとみている」とし、「物価安定を回復させるには、景気抑制的な政策スタンスをしばらく維持する必要がありそうだ」と述べ、「まだ十分に景気抑制的なスタンスではないというのが、われわれが今日下した判断だ」と、議事録の内容に沿う発言を行っていました。(参照:12月15日付け、今日のアナリストレポート)議長の発言自体、タカ派的なものでした。

 昨日はさらにミネアポリス連銀のカシュカリ総裁の小論文もドル買い円売りに拍車をかけました。同総裁はミディアム・ドット・コムに4日掲載された論文で、「インフレがピークを付けたとわれわれが確信するまで、少なくとも今後数会合は利上げを続けるのが適切になる」と指摘し、「私としては5.4%での利上げ停止を想定しているが、最終地点がどの水準になるにせよ、政策金利がインフレ率を妥当な期間で2%へと戻すのには十分な高さにあるのかどうか直ちには分からない」とし、「インフレをより長期間高止まりさせるような、進展の遅さを示唆する何らかの兆候が見られれば、政策金利をよりずっと高い水準に引き上げる可能性が正当化されると私は考えている」と説明しています。(ブルームバーグ)同総裁は今年のFOMCで投票権を持つことから、このタカ派寄りの論文がより影響した可能性もあります。

 またこの日発表された11月の求人件数が、前月よりは減少していたものの、市場予想を上回り、引き続き高水準を維持していたことで、労働市場の堅調さが意識され、明日発表される12月の雇用統計にもポジティブなイメージを与えたようです。FRBが昨年3月から全ての会合で利上げを実施して来たことにより、発表される多くの経済指標では、住宅関連指標に代表されるように「鈍化傾向」が明らかになっています。しかし、最後の砦と言うべき「労働市場」だけが、人手不足を背景に好調さを維持しています。FRBは失業率が上昇してでも景気の拡大を抑制する姿勢を鮮明にしています。もともと「雇用統計」は重要経済指標の一つですが、今年はその動向が「消費者物価指数」と並んで、一段と注目されそうです。グリーンスパン元FRB議長は、同氏がアドバイザーを務める投資会社のウェブサイトで、「最近2回の月間統計で消費者物価の減速が示されたものの、少なくとも軽度のリセッションを回避するのに十分なほどの当局の方針転換を保証するものでないと思う」と述べ、「米国のリセッションは最も可能性の高い結果だ」との認識を示しました。米景気が春から夏にかけてリセッション入りする可能性は非常に高く、問題はそれが軽度のものに終わるのか、それともかなり深いものになるのかが焦点とも言えます。いずれ、米国のリセッション入りが市場の大きな材料となるタイミングが来ると予想しています。従ってドルの上値は限定的かと思いますが、昨日の様なこともあり、断定的な判断は避けなければなりません。

 本日のドル円は131円~133円程度を予想します。

(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)

・今日のアナリストレポート

https://www.morningstar.co.jp/redirect/gaitameonline_academy01.htm

・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧

https://www.morningstar.co.jp/redirect/gaitameonline_calender.htm

関連記事

マーケット情報

▲ページTOPへ