【為替本日の注目点】米4月のNFPは25.3万人と予想を上回る
ひと目で分かる昨晩の動き
NY市場
ドル円は反発し135円台に。大きく下げていた株価が大幅に上昇し、米金利も上昇したことで135円12銭までドルが買い戻される。ユーロドルは依然として1.10を挟みもみ合い。株式市場は3指数が揃って大きく反発。値ごろ感の買いや、米景気に対する悲観論も後退。ダウは546ドル上げ、S&P500も75ポイント上昇。債券は反落。長期金利は3.43%台に上昇。金は大きく売られ、原油は大幅高。
マーケット情報
4月失業率 → 3.4%
4月非農業部門雇用者数 → 25.3万人
4月平均時給 (前月比) → 0.5%
4月平均時給 (前年比) → 4.4%
4月労働参加率 → 62.6%
ドル/円 134.18 ~ 135.12
ユーロ/ドル 1.0957 ~ 1.1036
ユーロ/円 147.71 ~ 148.70
NYダウ +546.64 → 33,674.38ドル
GOLD -30.90 → 2,024.80ドル
WTI +2.78 → 71.34ドル
米10年国債 +0.058 → 3.437%
本日の注目イベント
豪 4月NAB企業景況感指数
豪 3月住宅建設許可件数
独 3月鉱工業生産
日本ではゴールデン・ウイーク中でしたが、米国では「FOMC会合」と、「4月の雇用統計」という、いわば「2大イベント」がありました。ドル円はFOMC会合前の2日には137円78銭近辺までドルが買われる場面もあり、3月8日以来となるドル高水準を記録していました。GW前の4月27日のコメントで、「3月8日の137円92銭を起点としたレジスタンスラインと、3月24日の129円64銭を起点としたサポートラインを2辺にすると、本日はレジスタンスが134円60銭前後となり、サポートは132円57銭前後になります。『三角保ち合い』(さんかくもちあい)は右端にある頂点に向って値幅を収斂させていき、どちらかに抜けたら、抜けた方向に大きく動くとされています」と書きましたが、ドル円は三角保ち合いを上抜けすると予想通り大きく上昇し、上記水準までドル高が進みました。
ただドル円はその後米国株が大きく下げ、リスクオンが進んだこともあり、FOMCを経て133円台後半まで下げるなど、相変わらず荒っぽい動きになっています。FOMCでは予想通り「0.25ポイントの利上げ」を決めました。発表された声明文では、前回使われていた「追加の政策措置が適切」といった文言が外され、新たに、「追加策がどの程度必要か決定する際には、これまでの金融引き締めの累積的な効果や経済や物価に時間差で与える影響を考慮する」と記され、明らかにシリコンバレー銀行(SVB)など、米地銀破綻の影響を配慮した文言になっています。
市場の関心はすでに「6月会合」で、利上げが見送られるのかどうかに移っていますが、その意味からも会合後のパウエル議長の発言が重要であると考えていました。異例だったのは議長が冒頭で、「会合結果の前にまず銀行セクターの最近の動向について話したい」と切り出したことでした。SVBなど地銀3行の破綻を受け、金融不安が収まらないことに触れ議長は、「状況はおおむね改善し、米国の銀行システムは健全で強靭だ」と述べ、「深刻なストレスがかかる時間に区切りをつけるための重要な一歩だ」と続けました。また、銀行破綻については、「われわれが間違いを犯したことは十分に認識している」と述べたことも異例でした。ここで言う「間違い」が、銀行に対する検査体制なのか、あるいは今回の急激なインフレに対するFRBの初動の遅れを指すのか、あるいはまた、連続で大幅な利上げに踏み切ったことを指すのかは定かではありませんが、議長が「間違いを犯した」と言い切ったことには、驚きであったとともに、「誠実さ」も感じた次第です。議長はさらに足元のインフレについて、「幾分緩やかになっているが、依然として強い」と述べ、金融政策が十分引き締め的な水準かと問われて、「見極めているところだ」と答えるにとどめています。結局6月会合での明確な方向性を示すことはありませんでしたが、FRBとしてもインフレと、金融不安という金融政策的には合い反する事態に挟まれ、非常に難しい判断を迫られている状況は続いています。インフレを優先するのか、あるいは金融不安の払拭を優先するのか、10日(水)に発表される「4月のCPI」が大きなカギを握っています。
FOMCメンバーによる発言でも、そのあたりの苦悩が伺えます。シカゴ連銀のグールズビー総裁は5日のインタビューで、金融セクターの混乱について、「それによって少し立ち止まらなければならないだろう。そうした展開は景気を減速させる可能性が高く、そのことを考慮する必要があるのは確かだ」と語り、「われわれはデータを注視する必要がある」と述べています。また、セントルイス連銀のブラード総裁も5日、「この15カ月における積極的な政策がインフレ率の上昇を抑制してきたが、2%目標への軌道に乗っているかどうかはあまりはっきりしていない」と述べ、「これから出て来る経済データを精査したいと考えているが、利上げがもう必要ではないと確信するには『インフレ率の有意な低下』を確認しなければならないだろう」と語っています。(ブルームバーグ)
現時点での、6月会合での追加利上げの確率は五分五分かと思われますが、個人的には信用不安の収縮を優先するのではないかと考え、据え置きを予想しています。ただ、それでも上述のように、4月のCPIが再び加速しているようだと、追加利上げの可能性もあろうかと思います。
本日のドル円は134円~136円程度を予想します。
(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)
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