【GW特集】日本株は「セル・イン・メイ」乗り越え――注目テーマから選ぶ有力銘柄(2)中国・設備投資の回復見据え
マーケットを取り巻く不透明な外部環境は、日本株の先行きにも影を落とす。ただ、独自の好材料に目を向けると、米国や他の海外諸国にはない魅力が本邦相場には息づいている。ゴールデンウイーク(GW)にお届けする特集として、有力銘柄を探った。(写真:123RF)
強い経済結び付き、GDP目標上ブレも
日本が米国とはやや異なるスタンスを取っているのが、対中国の戦略だ。安保面こそ米バイデン政権に歩調を合わせているものの、経済的な結びつきは変わらず強い。そのことは、自民党の重鎮である二階俊博元幹事長による6月の訪中検討からも明らかだ。
中国では昨年、習近平指導部が「ゼロコロナ政策」を強行した影響で実質GDP(国内総生産)成長率が3.0%(2021年は8.4%)に落ち込んだ。今年の政府目標も「5.0%前後」と、コロナ前の6%台に見劣りする水準にとどまる。
習政権はゼロコロナを転換したものの、経済の勢いはにわかには回復しなかった。四半期の成長率は直近の1~3月期が前年同期比4.5%。市場予想こそ上回ったものの、保守的とされる年間目標のペースにも届いていない。企業の業況もそれを映し、ロボットなどを手掛ける安川電機(6506)の同国での受注高は、昨年12月~今年2月(前2月期第4四半期)が前年同期比で28%減少した。
しかし、ここへきて景気刺激の動きが本格化しつつある。中央銀行の中国人民銀行が発表した3月の新規銀行融資(人民元建て)は、3.89兆元(約75兆円)と前月から2倍超に拡大。1~3月期では過去最高の10.6兆元に達している。
政府が銀行に企業向け融資の拡大を促したとみられ、そうして生まれた資金が設備投資を押し上げる可能性がある。また、住宅ローンなどの家計向けのファイナンスも、3月は1.24兆元(前月比約6倍)に急拡大している。(写真はCIMT2003・大勢の来訪者であふれる会場内、日工会提供)
こうした中、エコノミストの間では今年の同国のGDP成長率が政府目標を上回り、6%台まで持ち直すと予想する向きが増えている。うまく運べば、同国を主戦場とする日本企業の業績復調にも直結することが期待される。
工作機械のツガミ、半導体分野はローツェ
とりわけ注目されるのが設備投資だ。省人化の潜在需要は依然大きく、FA(工場自動化)機器や工作機械のニーズは強い。分野もEV(電気自動車)をはじめ、半導体、さらには調整の長かったスマートフォンなどのIT関連に再び好循環が訪れるかもしれない。
日本工作機械工業会によれば、日本メーカーの中国向け受注総額は1~3月が835億円(前年同期比23%減)だった。ゼロコロナの解除後も調子が上がってこない状況だが、4月には北京で大型国際見本市「CIMT2023」も開催され、ムードの改善につながったとみられる。
中国が主戦場の設備投資の関連企業は、安川電や工作機械用制御装置で世界首位のファナック(6954)、工作機械部品のTHK(6481)など。また、小型工作機械を得意とするツガミ(6101)も有力なポジションに付ける。
ツガミは上海近郊に主力工場を持ち、中国では幅広い現地企業を顧客に精密加工の分野のトップ級に上り詰めた。今後は事業環境の改善に伴い単月受注の上積みが視野に入る。5月11日に予定する前3月期決算発表は、コロナ収束により久々に日本でのアナリスト向け説明会を行う見通しだ。株価は1300円台で短期底入れを確認したとみられる。
また、半導体製造装置をめぐっては輸出規制がネックとして意識されるものの、搬送装置など非先端品は柔軟性が高そうだ。ローツェ(6323)は前2月期第4四半期の半導体関連装置受注が前年同期比4割超減少したものの、今後は中国向けの回復が視野に入る。
このほか、中国向け売上比率の高い企業としては、SMC(6273)や芝浦機械(6104)、JUKI(6440)や、金型のパンチ工業(6165)、商社のミスミグループ本社(9962)などが挙げられる。
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