【為替本日の注目点】市場は明日の米CPI待ち

為替

サーチナ

2023/5/9 10:10

ひと目で分かる昨晩の動き

NY市場

 ドル円は小動き。2大重要イベントが終わり、市場は10日発表のCPIを待つ構えとなり、値幅は60銭程に収まるユーロドルは1.10台で推移したものの小動き。株式市場はまちまち。ダウは55ドル下げたが、他の2指数は小幅に続伸。債券は続落。長期金利は3.5%台に乗せる。金は反発し、原油は続伸。

マーケット情報

ドル/円 134.66 ~ 135.22

ユーロ/ドル 1.1000 ~ 1.1044

ユーロ/円 148.45 ~ 149.21

NYダウ -55.69 → 33,618.69ドル

GOLD +8.40 → 2,033.20ドル

WTI +1.82 → 73.16ドル

米10年国債 +0.07 → 3.507%

本日の注目イベント

豪 5月ウエストパック消費者信頼感指数

中 4月貿易収支

米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演

 FOMC会合と4月の雇用統計を終えたこともあり、昨日の相場は東京時間からNYにかけて概ね小動きの展開でした。明日発表される「4月のCPI」の結果次第では、6月会合での追加利上げの可能性があるものの、どちらかと言えば、足元の市場環境からして、「見送り」の可能性の方が高いと予想していますが、どうでしょう。ドル円は134円台半ばまで下押しされたものの、米金利上昇が支えとなり135円台に乗せる場面もありましたが、方向感のない一日でした。ユーロドルもNYでは終始1.10台で推移し底堅い動きになっています。ユーロに関しては、次回理事会でも利上げが見込まれていることがユーロ買いにつながっているとみられます。

 6月の会合で利上げを「見送る」とする根拠に、金融不安が挙げられますが、加えて「米債務上限問題」が市場の不安心理を掻き立てています。これは例年のことで、最後の最後には議会が上限引き上げを承認してきた経緯もあり、「年中行事化」しているようにも思えますが、タイミングが最悪のようにも思えます。イエレン財務長官は7日のABCの番組で、「膠着状態に陥っている債務上限問題を解決する上では、議会が上限を引き上げる以外に良い選択肢はない」と述べ、「この件で米憲法修正第14条を発動すれば憲法上の危機を招く」と警告していました。

 米連邦政府が発行できる国債などの総額は法律で決められており、上限を引き上げるには議会の承認が必要となっています。政府の債務はコロナ対策の財政支出もあり、現行の債務上限額である31兆3814億ドル(約4230兆円)に迫っており、最速では6月1日にも「Xデー」が来るとの見方もあります。シカゴ連銀のグールズビー総裁は8日、「債務上限に関するこの論争は最悪のタイミングで起こっている。これにより、経済成長や雇用市場の状況を見通すのが極めて難しくなっている」と話しています。バイデン大統領は今日にも共和党のマッカーシー下院議長と会談する予定になっていますが、政治的なかけ引きに使われているとの意見もあります。8日にインタビューに応じた共和党トップのマコネル院内総務は、「解決策を探すのはバイデン氏とマッカーシー議長の責務だ」とし、「バイデン氏を助けるつもりはない」と述べています。これまで通り、最終的にはデフォルトは避けられると思われますが、米大統領経済諮問委員会(CEA)試算では、仮にデフォルトに陥った場合、7-9月期に830万人の雇用が失われ、失業率は5ポイント上昇し、実質経済成長率は年率で6.1ポイント下押しされる(日経新聞)とされており、かなり大きな影響が及びます。これまで米国がデフォルトに陥ったことはありませんが、2011年には政府資金が底をつき、行政サービス等に大混乱が起きた経緯もあります。

 米地銀3行が破綻し、その後ファースト・リパブリック・バンク(FRC)も破綻しましたが、JPモルガンがすかさず「買収」の手を指しのべたことで大事には至っていません。多くの専門家は、これで信用不安が終わったとは思えないと話しています。今回の混乱を受け銀行の融資担当者の目は厳しくなり、融資基準を引き上げているとの報道もあります。上記4行はいずれも連邦政府の監督下にはなく、地区連銀が管理監督を行っています。カリフォルニア州は9日、資産500億ドル超の銀行の精査を強化すると発表しています。債務上限問題への懸念、銀行の融資基準の引き上げ、いずれもインフレ抑制には追い風になります。これらが、筆者が6月会合で追加利上げが「見送られる」のではないかとの根拠にもなっていますが、それでも明日発表されるCPIの結果次第では利上げも否定できません。上記混乱は、「いずれ解決する」と考えられますが、「インフレ」が鎮静化するメドはまだ立っていません。明日のCPIの結果がますます重要となり、注目度も増しています。

 本日のドル円は134円50銭~135円80銭程度を予想します。

(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(写真:123RF)

・今日のアナリストレポート

https://info.kabushiki.jp/rd/gaitameonline_academy01.htm

・主要経済指標の一覧表 ‐ 今月の主要経済指標の予想数値、結果の一覧

https://info.kabushiki.jp/rd/gaitameonline_calender.htm

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