<新興国eye>インドネシア中銀、予想通り金利据え置き―通貨ルピア上昇を受け

新興国

2024/5/23 8:46

 インドネシア中央銀行(BI)は22日の理事会で、インフレ抑制と通貨ルピア相場を安定させるため、主要政策金利の1週間物リバースレポ金利を6.25%に据え置くことを決めた。市場の予想通りだった。

 また、中銀は過剰流動性を吸収するための翌日物預金ファシリティー金利(FASBIレート)も5.50%、翌日物貸出ファシリティー金利も7.00%と、いずれも据え置いた。

 中銀はインフレ加速を受け、22年8月会合で利上げに転換、23年1月まで6会合連続で金利を引き上げたが、利上げ幅が計2.25ポイントに達したことを受け、同2月に金利据え置きに転換、同9月まで8会合連続で据え置いた。同10月に利上げに踏み切ったが、翌11月には据え置き、24年3月まで5会合連続で据え置いている。しかし、ルピア相場の急落を受け、前回4月会合で再利上げを決めた。6.25%の金利は過去最高となる。

 今回の据え置き決定について、中銀は声明文で、「この決定は外国資本の流入とルピア相場の安定を維持することを含め、インフレ率を24年と25年に前年比1.5-3.5%上昇(中央値2.5%上昇)の物価目標の範囲内に抑制するための先制的かつ将来を見据えた措置」とし、ルピア相場の下落を阻止するためとしている。

 中銀は前回の利上げにより、それ以降、ルピアは5月時点でドルに対し、1.7%上昇、海外からの資金も流入に転じおり、市場では前回会合での予想外の利上げにより、ルピア相場が上昇に転じたことやインフレ低下を受け、中銀は金利を据え置きを決めたと見ている。

 4月のインフレ率は前年比3.00%上昇と、前月の同3.05%上昇から低下。中銀は今後のインフレ見通しについて、声明文で、「24年のインフレ率は引き続き物価目標内に抑制されると考えている」と述べ、楽観的に見ている。

 ペリー・ワルジヨ総裁は会見で、「通貨は引き続き安定、東南アジア最大の経済に対する高い(短期国債)利回りと明るい見通しに支えられ、今後もルピア相場は上昇すると予想される」と、安堵感を示している。ルピア安は輸入インフレを加速させるため、ルピア相場の安定はインフレ防止にもなる。

 ただ、総裁はルピア相場のリスクについて、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げサイクル開始の遅れや中東情勢の不確実性を指摘している。総裁は、「米国のインフレ高止まりで米金利が長期にわたって上昇する可能性がある。このため、インドネシア中銀は引き続き注視しており、米国の最初の利下げは年末になるだろう」とした上で、今後の金融政策について、「中銀の今後の金融政策は引き続きデータ依存になる」とし、金融政策は慎重になるとしている。

 市場では中東情勢の不確実性により、ルピア相場の下落圧力が強まると見ている。しかし、それでも中銀の利上げサイクルはピークに達しているため、24年末までに利下げサイクルに転じると見ている。

 また、中銀は今後の金融政策について、前回会合時と同様、「持続可能な経済成長を支援するため、金融(市場流動性)やマクロ・プルーデンスな政策(金融システムの安定を目指した政策)、決済システムのポリシーミックス(複数の経済政策手段の一体運営)を強化する」とした上で、「企業や家計への銀行融資を拡大するため、緩やかなマクロプルーデンス政策を継続する」としている。

 ルピア相場の安定のため、中銀はスポット市場での介入や、ルピアを決済に使う為替フォワード(先渡し)取引である「DNDF(ドメスティック・ノン・デリバラブル・フォワード)市場での介入を継続する。

 さらに、中銀が保有国債を裏付けとするルピア建ての証券(BIRS)と、23年11月17日から導入した外貨建て証券(BIFCS)の発行を通じ、短期金融市場を強化、海外からのポートフォリオ投資の魅力を高めていくとしている。現在、SBN(短期国債)は7%超のプレミアム金利となっており、証券売却を通じ、外資の流入を高め、ルピア防衛を強化するとしている。

 次回の会合は6月19-20日に開かれる予定。

<関連銘柄>

アジア債券<1349.T>、上場EM債<1566.T>、アセアン50<2043.T>

提供:ウエルスアドバイザー社

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