永濱利廣のエコノミックウォッチャー(39)=景気予測調査から見た四半期決算見通し
このほど発表された2023年4~6月期法人企業景気予測調査は、日本企業の業績計画を予想する指標として注目される。7月下旬から本格化する決算発表へ向けて、業種ごとの好不調を予想してみたい。
製造業の減益幅拡大
4~6月期の法人企業景気予測調査で示された今年度の計画は、売上高が製造業・非製造業とも増収率は微修正にとどまっている。一方、経常利益はいずれも減益幅が前回調査から拡大し、特に製造業の悪化度合いが大きい。このことから、企業の4~6月(3月期企業の第1四半期)決算発表では、製造業を中心に今年度の経常利益予想の下ブレ懸念が強まるおそれがある。
ただ、逆に上方修正期待が高まる業種もありそうだ。法人企業景気予測調査で上方修正率が高かった業種は、売上高で「不動産」「化学」「業務用機械」「農林水産」「運輸・郵便」が挙げられる。
不動産については、4月に執行部が交代した日銀が当初の想定以上にハト派なスタンスとなっているため、早期の金融政策の出口観測が後退したことが反映された可能性がある。一方、化学や業務用機械については、売上が増額された半面、経常利益計画が下方修正されている。農林水産、運輸・郵便は、コロナ禍からのリオープン(経済活動再開)が増収につながるとみられる。
不動産など上方修正期待
経常利益の上方修正が期待される業種は、「生活関連サービス」「パルプ・紙・紙加工品」「娯楽」「窯業・土石」や、前述の不動産など。法人企業景気予測調査では、いずれも2ケタを上回る上方修正率となっている。生活関連サービスにはクリーニング業や理・美容業、旅行業、冠婚葬祭業などが含まれ、娯楽とともにリオープンやインバウンド(訪日外国人観光客)消費の回復が追い風になっている。
パルプ・紙・紙加工品や窯業・土石が上方修正されている背景には、原燃料高に対する製品価格への転嫁が進んでいることを示唆する。また、国際商品市況の軟化に伴い原価が低減したこともプラス方向に寄与している公算だ。不動産の上方修正については、売上同様に金融緩和の早期転換観測の後退したことが理由の1つと考えられるほか、住宅価格の上昇なども事業環境の改善に寄与した可能性がある。
【プロフィル】永濱利廣…第一生命経済研究所・首席エコノミスト/鋭い経済分析を分かりやすく解説することで知られる。主な著書に「経済指標はこう読む」(平凡社新書)、「日本経済の本当の見方・考え方」(PHP研究所)、「中学生でもわかる経済学」(KKベストセラーズ)、「図解90分でわかる!日本で一番やさしい『財政危機』超入門」(東洋経済新報社)など。
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