【為替本日の注目点】米1月雇用統計はビッグサプライズ
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
1月の雇用統計が予想を大きく上回ったことでドル円は大幅に上昇。131円台までドル高が進み、131円20銭を記録。1月12日以来、約3週間ぶりのドル高に。ドルが買われたことでユーロも売られ、1.0793前後まで下落。株式市場は3指数が揃って反落。FRBによる利上げ停止観測が後退。ナスダックは193ポイント下げ、S&P500も43ポイントの下落。債券は大きく売られ、長期金利は3.52%台に上昇。金と原油は大幅に続落。
マーケット情報
1月失業率 → 3.4%
1月非農業部門雇用者数 → 51.7万人
1月平均時給 (前月比) → 0.3%
1月平均時給 (前年比) → 4.4%
1月労働参加率 → 62.4%
1月ISM非製造業景況指数 → 55.2
1月S&Pグローバルサービス業PMI(改定値) → 46.8
1月S&PグローバルコンポジットPMI(改定値) → 46.8
ドル/円 128.39 ~ 131.20
ユーロ/ドル 1.0793 ~ 1.0940
ユーロ/円 140.10 ~ 142.35
NYダウ -127.93 → 33,926.01ドル
GOLD -54.20 → 1,876.60ドル
WTI -2.49 → 73.39ドル
米10年国債 +0.132 → 3.525%
本日の注目イベント
独 12月製造業新規受注
欧 ユーロ圏12月小売売上高
英 ベイリー・BOE総裁講演
景気抑制的な政策を続け、2%の物価目標達成に向かって賢明な努力を行っているFRBにとって、今後も「労働市場」が大きな[壁]として立ち塞がってくる可能性がありそうです。
1月の雇用統計は「ビッグサプライズ」でした。失業率は何と53年ぶりとなる「3.4%」と、市場予想の「3.6%」から大きく改善していました。非農業部門雇用者数は「51.7万人」と、こちらは市場予想の「18.8万人」に比べ、33万人ほど上回る大幅増加でした。さらに12月分も、速報値の「22.3万人」から「26万人」に上方修正されています。FRBは先週のFOMCでは0.25ポイントの利上げを行いましたが、12月会合の0.5ポイントの利上げ幅から順次縮小し、足元では3月会合では0.25ポイントの利上げを最後に、それ以降は累積利上げ幅の効果を見極めるため、「利上げを停止」するのではないかといった観測も浮上してきた状況でした。
今回の雇用統計の発表がこの観測に冷水を浴びせた格好となり、市場の「楽観的な見方」は一気に吹き飛んだ動きを見せました。各市場は大きく動いています。雇用統計発表前には128円台半ばで推移していたドル円は一気に131円台まで買われ、131円20銭を記録しています。米長期金利が急上昇したことでドル全面高の様相でした。株価が下げ、債券が売られただけではなく、金利の付かない金は2.8%も売られ、1876ドル台まで下落しています。WTI原油価格も2ドル49セント売られ73ドル台と、1カ月ぶりの安値に沈みました。今後もFRBによる景気抑制策が継続されるといった見立てのようです。パウエル議長は先週のFOMC会合後の記者会見で「われわれは大きく進展したと考えている。それでも、さらなる仕事が残されている」と述べ、これまでのインフレの減速に一定の評価を与えながらも、なお慎重な姿勢を維持していました。また、「物価安定の回復には、抑制的なスタンスをしばらく維持することが必要となる可能性が高い」と指摘し、物価圧力に関する最新の指標は心強い内容だとしながらも、「勝利宣言するのは極めて時期尚早だ」と述べています。今後について議長は「データ次第だ」と述べたことを考えると、3月会合では再び0.5ポイントの利上げ、あるいは0.75ポイントの可能性も浮上してくるかもしれません。パウエル議長の「勝利宣言するのは極めて時期尚早だ」と述べた言葉がマトを得ていたのかもしれません。
ドル円は今朝6時過ぎのオセアニア市場でさらにドル高が進み、このレポートを書いている時点でも132円50銭近辺で推移しています。日経電子版が「政府、次期日銀総裁に雨宮副総裁を打診」と報じたことが材料視され、早朝のオセアニア市場で窓を開けて上昇したものです。ドル円は132円56銭前後まで買われましたが、当社を含むFX会社は、通常月曜日は朝7時からしか取り引が出来きません。多くの個人投資家が7時の取り引開始時間早々からドルを売ったとみられ、ドル円は7時過ぎには131円80銭辺りまで下げました。ドル安傾向が予想される中、久しぶりの132円台ということで、手持ちのドルを売ったと思われます。筆者はまだ、この先ドル円は下げると予想していますが、その根拠は米インフレ率が徐々に低下し、それに伴ってFRBによる利上げ圧力が低下することを大きな理由と考えています。1月の雇用統計がその根底を揺るがす結果であったことは、今後も十分考慮するとともに、注意する必要があります。現時点ではまだトレンドを変える必要はないと考えますが、チャートでは「8時間足」よりも短い足では全て「上昇トレンド」を示し始めています。今後CPIなど、再びインフレの上昇を示すようなデータが出るようなら、相場観の修正もあり得るかもしれません。ここは決め打ちするのではなく、柔軟な姿勢が求められます。
本日のドル円は130円80銭~133円程度を予想します。
(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)
・今日のアナリストレポート
https://info.kabushiki.jp/rd/gaitameonline_academy01.htm
・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧
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