松屋R&D・後藤秀隆社長に聞く:本来の成長路線に戻る

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2023/6/28 10:00

潜在的な需要大きく海外も拡大へ

 松屋アールアンドディ(=松屋R&D、7317)は縫製工程を自動化する独自技術が強み。縫製自動機の開発・製造・販売のほか、血圧計センサーのカフ(腕帯)、カーシート、エアバッグなどの製造・販売している。各製品の需要は世界的に大きく、コロナ禍が一区切りついたことから、同社は今後、より一層のグローバル展開を推進していく考えだ。同社の現状と今後について後藤秀隆社長に聞いた。

 ――前2023年3月期の業績は好調で、連結売上高は71億6400万円(前々期比27.0%増)、営業利益は6億1100万円(同72.2%増)と、大幅な増収増益を達成しました。

 「前々期がコロナ禍で苦戦した反動から、前期の売上高、利益は大きく伸びました。現状では本来の70%程度といったところですが、ようやく成長路線に戻ってきたという状況です。コロナ禍で2年間をロスしたようなものです。ただ、サプライチェーン、生産拠点を見直すきっかけになったことも事実で、それが今後の成長につながっていくと思います。メディカルヘルスケア事業、セイフティシステム事業など、当社の事業の潜在的な成長力は大きく、ウクライナ情勢、物価高騰などは注意しなければいけませんが、今後は本格的な成長継続が見込めるでしょう。今期については、売上高74億円(前期比3.3%増)、営業利益7億3000万円(同19.3%増)を見込んでいます」

 ――メディカルヘルスケア事業の今後についてはどう考えていますか。

 「従来のカフを中心に、リハビリ用ロボットなど医療機器販売にも力を入れていきます。カフについてはいまやコロナ禍の影響はほとんどなく、既に成長路線を回復しています。また、リハビリ用ロボットはポーランドのグローバル医療機器メーカーEGZOTech(EGZO)社と日本総代理店契約を締結し、EGZO社のEMG(表面筋電図)を利用した脳梗塞(こうそく)の多目的リハビリ用ロボットの製造、販売を行っています。新規事業として注力しており、現在は大手商社の子会社や高級リハビリセンターなどにテスト出荷している段階です。患者の評判はよく、年内にも売上を計上したいところです。EGZO社の新機種2機体の投入も計画しています」

 ――セイフティシステム事業はいかがですか。

 「コロナ禍、半導体不足などから自動車の生産が一時停滞し、当社のカーシート、エアバッグも影響を受けました。しかし、現在では回復しつつあり、今期からは改めて拡大に向かうでしょう。今はガソリン車に加えて、EV(電気自動車)なども生産を拡大していることから、カーシート、エアバッグの需要はさらに増えていきそうです。海外でもメキシコ、インド、ヨーロッパなどで設備投資の需要が回復し、エアバッグメーカー向け自動機の需要は拡大中です。特にインドを中心とした開発途上国で、エアバッグ需要が急増しています。こうした状況を受け、現在は海外志向の人材を中心に採用を強化しており、今後、対面の営業を推進することで顧客開拓を図っていきます」

 ――新規事業について教えてください。

 「省人化、省熟化を重要課題とし、画像認識とAI(人口知能)機能を利用した、熟練工の動作を学習したソーイングロボットの開発を進めています。また、品質管理を人に頼らないよう、不良品流出を防ぐカメラを使った高精度の縫製品質検査システムの事業化にも注力しています。エアバッグ向けの検査システムについては既に当社工場内で運用を開始し、工場をいわばショールーム化しており、大手企業からの問い合わせもいただいています」

 「さらに、ドローンに関しては、配達用など市場拡大に向け、安全装置としてドローン用エアバッグの需要拡大を予想しており、エアバッグを搭載可能なドローン筐体の開発・製造・販売に取り組んでいます。なお、欧州、中国において、ドローン用エアバッグに関する特許を正式に取得しました」

 ――ベトナム工場の現状を教えてください。

 「現在、当社が新規に購入した土地に、従来の5工場をすべて集約した新工場を建設中です。計画通り7月の完成、9月からの稼働を予定しています。これまでは土地、建物ともレンタルでしたが、自社工場を保有することで、固定資産の減価償却費や借入の金利を加味しても1億円以上のコスト削減が見込めます。物価高で賃貸料が上がっているため、実質的にはそれ以上のコスト削減効果が出てくる可能性もあります。新工場が計画通りに稼働すれば、今期(24年3月期)の後半にはコスト削減効果が明確に表れてくることになるでしょう」

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