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2023/10/26 10:30

【米国株】VIX・ショックは韻を踏むか

 VIX指数(恐怖指数)が23日まで3日連続で20ポイントを超えた。この水準は中期的な市場の強弱分岐点とされ、いわば「恐怖警報」が発動した形だ。今年は直近まで、信用不安による金融機関の破たん連鎖が起きた3月9~27日、5月の4、24日しか上回っていなかった(終値ベース)。

 2018年も同様にVIX指数が年に2回警報を発したことは記憶に新しい。同年2月には、「VIX・ショック」と呼ばれる大規模な世界同時株安も発生した。背景には、賃金統計の上昇を受けたFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げペース加速観測があり、長期金利の上昇とともに株価が下落した。

 同年は10月にも「タカ派的FRB」への警戒感に、米中貿易摩擦も加わりリスクオフが拡大した。VIX指数終値は2月に17ポイント台から37.3ポイントまで急騰している。

 今回も不安心理の背景にはFRBの金融引き締めがある。中東の地政学リスクは、18年当時の米中対立の先鋭化と重なる。

 最近の長期金利上昇は軍事支援強化も含めた財政拡大不安も反映されており、雇用や消費の強さと相まってVIX指数の強さが18年よりも粘着性を帯びる可能性があることに注意したい。

 マーク・トウェインいわく――歴史は繰り返さないが韻を踏む。

【香港株】中国優位のEV、米国優位の先端半導体

 EV(電気自動車)メーカーBYDの7~9月EV販売台数は、前年同期比23%増の43万1603台と世界一の米テスラ(43万5059台)に肉迫した。中国企業はバッテリーの材料であるリチウムの供給網で、川上から川下まで重要な位置を占めている。リチウムそのものの世界生産は豪州とチリが約8割を占めるものの、ガンフォンリチウムのように中国企業は世界各地の鉱山の権益を積極的に買い付けている。

 中国は、車載電池の負極材として使われる黒鉛(グラファイト)についても、12月から輸出を許可制に移行する。黒鉛相場が需給ひっ迫に伴い高騰するようであれば、同国で黒鉛の生産と販売を手掛ける中国石墨集団(チャイナ・グラファイト・グループ)などが恩恵を受ける。

 黒鉛の輸出規制は、中国製EVへの補助金について調査すると決めたEU(欧州連合)や、半導体輸出を制限する米国への対抗措置とみられている。

 また中国では現在、EVがスマホと融合する動きが進んでいる。自動運転ソリューションの一環としてスマホアプリを通じてハードを制御する仕組みで各社が競っている。BYD傘下のBYDエレクトロニックは、スマホ部品拡大を目的として米大手EMS(製造受託)企業のジェイビルの中国事業を買収した。

 大手スマホメーカーの小米集団は、24年のEV量産に向けて積極的な投資を行っている。同社によるEV生産計画は今年8月、中国国家発展改革委員会(NDRC)に承認された。EVとスマホの融合により、低迷するスマホの需要喚起も期待される。

※右の画像クリックでグラフ拡大

(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

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