海外株式見通し=米国、香港

【米国株】生成AI相場が向かう先、医療・ヘルスケア領域注目

 今年は四半期末とイースターの休暇が重なった。このため、海外投資家の本格的な参戦と四半期明けも同タイミングになるとみられる。4月第1週は、当面の米国株相場の方向性を探る上で重要だろう。

 中東におけるイスラエル情勢の緊迫化に加え、ロシアが国内で発生した大規模テロ事件に絡み、ウクライナへの攻撃を激化させる懸念が生じるなど、地政学リスクが臨界点を超える兆しが見え始めた。こうした中、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)をS&P500指数で割った「SOX/S&P500倍率」や、ナスダック100指数をダウ工業株30種平均株価で割った「ナスダック100/ダウ平均倍率」は、いずれも3月にはITバブル期以来の高水準に達していたことから、半導体関連や大型ハイテク株中心の相場が限界まできていた可能性が指摘される。

 半導体大手エヌビディア(NVDA)を中心に資金を集めた生成AI(人工知能)相場に向かう先の候補としては、医療・ヘルスケア領域が挙げられる。エヌビディア自身が創薬のための生成AIプラットフォーム「BioNemo」を通じて独自データでモデルのトレーニング作業簡素化・高速化に取り組んでいる。イーライリリー(LLY)やデンマークのノボ・ノルディスク(NVO)が糖尿病治療薬を肥満症治療薬に進化させたように、生成AIの活用で既存の薬がほかの病気に応用できないかどうかの解析などに使われ、創薬スピードが加速するだろう。

 医薬品と医療機器の「二刀流」で、高い信用格付けのジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)をはじめ、医薬品では免疫疾患系に強いアッヴィ(ABBV)、手術支援ロボットのダヴィンチを擁するインテュイティブサージカル(ISRG)など、米国にはこの分野で信頼のおける高クオリティー企業が多い。これらがエヌビディア相場を引き継ぐ可能性がある。

【香港株】株価底入れと国有企業系高配当利回り銘柄

 中国でブームとなっている川端康成の「雪国」の書き出しのように、中国経済は長いトンネルを抜けたのだろうか?。国家統計局が3月27日に発表した1~2月の工業部門企業利益は前年同期比で10.2%増加し、2022年6月以来のプラスに転じた。伸び率は21年12月以来の大きさだった。同時期の鉱工業生産も同7.0%増となり、プラス幅が昨年12月の6.8%から加速した。

 これらの指標は、経済が昨年の底入れを経て回復を遂げつつあることを示すシグナルのようにも見受けられる。さらに、国家統計局が3月31日に発表した3月製造業購買担当者指数(PMI)も50.8と、活動拡大・縮小の境目の50を超えて1年ぶりの高水準を記録した。1~2月は輸出(ドルベース)も前年同期比7.1%増と伸びており、財政支出の増加と相まって見通しに光明が差してきていると言えるだろう。

 香港ハンセン指数構成名銘柄の中の主な高配当利回りの国有企業系銘柄(不動産関連業種除く)について、4月2日終値時点の市場予想配当利回りを見ると、1月22日時点で11%台だった中国石油化工(シノペック、386香港)は7.97%へ低下。同9%台だった6銘柄について、中国建設銀行(チャイナ・コンストラクション・バンク、939香港)が8.92%、中国工商銀行(1398香港)が8.22%、中国神華能源(チャイナ・シェンファ・エナジー、1088香港)が7.74%、中国中信(シティック、267香港)が6.80%、中国石油天然気(ペトロチャイナ、857香港)が6.64%、中国海洋石油(CNOOC、883香港)が6.57%へ低下した。

 エネルギー銘柄を中心とした予想配当利回りの低下は、春節(旧正月)前後における株価底入れ反転が要因。4大商業銀行を中心とした銀行株は不動産業界向け貸出債権への懸念もあり、株価上昇ペースが鈍く予想配当利回りが高止まりしている。高配当利回り投資にとっては引き続き好機と言えよう。

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(フィリップ証券リサーチ部・笹木和弘)

(写真:123RF)

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